14兆円市場の「EC業界の将来性」をコンサルタントが解説

2022年の国内物販系EC市場全体は対前年比較すると5.37%も成長しており、堅調に成長している市場です。コロナ禍以後は、ユーザーのECを含むオンラインに関する考え方も劇的に変わり、多くの方がオンラインやECの利用に抵抗が無くなりました、そのためEC業界の将来性は非常に有望であると言い切ることができるでしょう。

しかし、ECの流通総額の多くは楽天市場やAmazonあるいはユニクロ、ヨドバシカメラなどのショッピングモールや大手企業が多くのシェアを独占しており、中小企業が自社のECサイトで活路を見出すのは容易ではありません。中小企業のECサイトで売上を伸ばすには多くの人をサイトに呼ぶための集客が重要となります。

そのため、多くの中小企業にとっては、ECに将来性を見出すのはカンタンなことではないのです。

本日は、forUSERS株式会社でコンサルティングをしている筆者が、EC業界の将来性について解説し、最後にはEC業界を目指す個人の方向けにも、EC業界が有望である3つの理由を解説するので、最後までご覧ください。

ECの市場規模成長率は対前年5.37%!非常に将来性の高い業界

下記の表は経済産業省が毎年公開しているものですが、EC業界における物販分野の市場規模は2022年は、対前年の5.37%となっており高い成長率であることがわかります。

◆2022年の物販系分野のEC化率とEC市場規模

2022年の物販系分野のEC化率とEC市場規模

データ引用先:令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

2019年にコロナ禍を迎え、下記の要因により急激にECの市場規模が高まったと推察されます。

・今まで店舗でしか買い物をしなかったユーザーが、ECで買い物するようになったこと
・ECで購入するリピーターが増えたこと
・コロナ禍で企業のEC参入が増えたこと

そして、下記のグラフをご覧ください。

◆企業のECサイトの利用実態・利用意向調査

ECの利用意向の調査

データ引用先:日本企業のEC利用は増加したのか(世界、日本)

コロナ禍以後の2020年には、企業によるECの利用経験やECの拡大意向が確実に増えていることがわかります。企業においても、今後はECをビジネスチャネルの一つ、あるいはメインチャネルとして利用していくことがわかります。

しかし、次のグラフを見ると7割以上の企業ECサイトの売上の割合、全体の売上の10%未満です。

◆売上高全体に占めるECの割合

企業のECの売上シェア

データ引用先:日本企業のEC利用は増加したのか(世界、日本)

コロナ禍以後、確実に売上を伸ばしているのは、楽天市場やAmazonなどの大手ショッピングモールであり、中小企業のECサイトの利用が進んでいるとは言い難い面があるのです。

それでは、つぎに楽天市場などのショッピングモールについて解説します。

楽天市場の国内流通総額は5兆円を突破!

下記をご覧ください。

楽天EC流通総額推移(-2022)

出典元:2022年度通期および第4四半期決算説明会|楽天グループ株式会社 ※PDFダウンロード

楽天市場の売上推移 2022年は約5.6兆円の流通総額であり、2019年度の約3兆円と比べても大きな成長幅であり、コロナ禍で急激に流通総額を増やしたのです。

また、楽天市場より日本国内のシェアの高いAmazon は売上や流通総額が公開されていないのですが、この両社で日本のEC市場で圧倒的なシェアがあるのは間違いありません。

つまり、EC市場は将来性が高いのですが、多くの会員数をかかえる楽天市場やAmazonと戦っていく戦略がないと、中小企業のECサイトが将来有望とまでは言い切れない現実があるのです。そのため、企業のECサイトにおいては集客が最も重要な要素となるのです。

企業のECサイトの将来性は「集客」次第!

ECサイトを作るのはカンタンな時代となりました。個人でもBASEやSTORES、カラーミーなどの固定費が無料のクラウドサービスを利用すれば、30分もあればすぐに立派なECサイトが作れます。また、Shopify(ショピファイ)など、低コストで機能性・拡張性も高く手軽にカスタマイズできるECプラットフォームもあります。

さらに、ECサイトにも多くのソリューションが誕生し、カスタマイズが必要な大規模ECサイトまで、スクラッチに頼らず、既存のクラウドやパッケージを利用してECサイトを構築することができるようになりました。 しかし、ECサイトで難しいのは集客です。

ユーザーから見ると、楽天市場やAmazonでも購入できるものであれば、わざわざ使い慣れていない聞いたことのないECサイトで買う理由が見当たりませんし、独自の商品を扱っていたとしても、ECサイトに集客できる仕組みをマーケティング戦略として考えなくてはなりません。

集客のためのWEBマーケティングノウハウは様々ですが、代表的なところで、

◆ECサイトへの集客のためのWEBマーケティング手法

・リスティング広告
・Googleショッピング広告
・ディスプレイ広告
・SNS
・SEO(検索エンジン対策)
・インフルエンサー施策

などがあり、これらのWEBマーケティング手法を使ってどのように集客していくかを考えていかなければ、売上が立つECサイトを作ることはできません。ですから、自社ECサイトをこれから立ち上げる場合は、どのように集客していくかがポイントとなるのです。

また、広告に関してですが、ECサイトの平均単価は2,000~3,000円※となっており、広告費を計上すると利益があまりでません。ECサイトの商品はよほどの高単価の商品でなければ利益が出にくい構造となっているのです。

約9割がECを利用!平均購入金額は「2,000円~3,000円未満」【GMOリサーチ調べ】

いくらEC市場が右肩上がりといっても、ブランド力やWEBマーケティングができないと、ECサイトを作っただけでは成功しないのです。この点が、中小企業のECサイトで最も大きな難関と言えます。

個人にとってはEC業界が有望である3つの理由

中小企業にとっては、安易に将来性が高いとは言い難い面がありましたが、これからEC業界を目指す若い方にとっては非常に有望な業界であると言えます。EC業界の市場規模が右肩上がりに伸び続けているといことは冒頭でも紹介しましたが、個人にとってEC業界が将来性が高い業界である理由は3つあります。

理由① 新しい業界だからチャレンジしやすい!

ECサイトが日本で普及しはじめたのは2000年代からですから、まだまだ新しい業界です。そのためEC事業者にはベンチャーマインドを持つ企業が多く、本人のやる気次第でいろんなことにチャレンジしやすい業界と言えます。EC業界の平均年齢のデータはありませんが、筆者の肌感覚だと20代後半から30代前半の方が多い印象です。

それにくらべると、筆者は、英会話業界という古い体質の業界に約5年在籍しましたが、新しいことを始めたくても保守的なマインドのベテランの方が多く、チャレンジしづらい業界の風習というのがありました。しかし、若い人が多いEC業界は比較的新しい企画や挑戦にチャレンジしやすい業界だと言えます。

古い業界ですと、社内や社外に影響力を持つポジションになるには時間がかかりますが、EC業界では20代の部長や企業役員といったポジションも珍しいことではなく、若手でも経験を積みやすい業界であることがわかります。

理由② あらゆる産業でECの利用は必須となる

今後は、どんな業界でもECは必要不可欠な事業となります。コロナ禍を経験したことにより、リモートワークが一般的となり、あらゆる業界で「オンライン」が不可欠なチャネルとなってきました。

また、日本は少子高齢化社会に突入したこともあり、店舗の人手不足を恒久的に解消するのは困難であり、社会全体をECサイトを使って効率化していく必要があるのです。このような背景からもECは社会に欠かせない場となるのです。

参考資料:日本の少子高齢化はどのように進んでいるのか

ですから、ECのノウハウがあれば、今後はどの企業でも引く手あまたの人材となることができるのです。EC業界を経験することは、今後どのようなキャリアを歩むにしても、必ず役に立つものとなるはずです。

理由③ オンラインビジネスの基本が身に付く

ECのノウハウはそのまま、オンラインでビジネスを行うノウハウそのものと言えます。ECサイトで最も難しいのは集客ですが、一度その集客の成功体験を身に付けてしまうと、他の企業でも再現するのは難しいことではありません。

筆者も、英会話業界のブログを使った月間100PVのブログ集客方法を身に付けて、2015年にEC業界に転職し、同様のブログ集客をEC業界で実施して、月間10万PVを公式サイトに集めるに至りました。このようにオンラインでの集客を一度理解すれば、再現するのは難しいことではないのです。

ECサイト事業とは、新規顧客を呼び込み、どのようにリピーター育成をしていくかのビジネスですから、このノウハウを身に付けることができれば、将来にわたって仕事に困るようなことはなくなります。

新しい業界だから全くの未経験者でも可能性あり!

この記事を読んでいるあなたが、EC業界へのチャレンジを未経験であることで躊躇していかもしれませんが、EC業界は慢性的な人手不足のため、未経験者も広く募集しております。

もちろんマーケティング職種などは経験者が優遇されやすいですが、ECサイト運営業務であれば、やる気次第でチャンスはあります。

大手事業者よりも中小事業者の方が体制が整っておらず、人材が不足しているため、EC業界で最初にキャリアを気づくなら、体制の整っていない企業でのECサイト運営業務担当者がおすすめです。忙しいですが、その代わり一人で仕入れから、受注、配送まで担当するため、ECサイト運営の全てが学べます。

私もEC業界にチャレンジして、非常に多くのことを学ぶことができました。是非あなたも挑戦してみてください。

下記の記事では、大手のEC事業者62社をまとめておりますので、各業界(アパレル、家具、家電等)のECの動向をまとめておりますので、あわせてご覧ください。

参考記事:国内上場企業62社のEC化率は13.3%で国内平均の9.13%を上回る!