EC業界の志望動機

転職活動において、求人や募集要項を見て「ECサイト」あるいは「ネットショップ」を運営している企業に興味を持った場合、どのような志望動機を書けば良いか思案しているのではないでしょうか?

そこで、この記事では、下記のような未経験者がECサイト事業者に伝えるための効果的な志望動機を7つ用意しました。

① カフェ等でサービス業を行っていた方
② コンビニのアルバイトやフリーターの方
③ 専業主婦の方
④ 営業をしていた方
⑤ プログラマーやSEの方
⑥ 転職経験の多い方
⑦ 職歴の無い方

完全にご自身と一致するものがなくても、流用できる志望動機が必ずあるはずです。

本日は、ECサイトの書籍を2冊執筆したforUSERS株式会社の筆者が、EC業界の志望動機について具体的なテンプレートを用意しましたので、気になる会社があれば、ぜひテンプレートを編集して利用してみてください。

ECサイトの経験がない方向けの志望動機7選

それでは、これから7つのシチュエーションに分けた志望動機を紹介します。なるべく自分の今(昔)の職業と近い志望動機のテンプレートを選んで、そのテンプレートを参考にして自分の志望動機を作ってみてください。

志望動機① カフェ等でサービス業を行っていた方
志望動機② コンビニのアルバイトやフリーターの方
志望動機③ 専業主婦の方
志望動機④ 営業をしていた方
志望動機⑤ プログラマーやSEの方
志望動機⑥ 転職経験の多い方
志望動機⑦ 職歴のない方

志望動機① カフェ等でサービス業を行っていた方がEC業界を目指す

カフェで働いていた方が、家具・インテリアECに目指すという仮定で、志望動機を作ってみました。

◆家具・インテリアECへの志望動機

貴社のECサイト運営に、私の店舗でのインテリアの導入経験が活かせると考えた点です。

私は、カフェで約3年間働いてきたことから、カフェ内のインテリアのデザイン面だけではなく、どのようなインテリアがカフェ運営に最適か?という視点に興味を持っておりました。

例えば、ホコリを被りやすいデザインではないか?小さいお子様が触った時にインテリアが壊れやすくないか?あるいは、シーズン(季節)以外の時、倉庫にしまう時に保存しやすいデザインか?といったデザイン以外の実用的な面です。

私がいた店舗では、店長が私の意見を取り入れて、一緒にインテリアの入れ替えを決めていた経緯があり、このようなインテリアを設置する店舗側のメリットを考えられることが、貴社のインテリアのECサイト運営にも役立つと思い、この度応募いたしました。

家具・インテリアでは、「世界観やデザインが好きで」という志望動機は、ほかの応募者も必ず書いている可能性が高いので、そうではなくて、機能性や運用性に目を向けることで一味ちがう志望動機が書けます。もちろんウソは良くないので、カフェで働いていたのであれば、設置してある家具やインテリアについての出来事を思い出して、このような志望動機を作成してみましょう。

志望動機② コンビニのアルバイトやフリーターの方がEC業界を目指す

コンビニで働いていた方が、ペットフードのECサイトに応募する仮定で、志望動機を紹介します。

◆ペットフードECへの志望動機

貴社のECサイトの業務が多岐にわたることから、私の過去の経験が活かせるのではないかと思った点です。貴社のECサイトでは多くの種類のペットフードとペット用品を扱っておりますが、これだけ種類が多いと、受発注処理や梱包など多くのバックエンド作業があると推察します。

私はコンビニで8年間リーダーとして働いておりましたが、在庫や購入頻度から最適な仕入れ数を考えたり、あるいは季節性のある商品についても、数量やタイミングに至るまでの仕入れを任されており、いかにロスをなくすか、常に現状から先をみて行動する習慣が身についております。

また、年下から年上まで多くの新人を指導してきた経験もあり、EC業界とコンビニは畑違いではありますが、「いかに効率的に、最適な答えを導き出すか?」という能力は、貴社のネットショップ運営にも活かせると考えた結果、この度、挑戦させていただくこととなりました。

コンビニで働いた方のあるメリットは何より、多くの業務を効率を考えながらテキパキとこなせる点です。そのような長所は、ECのバックエンド作業でも活かすことができるはずですので、実際に経験したことを織り交ぜてアピールしてみると良いでしょう。

志望動機③ 専業主婦の方がEC業界を目指す

ここでは、専業主婦の方が、シニア向けの健康食品のネットショップを応募する仮定で、志望動機を紹介します。

◆健康食品のネットショップへの志望動機

貴社商品だけでなく、競合他社の健康食品を普段から積極的に飲んでおり、ユーザーとしての立場の経験が貴社のお役に立てるのではないかと思い、この度応募させていただきました。

例えば、私は貴社の競合の○○青汁を1年前より購入しております。貴社を含めてネットショップ数社を徹底的に比較した結果、貴社のライバル商品を購入しました。その理由は、○○青汁のホームページを見ると、単に味がおいしい訴求があるだけでなく、競合と比較した細かい味の評価が書いてあったことから、○○青汁を選ぶにいたりました。

このように、私はネットショップで商品を徹底比較することが趣味であり、健康食品に限らず、買った商品の全てに主婦ならではの観点による購入理由があり、私は全て購入にいたった理由を説明することができます。

健康食品というライバルの多い業界では、わたしが得意とする「どのような訴求が刺さるのか?」という観点が重要であると考え、貴社に貢献できると思ったためです。

直近で社会人経験のない方は、強めのメッセージを送ることで、書類選考が通りやすくなり、ここではあえてライバル商品のことに触れております。また、主婦の目線で「どのようなキャッチコピーが良いのか?」と考えることができる能力は、ネットショップでは重宝されます。この能力を面接で証明するには、電車の中でもテレビでも良いので、広告を見てどのように思ったかを言語化する習慣があれば、説明は可能です。もし、面接に通りましたら、あらゆる広告を見て、思ったことをスマートフォンやメモ帳に残してみましょう。

志望動機④ 営業をしていた方がEC業界を目指す

ここでは、営業をしていた方が、大手EC企業に転職を考えるという前提で、志望動機を紹介します。

◆大手EC企業への志望動機

私の提案力が貴社のEC事業に役立つのはでないかと思い志望いたしました。私は、広告代理店で、主にインターネット広告を販売しておりましたが、クライアントの要望を聞いて、自社商品だけではなく他社商品をパッケージするなど、クライアントの立場を徹底的に考えて、自社の商品だけにとらわれず提案してまいりました。

貴社は、○○分野では大手ECサイトでありますが、△△の分野においては商品ラインナップが少ないと思いました。私であれば、弱い分野をみつけて新しい商品の企画や仕入れを考え、売上をさらに高めることができるのではないかと考えています。

私は常日頃から、クライアントが何を考えているのかを徹底的に考える習慣があり、何が喜ばれるかということを徹底して考えることができます。それが私の提案力の源となっており、この提案力は必ず貴社の役に立つはずだと信じております。

営業というと、売上や実績が評価されることも多いのですが、このように自分の強みの源を言語化し、それを訴求することで、ECサイト事業者にもアピールすることができるでしょう。また、ここでは志望動機にしませんでしたが、EC事業者にも仕入先へのパートナー訪問や、ECモールとの折衝があるので、営業で培ったコミュニケーション能力を活かせるシーンは多々あります

志望動機⑤プログラマーやSEの方がEC業界を目指す

では次に、ITエンジニアがEC担当者を目指す仮定で、志望動機を解説します。

◆スポーツ用品ECへの志望動機

私はインフラエンジニアとして、企業のサーバー管理やソフトウェア管理の仕事に従事しておりました。そこでは、細かい仕事、あるいはミスの許されない、正確性が求められる仕事を担当しておりました。そのため、今回の募集要項である受発注処理などのバックエンド作業が、メイン業務として適任であると考えたためです。

現職では、何ごともリスト化を行い、そのリストを元にあらゆる業務を管理しております。また、管理しながらも、業務の最適化とセキュリティの両面を考えながら業務を行っておりました。

貴社のバックエンド作業においても、単に業務をこなすというのではなく、業務の棚卸しを行いドキュメント化していくことも重要であると感じました。私であれば、今のバックエンド作業を効率化とドキュメント化の両面で実施することで貴社のお役に立てると感じたため、この度応募にいたりました。

私の知り合いにも、エンジニアからEC担当者になった方がいます。エンジニアは細かい作業やドキュメント化することが得意な方が多いため、ECの煩雑なオペレーションに相性が良い方が多い印象です。また何より、ECサイトの運営では数多くのツールやIT知識が必要なので、ITエンジニアはEC担当と相性が良いのです。

志望動機⑥転職経験が多い方がEC業界を目指す

では次に、転職経験が5回を超えて、多くの職歴を持つ方がECサイトの出荷準備や梱包などのバックエンド業務を目指す仮定で、志望動機を解説します。

◆ECのバックエンド業務への志望動機

私は今まで、多くの業界で仕事を経験してきました。その中でも貴社の仕事が私の過去の3つの経験を活かせるのではないかと思い、この度応募させていただきました。

まず、一つ目は直近の職歴であるイベントホール管理の仕事です。実はこの仕事は、イベント毎の搬入や、スタッフの管理に間違いが許されない仕事であり、慎重に仕事をしておりました。私は間違いをしないために、念入りに確認を行うこと、TODOリストを作ることで多くのイベントを成功させてきました。このような几帳面な性格は貴社のバックエンド作業には欠かせないことです。

2つ目は、2つ前の職歴であるアプリのテストの仕事です。ここではテストを正確に実施するだけではなく、テスト中にバグを見つける、つまり「変化に気がつくこと」が求められました。この仕事を1年続けたおかげで、微細な変化に気がつく能力が身に付けられました。バックエンド作業は慣れると単調な面もあるはずです。しかし、その業務の中で微細な変化に気がつくことで発送ミスや、梱包ミスなどが減らせるのではないか?と思っております。

最後に、最初の職歴の回転すしの本社業務ですが、ここでは研修として最初の1年間は現場で接客を担当しておりました。もともと引っ込み思案のタイプでしたが、この1年間の経験で自信をもって誰に対しても堂々と話せるようになりました。決してコミュニケーションがうまいタイプではありませんが、ECサイトのバックエンド作業であっても、配送員や社内などで多くのコミュニケーションは発生するはずです。そこで1年間接客してきたというコミュニケーションスキルは必ず貴社に役立つのではないかと思っております。

職歴が多いのですが、その分同世代の他の人よりも多くの経験をしてきた自負があります。是非、貴社に挑戦する機会を与えていただければと思います。

職歴の多い方は、企業側に「継続力がない奴だ!」と思われることをひけめに感じるかもしれません。しかし、現在は人手不足の時代であり、誰にでもEC業界で働けるチャンスはあります。

職歴が多い方はそれを武器にして、例文のように、3つ程度に過去の職歴の中から仕事に対してアピールできるものを整理して語ると良いでしょう。少し強引に見えるかもしれませんが、企業担当者も「少しストーリーに無理があるが熱心に考えてきたんだな」とポジティブに捉えるはずです。そして接客業などを経験されている場合は、どんな仕事でもコミュニケーション上手であることはアピールになるので、ECの仕事に対しても堂々と説明しましょう。

志望動機⑦職歴が無い方がEC業界を目指す

では最後に、職歴がない方がEC担当者を目指す仮定で、志望動機を解説します。職歴がないと不利であることは否めません。しかし、小さなネットショップでは人手が不足しており、熱心な方からの志望動機であれば面接に辿り着ける可能性があります。しかし、何も用意なしにEC業界にチャレンジするのではなく、フリマで経験を積んでから行くことをおすすめします。その経験を積んでからの応募を検討してみましょう。

◆EC担当者への志望動機

私は趣味はメルカリなどのフリマで商品を販売することです。今は、中古ショップで商品を仕入れて、メルカリで販売する、いわゆる「せどり」で月に数万円の売上を得ています。メルカリといっても、仕入れから、売るためのキャッチコピー決めや商品撮影、商品説明文など全て自分で書いており、メルカリを研究して、どのような文言が売れやすいのか日々研究しております。

例えば、古着の服を販売する際は、購入者は服の状態を気にします。そこでカメラの接写機能を使って、質感がわかる写真や傷の状態がわかる写真を掲載します。これを徹底的に行うことで、ユーザーに信頼感を与えることにつながり、購入率が増えることに気がつきました。このような細かいノウハウが豊富にあり、このスキルを活かすために今回貴社に応募をいたしました。

アルバイトの経歴しかありませんが、フリマでの経験があるため即戦力として、貴社のECスタッフとして働けると確信しており、またメルカリで養った、売るためのノウハウを十分に発揮できると考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

職歴がないのはハンデとなります。そこで、ハンデを補う武器を作りましょう。EC担当者を目指すのであれば、まずはメルカリをすぐに始めてください。メルカリでの経験はそのままEC担当者の経験となるからです。そしてただモノを売るのではなく、売れるための研究をしてください。もし何もわからなければメルカリの書籍を三冊以上購入して、それを実践してみてください。その上で志望動機を作ることで、メルカリでの経験には数カ月かかりますが、このようなEC業界に入社するための武器を作ることができのです。

EC業界の将来性

ここで、EC業界の将来性について解説いたします。下記は経済産業省の報告によるEC市場規模のデータです。

◆2022年までのEC化率とECの市場規模のデータ

2022年の物販系分野のEC化率とEC市場規模

データ引用元:令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書(経済産業省)

これを見ると、物販分野におけるEC市場は右肩上がりに成長している市場です。特にコロナ禍となった2020年以降は、多くの業界・分野でデジタルシフトが一気に進んだことで、EC市場規模およびEC化率(全商取引におけるEC:電子商取引が占める割合)も大きく伸長しました。

コロナ禍をきっかけに、企業のEC参入が増え、また今までECを利用してこなかった層がECを利用し始めました。大手各社では、ECを軸としたマーケティング施策を次々と打ち出し、さらに消費活動におけるキャッシュレス化が進んだことも相まって、ECサイトの利便性が格段に上がっております。

今後も市場は堅調に推移すると考えられ、全体として将来性のある業界と言えますが、一方で、Amazonや楽天などの大手が市場で多くのシェアを占めており、中小企業にとっては、これら大手と戦っていくための戦略がない限り、容易に成功が期待できる業界というわけではなく、EC業界を目指す人にとって一概に有望な転職先とは言い切れない面もあるのが現状です。

下記記事で、EC業界の将来性について詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

参考記事:14兆円市場の「EC業界の将来性」をコンサルタントが解説

まとめ:EC業界は常に人手不足!チャンスは誰にでもあります

EC業界は右肩上がりの業界にも関わらず、新しい業界でもあるため経験者が不足しております。そのため未経験者でも、歓迎されやすい業界でもあるのです。

もし、履歴書や職務経歴書を送ることをためらっているなら、まずは、本日紹介した志望動機を参考にして送ってみてください。きっとチャンスはあるはずですよ。

筆者自身も2014年に、英会話スクール業界から未経験で、EC業界に入りました。だから、あなたにもできるはずです。