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2022年の自動車やカー用品などのEC化率は3.98%であり、全産業のEC化率の平均が9.13%であることを考えると、ECサイトの利用があまり進んでいない業界であると言い切ることができます。

カー用品業界のECサイトの利用が進まない理由としては、以下のようなものがあります。

① カー用品は、取り付けが必要な商品が多く、整備知識が必要となる
② 自分の車に取り付けられるのかの判断が難しい
③ 高額商品の場合は、実際にモノを見て判断したい

このような理由から、ECサイトの利用が進みずらい業界であり、EC化率がたった3.98%しかない要因となっているのです。

しかし、一部のDIYが得意な車のリテラシーが高いユーザーであったり、あるいはなるべく安く買い物をしたい節約志向のユーザーからは、全国で最も安い商品探しやすいECのメリットがあるため、Amazonや楽天市場での買い物に抵抗がありません。

本日は、forUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、カー用品業界のECサイトについて詳しく解説するので、今後、カー用品業界を目指している方や、あるいはカー用品業界と仕事をすることになった方は、是非最後までご覧ください。

カー用品業界のEC化率の推移

経済産業省が毎年公開するEC市場のデータには、自動車業界のECの利用についてもデータが存在します。

◆自動車、自動二輪、自動車用品のEC市場規模推移

カー用品EC市場規模推移(2014-2022)

EC市場規模 EC化率
2014年 1,802億円 1.98%
2015年 1,874億円 2.51%
2016年 2,041億円 2.77%
2017年 2,192億円 3.02%
2018年 2,348億円 2.76%
2019年 2,396億円 2.88%
2020年 2,784億円 3.23%
2021年 3,016億円 3.86%
2022年 3,183億円 3.98%

データ引用先:令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書経済産業省

このデータは「自動車」「自動二輪」などを含んでいるデータですが、市場の多くを占めるカー用品業界のECの推移として見てみます。2019年までは微増ではありますが、堅調にEC化率を増やしておりました。

その後、コロナ禍となり、バスや電車などの公共交通機関よりも人との接触を避けやすい理由から、感染対策の一環として車を利用するユーザーが増えた影響により、カー用品業界もEC市場規模およびEC化率は高まってきました。

参考記事;データで見るコロナ禍の行動変容(4)-移動手段の変容~公共交通機関からパーソナル手段へのシフト

その間、ドライブレコーダーの需要が増えるなどもあり、カー用品業界のEC利用率は右肩上がりとなっています。しかし、ECの利用率が大幅に高まったコロナ禍においても、EC化率がたった3.98%ということを考えると、カー用品業界とECの相性が悪いと言わざるを得ません。

筆者が考えですが、下記のような要因により、ECサイトの利用が進まないのではないかと考えております。

カー用品業界においてEC利用が進まない要因

カー用品業界のEC化率が高まらない要因としては以下のようなものがあると筆者は推察します。

① カー用品の取り付けには整備知識が必要となる
② 種類も多く自分の車に取り付けられるかの判断が難しい
③ 高額商品の場合は実際にモノを見て判断したい
④ 自動車所有者にとって専門店舗の利便性の方が高い
⑤ カー用品店の価格が安い

これらの理由があげられますが、やはり最も大きな理由は①の整備知識が必要になる点です。例えば、ドライブレコーダーを取り付ける方法としては、シガーソケットを利用してカンタンな取り付け方法もありますが、配線をバッテリーにつなぐ作業が必要な場合もあり、整備知識がない方でも気軽につけられるわけではありません。

車のホイールにしもて、取り付けるには、知識だけでなくジャッキなどの道具も必要となりますし、特に女性や車のリテラシーが低いユーザーに非常にハードルが高くなります。

そのようなユーザーが、ECサイトでカー用品で購入するものとしては、芳香剤やクッション、ドリンクホルダーなどもありますが、そもそもカー用品が必要なユーザーは車所有者であり、ECサイトで購入せずとも最寄りのオートバックスやホームセンターに行けば購入することができるため、ECで購入するメリットがないのです。

カー用品のECを利用するのは「リテラシーが高いユーザー」か「節約志向の高いユーザー」

カー用品のECサイトを利用するのは、整備知識があり自分でDIYが可能なユーザーに限られると思うかもしれませんが、そうではありません。実は「節約志向」の高いユーザーは高額商品のタイヤやホイールを少しでも安く購入するために、ECサイトを利用します。

節約志向の高いユーザーは、近所のカー用品専門店に足を運ぶだけではなく、Amazonや楽天市場の相場をチェックして、最も安いモノを購入します。しかも、カー用品専門店で、欲しいモノを実際に見て触って、確認し、それを全国で最も安い価格の商品をECサイトで購入するという、いわゆるWEBショールーミングを行っているのです。

このようなWEBショールーミングは、家電製品などの高価格帯で行われることが多く、タイヤやホイールも4本購入すると、安いものでも4万円以上しますから、節約志向の高いユーザーは最も安く購入できる方法を模索しているのです。

筆者が実際に取材した40代男性は、このような節約志向の高いユーザーでありますが、自分でホイールを取り付ける知識やスキルがありません。しかし、彼はAmazonを利用して、自分や親のために安いホイールを購入しております。彼に対して「では、どのようにして車にホイールを取り付けるのか?」と聞いたところ、以下のような回答が得られました。

◆40代男性がどのようにホイールを車に取り付けているのか?

Amazonで買ったホイールを車に取り付けることは、私もできません。でもね、冬になってタイヤをスタッドレスタイヤに変える時に、近所の専門店でタイヤを交換するのですが、その時に「このホイールもついでにつけてよ」というと、タイヤ交換だけの工賃でホイールも取り付けてくれるんですよ!

このように、節約志向の高いユーザーは、ECサイトや店舗に関わらず、最も安い商品を見つけて、工夫して工賃が発生しないようにしており、この例だけでなく整備士の友人に頼むなどして、取り付けをしているユーザーも多いのではないか?と筆者は推察します。

3つのカー用品業界のEC利用例

それでは、大手各社のECサイトにおいてどのような動きがあるのかを解説します。

①ネットとリアルの融合「BOPIS(ボビス)」の導入

以下は、オートバックスの最新の決算資料から抜粋したものです。オートバックスでは「BOPIS」を実験的に取り組んでおります。BOPISとは「Buy Online Pick-up In Store」の略語であり、ECで注文したものを店舗で受け取ることを意味します。

◆ECとBOPISの比較

BOPIS

従来のカー用品のECサイトでは、注文から配送、受取、そしてユーザーによる取付まで時間がかかりましたが、BOPISを利用することで、ユーザーが店舗に注文後、在庫を確定した後に指定の店舗に車で行くことで取り付けまで一気に時間短縮ができるのです。

しかも、注文した商品を自分の車に取り付けている間は、ユーザーは店舗内で他の商品を購入する方もいるため、クロスセルにもつながります。BOPISはもともとは、なるべく人と接触しないで商品を受け取るというコロナ禍において注目された購入方法でしたが、今後のカー用品業界のECの利用方法の一つとして注目すべき購入方法となります。

②カー用品以外に進出

オートバックスでは、車のライフスタイルを中心として世界観を展開するブランドを複数立ち上げています。オートバックスオリジナルブランドを扱うショッピングモールの「VRNVROOMN(ブルンブルーン)」を立ち上げました。

昨今のアウトドアブームをとらえて、カー用品としてのアプローチではなく、アパレル企業のような世界観を打ちたてることで、車好き以外のユーザーを捕まえるのが狙いです。

◆VRNVROOMN(ブルンブルーン)

vrnvroomn

画像引用元:VRNVROOMN(ブルンブルーン)

筆者も、このサイトを見てみたのですが、完全なオリジナルブランド商品だけを取り扱うECサイトというわけではなく、既存のブランド商品も多数販売しており、いわゆるビームスなどのセレクトショップに近い業態と感じました。

カー用品を主体として、アパレル商品なども販売するのは面白い取り組みだと思いますが、車好き以外のユーザーがこのブランドの存在に気がつくのはカンタンではありません。なぜならアウトドアやアパレル業界もレッドオーシャン市場であり、各社がマーケティングやブランディングにしのぎを削っています。

そのため、オートバックス社がどれくらいこの分野に力を入れて行くのかは筆者も注目しております。

③車種を選択してパーツを選べる「フジ・コーポレーション」のECサイト

タイヤをECサイトで購入したくとも、所有する車に設置できるのかどうかが、素人にはわかりにくい面がありますので、ECでタイヤを積極的に販売する場合は、その面をクリアーにしなくてはなりません。

業界大手3位の「フジ・コーポレーション」のECサイトでは、最初に自社の車を入力して、その車種に合う商品を一覧表示する取り組みをしております。

◆ECサイト上に自分の車を選択する画面

フジ・コーポレーションのECサイトの画面

画像引用元:フジ・コーポレーションネットショッピング

ユーザーは、この画面で自分の車種を設定することで、自分の車に合うタイヤやパーツのみを一覧に出すことで、安心して商品を購入することができるのです。このような取り組みを行うことで、車のリテラシーが低いユーザーでも、ECの利用を進める努力を各社行っております。

まとめ

カー用品業界において、商材の特徴から、急にECの利用率が高まるようなことはありません。しかし、カー用品業界は、若者の車離れやシェアリングエコノミーサービスの普及、物価高による不景気など多くの影響を受けて、先行きが明るい業界とは言えません。

そのため、オートバックスのように、ECで注文した商品を店舗で取り付けまでおこなうBOPISを展開したり、あるいはメディアとしてWEBを活用するなどして、今後のECサイト利用率を高めていくことが、各社生き残る道の一つであると筆者は確信します。

もし、カー用品業界のECサイトについてコメントあれば、是非コメント欄にあなたのご意見をお聞かせください。