ECサイトを自作する2つの方法はスクラッチとec-cube

エンジニアの方など、ECサイトの自作にチャレンジする場合ですが、ECサイトの既存のASPサービスを使わずに自作をする場合、下記の2つの方法が考えられます。

①スクラッチで作成する
②オープンソースをベースに作成する

もし、プログラムが好きで、自作にこだわりがあるという方以外には、ゼロからECサイトを作るメリットはほとんどありません。なぜなら、固定費の無料のECサイトでも、ある程度の機能がすでに実装されておりますし、また自作したからといって、サーバー費用や決済手数料が安くなるわけではないからです。

また、売上が目的の場合なら、メルカリShopsなどの集客力があるプラットフォームに出店すべきで、自作でECサイトを作るメリットがほとんどありません。

本日はforUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、ECサイトの自作について詳しく解説いたします。

自作でECサイトを作る方法は2つ

まず、ECサイトを自作するには2つの方法があります。一つひとつ解説します。

方法①スクラッチで作成する

こちらの方法は、サーバーの用意からECサイトに必要となる全ての機能を実装する方法であり、ITエンジニアと同等のスキルが必要な上級者向けの方法です。まず、ECに必要な機能ですが、以下のようなものがあります。

◆ECサイトに必要な機能

・商品登録機能
・受注機能
・決済機能
・在庫管理機能
・出荷管理機能
・会員登録機能
・クーポン、ポイント管理機能

しかし、いくら自作で作るといっても決済については、決済代行会社と契約しなければならないので、ECサイト用の決済を提供している会社と個別に契約し、契約後、決済代行会社からプログラム実装に関するドキュメントが送られてくるので、決済機能を実装します。

ECサイトに必要な機能は多岐にわたるため、また、ECサイトの既成のシステムの機能も高まっているので、個人がスクラッチで全てを作るメリットはほとんどありません。ただ、数少ないメリットとしては、プログラム言語などの開発環境も自らつくることができるので、Pythonなどの最新のプログラム言語でECサイトを作ることができます。

多くの既製品のパッケージのECサイトはJavaやPHP、.netで作られていることも多く、最新のプログラム言語を使うことができるのがメリットと言えるでしょう。人気のプログラム言語や環境で開発することで、エンジニアが集まりやすくなるメリットがあるからです。

方法②オープンソースをベースにECサイトを独自にカスタマイズする

オープンソースは、無料で提供されているソフトウェアのことで、日本ではec-cubeがオープンソースのECシステムとして非常に有名です。個人から大企業まで幅広く使われておりますし、オープンソースなので、企業がec-cubeをカスタマイズして再販売しているケースもあります。

ec-cubeはカスタマイズをせずに、初期機能だけでもすぐにECサイトとしてオープンできます。レンタルサーバーを借りて、ec-cubeをインストールするだけで、すぐにECサイトを開設できます。またプログラムの知識がなくてもec-cubeならECサイトを誰でも手軽に作ることができます。以下からダウンロードできます。

EC-CUBEインストールについて

例えば、エックスサーバーという有名なレンタルサーバーなら「クイックインストール※」という機能があり、サーバーのコントロールパネル画面のボタン一つで、ECサイトを作ることができます。※個別の設定は必要。

そして、このec-cubeをベースにカスタマイズして、ECサイトを自作することができるのです。ec-cubeはphpで作られており、ブログのオープンソースとして有名なWordPressと同じプログラム言語で、最新のPythonやGOなどのプログラム言語ではないですが、PHPも有名なプログラム言語の一つです。

ec-cubeは機能拡張もプラグインも豊富

ec-cubeのメリットは、もう一つ。日本で一番有名なECサイトのソフトウェアということもあり、利用者が多く、そのため無料のプラグインや、決済方法も多数あります。そのためわざわざ、新機能を開発せずとも、ボタン一つでプラグインを実装することできます。

また、ec-cubeはリファレンスも豊富など、WEBで検索すれば開発に必要な情報を見つけることができるでしょう。ですから新機能を開発したい場合は、まず、その機能がプラグインで提供されているか?をチェックしてから実装するべきです。

ec-cubeをカスタマイズしたら、新しいバージョンがインストールできない場合もある

ec-cubeのようなオープンソースソフトウェアで注意したいのは、バージョン管理です。通常新しいバージョンがでると、カンタンに新しいバージョンをインストールすることが可能です。しかし、ec-cube本体に影響する大きなカスタマイズを入れてしまうと、新しいバージョンがインストールできなくなります。

例えば、現在の最新のec-cubeは4.11ですが、大きなカスタマイズを入れてしまうと、それ以降のバージョンがインストールできなくなります。新しい機能が使えないだけなら良いのですが、バージョンアップできないとセキュリティ対策を完全に自身で行う必要があります。

ECサイトは決済や顧客情報が関係するシステムなので、その状態は極めて危険な状態となります。このような観点からも、ec-cubeの利用する場合においてはカスタマイズはおススメできないのです。下記をご覧ください。

ECサイトでのクレカ情報漏えい被害が増加、消費者庁と経済産業省が注意呼びかけ(INTERNET Watch)

実は、ec-cubeにおいての脆弱性がかなり危険視されており、ec-cubeで自作する場合は最も気を付けないといけない点と言えます。

ec-cube以外にもMagentoが有名

日本ではec-cubeが有名ですが、Magento(マジェント)が世界で最も有名なECサイトのオープンソースです。2018年にAdobeがライセンスを持ちましたが、オープンソースとして無償版が用意されております。最新のバージョンはMageto2です。以下からダウンロードできます。

Magent2

世界一のオープンソースなので、それだけ情報も多いのですが、こちらは英語なのがデメリットです。その他にもCSカートなどのオープンソースが存在しますが、もし、オープンソースでECサイトを自作するなら、やはり日本国内ではec-cubeが前提となるでしょう。

ECサイトを自作する目的を明確にするべき

個人向けにはBASEやSTORES、企業向けにもMakeShopやフィーチャーショップ。中大規模向けならecbeingやebisumartなど、あらゆる事業者に必要なECソリューションがある中、あえてECサイトを自作するメリットはほとんどありません。

コスト面からも、自分で保守をおこなうことを考えると、そこまで固定費が安くなることはありません。また、ECサイトは個人情報や決済を扱うシステムであるため、セキュリティ対策が非常に重要ですから、筆者はなるべくセキュリティ対策されているSaaSのシステムを使うべきだと思います。

また、個人がスキルアップのために、ECサイトを作るのも疑問が残ります。例えばec-cubeベースでカスタマイズを入れて自作するにも、ec-cubeのプログラム言語はphpであり、2022年の現在は、ITエンジニアが今からキュリアアップを考えるのに適したプログラム言語とは言えません。

ですから、自作する場合は目的を明らかにしておかないと、ECサイト作成中に完成を断念してしまうことになりかねません。

スクラッチのECサイトこそ、大規模ECサイトで使われる作成方法

ここまで自作のECサイトのデメリットの話ばかりになってしまいましが、スクラッチは究極のECサイト構築方法と言えます。なぜなら、Amazonや楽天市場、ZOZOTOWN、ユニクロ、ヨドバシカメラなどの超大手ECサイトは必ずスクラッチで作成されております。

なぜならこれらの有名ECサイトは、商品を売るためにカート周りに独自の工夫やマーケティング施策がほどこされたり、あるいは自社の出荷システムや基幹システムと連携するために、自社での開発が必要になります。そして開発スピードを考慮すると、スクラッチによる企業の自作ECサイトが使われているのです。

スクラッチの最大のメリットは、売上を極限に高めるための工夫がしやすいことです。この点はカスタマイズが可能とはいえ、パッケージやSaaSでは難しいところです。

まとめ

ECサイトを完全にスクラッチで自作する場合は、あくまでエンジニアが自己研鑽のためであったり、あるいはポートフォリオ作成のために行うべきであり、EC事業を行う手法としては現実的ではないでしょう。

もし、EC事業のために自作するのであれば、ec-cubeなどのオープンソースを利用してみてください。ただし、セキュリティ面には気をつけないと、会社の信用を著しく傷つけることになるので、もし自作にこだわりがないのなら、よりセキュリティの高いSaaSサービスも検討してみてください。