EC担当者が覚えておくべき専門用語
このページではECに関する専門用語をまとめています。随時、用語を追加していきますので、EC業界に携わる方はぜひブックマークしてご利用ください。

監修:布田 茂幸(プロフィール

目次

CRM
マーケティングオートメーション

CRM

Customer Relationship Management(カスタマー リレーションシップ マネジメント)の略。「顧客関係管理」と訳される。

既存顧客をリピーター化する戦略・活動全般を指す。目的は既存顧客との関係性を強化することによる安定収益の獲得にある。顧客との関係強化がうまく行きロイヤルカスタマー化すれば、それが長期にわたって獲得できることになり、LTVが最大化されていく。

顧客との関係性強化の鍵は、多様化する顧客ニーズ・価値観にきめ細やかに個別対応(One-to-One対応)できるかである。個別対応するためにこそ、顧客の住所、年齢、性別等の基本属性だけでなく、趣味嗜好に加え、購買履歴、行動履歴などのコミュニケーション情報の蓄積管理が必要となってくる。これを分析・活用し、顧客一人ひとりに最適化された内容とタイミングでコミュニケーションを取ることまでを含めてCRM活動となる。

対局にある戦略・活動が「新規獲得」となる。繰り返し需要のある商材を販売している場合、事業の立ち上がりは新規獲得が必須となるが、一定の規模に到達すると既存顧客からの売上維持・拡大を目指すことで安定的に売上を確保できる状態となる。

日本国内の人口減、GDPの鈍化に伴い、新規顧客を獲得していくよりも既存顧客との関係性を強化して、取引を維持・拡大していく方が必要という風潮が、主に2000年代から唱えられるようになった。

ECの場合、既存顧客のデータの管理やメール配信、アンケート等の関係性強化のためのマーケティングコミュニケーションがシステム化して、多くを自動的に行えるため、CRM戦略との相性が良いと言われている。

EC担当者が知っておきたい現場での使われ方

EC現場では、CRMというと上記で解説した戦略としてだけでなくシステムを指すことも多い。「CRMやってる?」と言われれば戦略を指し、「CRM入れてる?」と言われればシステムを指す。システムの場合、CRMに求められる機能は以下の3つに大別される。

① 顧客の管理
② 顧客の分析(アナリティカルCRM)
③ 顧客への対応(オペレーショナルCRM)

①は発展するとCDP(Customer Data Platform)と呼ばれ、②の分析の概念も包括する。

③の顧客への対応には、プッシュ対応とプル対応がある。プッシュ対応とは企業側から顧客へアプローチしていくことであり、メール配信、SNS配信、クーポン配信などがこれにあたる。一方でプル対応とはお問い合わせ管理、クレーム管理などがこれにあたる。

また、③のアプローチの方のオートメーション化(自動化)が進み、多彩なアクションが可能となるとMA(Marketing Automation)ツールと呼ばれる。

このように、CRMは非常に幅の広い言葉であるため、CRMと一言で言っても、人によって、あるいはシーンによって何を指しているのかが異なる点に注意することが肝要となる。

マーケティングオートメーション

文字通りマーケティング活動を自動化していくこと。MarketingAutomationの頭文字をとって「MA」とも呼ばれる。

例えば、30日分のサプリを購入した顧客へ実施する場合、商品を購入した際のお礼メールが自動配信されるだけではなく、使用が終了する1週間前の21日後に再購入を促すメールや、使用が終了した31日後にクーポン付きアンケートメールを自動的に配信することがマーケティングオートメーションの一例。

マーケティングをオートメーション化(自動化)するのは、商品を購入したことのある顧客だけに限らず、購入前の見込み客の段階から対象となり、対象とすることでよりマーケティングオートメーション化の効果は上がる。

例えば、メルマガ購読者にダイレクトメールを自動的に送るだけでなく、メール内に挿入した商品URLのクリック状況およびその後の購入の有無に応じて、次に送るメールの内容を自動的に差し替えることでマーケティング効果は上がる。ユーザーアクションに基づいて自動配信メール内容に分岐を作ることが、効果を上げるマーケティングオートメーション実施のポイント。

現在では、メールに限らずLINEやTwitterなどのSNSでのアプローチも自動化させることが主流となっている。

EC担当者が知っておきたい現場での使われ方

EC現場では、MAというと上記で解説した施策よりもシステムを指すことが多い。「MAやってる?」と言われれば施策を指し、「MA入れてる?」と言われればシステムを指す。MAシステムよりもMAツールと呼ばれることの方が多い。

MAをシステムとして指す場合、CDP(Customer Data Platform)やCRM(Customer Relationship Management)システムの中の一分野をMAシステムと捉えることが一般的。CDPやCRMシステムありきのMAシステムとなる。つまり、顧客管理という基盤があった上で、その顧客データを活用していく時に必要となってくるのがMAシステム。

MAの対象ユーザーが顧客の範囲であればCRMシステムが基盤となり、購入以前の見込み客まで含む場合にはCDPシステムが基盤となる。

MAシステムを有効活用する最大のポイントは、自動化されるマーケティングのシナリオ設計に尽きる。導入時に完璧なシナリオは作れないという前提に立ち、実施後にPDCAを回してシナリオを成長させていくことが肝要となる。

このページの監修:布田 茂幸(ふだ しげゆき)

布田茂幸 明治大学卒。2000年にアクセンチュアのスピンアウト組で構成されたITコンサルティング企業エンプレックス株式会社(現SCSK株式会社)に入社。2001年より自社開発CRM・ECパッケージソフトウェア「eMplex」の事業立ち上げに伴いマーケティング、広報、営業を担当。後に営業部長として業績拡大に貢献。その後、ECパッケージソフト「ecbeing」提供の株式会社ecbeingでは執行役員としてプロダクト事業戦略、営業、マーケティングを管轄。その後、株式会社クリエイターズマッチ取締役を経て2021年2月に株式会社Vispaを設立・起業。これまでに約200サイト以上のECを主に戦略・マーケティング面からサポートしている。