EC事業者のための実践的SNS運用

ECサイトの売上を高めるためにSNSをマーケティング施策として実行する場合、SNSはすぐに開始できるプラットフォームではあるのですが、売上に結び付けたりフォロワーを増やして影響力を養うのはカンタンではありません。また、SNSの運用には相当な労力がかかるので、EC事業者には負担が少なくありません。

これからEC事業者がSNSを開始する場合は、まずはEC運営の中にSNS運用を取り込んで、最小限の労力からスタートさせるべきです。スモールスタートで運用しながらコアファンを増やしていき、いずれSNSにアクセルを踏むときの土台作りから始めます。

本日は、forUSERS株式会社でマーケティングを担当している筆者が、EC事業者が実施すべきSNS運用について解説いたします。

どのSNSを実施すべきか?Instagramの利用率は58.9%と半数以上が利用するプラットフォーム

まず、下記をご覧ください。2022年(令和4年)のSNSの世代別利用率を表した資料です。

◆SNSの世代別利用率(総務省資料)

SNS世代別利用率(総務省作成令和4年)

引用元PDF資料:令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 (令和5年6月総務省情報通信政策研究所)

◆主要SNSプラットフォームの利用率

・LINE 96.8%
・YouTube 84.2%
・Instagram 58.9%
・X(Twitter) 46.2%
・TikTok 31.2%
・Facebook 29.2%

もはや、社会インフラにもなった「LINE」と「YouTube」は全世代にわたって圧倒的な利用率がありますが、これらはSNSではありますが、「チャット」や「動画視聴」のプラットフォームとして利用している方が多く、SNS利用としては「Instagram」が最も利用率の高い(58.9%)プラットフォームであるため、ECサイトにおいて、まず始めるべきSNSはInstagramだと言えます。

ECサイトで販売する商品の多くは物販(有形物)であるため画像中心のSNSであるInstagramは相性が良く、また、文章が苦手というEC事業者でもはじめやすいというメリットがあります。

その次に利用率が高いSNSは、X(旧Twitter)です。特に20代の利用率が78.8%と高く、20代がターゲット層であるEC事業者は、InstagramとあわせてSNS施策を展開してみるべきでしょう。

特にXはInstagramと比べて情報リテラシーが高く、「自分で積極的に情報収集したい」という方が利用しているメディアであり、そういった方に商品を知ってもらうことができれば拡散のキッカケにもなります。

TikTokは、10代の利用率が66.4%と高く、ECサイトの商品が10代の若者向けである場合は、マーケティング戦略に絶対に取り入れたいSNSの一つと言えるでしょう。Facebookは、10年前までは多くの方が利用するSNSでしたが、国内では30~40歳の利用率が高く、若い方の利用率は高くありません。Facebookの日本国内での利用における特徴は、Linkedinのようにビジネス向けのSNSとして利用されていることが多い印象です。

ここまで、SNSの世代別利用率について解説してきましたが、ここからはECサイト事業者がどのようにSNSを展開していくべきか?について筆者の経験を踏まえて解説いたします。

EC事業者がSNSを実施する場合は、SNSをEC運営の一部として取り入れることから始めるべき

「フォロワーを1万人にする!」
「バズを生んで自社の商品を世の中に一気に広める!」

と意気込んでSNS運営を始めるEC事業者も多いと思うのですが、SNSの独自ノウハウと熱意の両方がないとSNSで成果を出すのは困難です。そのため、多くのEC事業者がSNSの更新を途中であきらめたり更新頻度が少なくなり、アカウントの運用が上手くいかなくなります。

EC事業者がSNSを始める際に重要なことは、SNSをEC運営の一部に入れてしまうことです。具体的には、以下のような運営方法です。

◆SNSをEC運営の一部に入れてしまう方法の例

① 商品撮影する際にInstagram用の写真も撮影し、Instagram投稿を実施
② キャンペーンを実施する際、Xで告知する
③ 顧客対応の一部として、自社商品について投稿している人にリプライやリポストする

このように、EC運営の一部としてSNSを取り入れることからSNS運用を開始してみるべきです。

EC事業者は、仕入れから商品登録、受発注処理、配送手続き、顧客対応と実施する業務が多岐にわたっているため、SNS運用に力を入れることがなかなかできません。そのため、まずは運用の一部に組み込むことから始めるべきだと思います。

では、そんな最小限のSNS運用の中で、どのようにフォロワーを増やせば良いのでしょうか?次に解説いたします。

SNS立ち上げ時は「友人」や「常連客」にフォローしてもらうことから始める

では、EC事業者はSNS立ち上げ時にフォロワーをどのように増やしていくべきでしょうか?まずは以下のように、身内や常連客の方など近いところからフォローしてもらうことから始めます。

◆最初にフォローしてもらう方

・自分のプライベートSNSアカウント
・スタッフ
・友人
・常連客

このような方々に、アカウント立ち上げ時に個別に声をかけてフォローしてもらいます。特に常連客のフォローは大切です。最初に投稿しても「いいね」や「コメント」はほとんどもらえませんが、自社商品を愛する常連客から反応してもらうことで、EC担当者もSNSを続けやすくなるからです。

筆者もYouTubeチャンネルを2年運営して、チャンネル登録者数が1,300人になりましが、100人未満の際は、動画を投稿しても全く反応がない期間が続きましたが、いつも「いいね」してくれる常連客にずいぶんと助けられました。フォロワーが100人未満など少ないうちは身内のサポートはSNS運営を継続するために非常に重要となるのです。

ただし、この方法にはデメリットがあります。それはエンゲージメント率(いいねやコメント、シェアなどのユーザーからの反応率)が低くなるということです。

仮に100人の身内にフォローしてもらうことに成功したとしても、「お付き合い」でフォローしてくれる方もいるため、投稿に対して反応をくれるユーザーは多くはありません。そのためエンゲージメント率は低くなり、エンゲージメント率が低くなると、SNSプラットフォームのアルゴリズムによってアカウントの露出が下げられてしまうことがあるのです。

筆者の考えですが、EC事業者がSNSプラットフォームのアルゴリズムを気にしてバズを意識した投稿ばかりするのは、体制の整った会社しかできません。

それよりも「自社のコアファン」をSNS上で形成していくことに力を注ぐべきだと考えますので、エンゲージメント率は初期においてはそこまで気にする必要はないでしょう。(そもそも、SNSノウハウがないとエンゲージメント率をアカウント立ち上げ時から高く保つのは困難だからです。)

EC事業者ならではの3つのフォロワーの増やし方

それでは、EC事業者のフォロワーの増やし方を3つ解説いたします。

① 初回購入者に対してSNSのフォローを依頼する

自社の商品に注文が入った場合、初回購入者にもSNSをフォローしてもらう施策を実施します。注文者にフォローを促すタイミングは以下の通りです。

◆初回購入者にSNSのフォローを依頼するタイミング

・注文確認メール
・商品にSNSフォローのQRコードを同梱
・商品購入後でレビューを依頼するタイミング
・注文者から問い合わせがあったタイミング

このように、自動返信メールや商品に同梱するQRコード、あるいは顧客対応のタイミングで直接依頼するなどのタイミングでフォローを依頼することができます。

フォロワーが少ないうちは相互フォローを基本運営として、フォローしてもらえればフォロー返しを行って、個別にDMを送り「フォローをありがとうございます」とウェルカムメッセージを送りましょう。ウェルカムメッセージは自動送信できるので、具体的な設定方法についてはXの公式ホームページにやり方が記載されているので、以下を参考に設定してみてください。

ウェルカムメッセージ(X公式サイト)

② ECサイトの商品ページの商品説明欄にフォローを促す説明文を追加する

商品ページの商品説明欄の最下部に、以下のような注意書きを追加します。

◆商品説明欄でフォローを促す説明文

※商品が在庫切れの場合は、入荷お知らせメールにご登録いただくか、弊社のInstagramをフォローしていただくと、入荷のタイミングをすぐに知ることができます。

このようになメッセージをテンプレートとして設定しておくことで、仮に人気商品が品切れの場合、その商品がどうしても欲しいというユーザーにフォローしてもらえる可能性が高くなります。ただし、その際はInstagramやXなどで再入荷のお知らせをしないと離脱されますので、必ず商品入荷の告知もSNSで投稿するようにしましょう。

③ 自社商品について投稿している人にリプライやコメントを入れる

市場調査の一環で、定期的にエゴサーチ※を実施します。そこで自社商品について投稿している方がいれば、リプライをします。

※エゴサーチとは、自社名や商品名でSNSで検索して、自社についてのユーザー投稿を探すこと

筆者の経験ですが、筆者のブログ記事に関して投稿してくれた記者さんがおり、リプライをすると以下のようなメッセージが届きました。

「まさか、ご本人から返信が来るとは!」

その方には、そのまま筆者のXアカウントをフォローをしていただけました。このようにユーザーと積極的にコミュニケーションをとることで、フォロワーを増やすこともできるのです。また、過去にSNS上で交流経験があれば、「いいね」や「シェア」をしてくれるエンゲージメントの高いフォロワーとなってくれるはずです。

ここまでは、SNSをEC運営の一部にする方法を紹介してまいりましたが、次に、本気でEC事業者がSNS運営を実施する場合のやり方を、SNSプラットフォームごとに解説します。

本格的にSNSでフォロワーを増やすには!

それでは、SNSプラットフォームごとに過去記事を紹介するので、本気で取り組みたいSNSのフォロワーの増やし方については以下の記事をご覧ください。

ここでは概要しか列挙していませんが、過去記事でそれぞれについて詳しく解説しているので、本記事とあわせてご覧ください。

Instagramのフォロワーを増やす手法15選

Instagramのフォロワーの増やし方は下記の15の手法として過去の記事で紹介いたしました。

◆Instagramのフォロワーを増やす手法15選

手法① プロフィールでフォローするメリットを明確にする
手法② フィード投稿では、プロフィールが気になるように最大限の工夫を促す
手法③ ストーリーズではフォロワーと関係性を高める
手法④ ハイライトにストーリーズを配置する
手法⑤ リール動画を積極的に使う
手法⑥ フォロワーとDMのやりとりを行う
手法⑦ コメントにはすぐ返信をする
手法⑧ フォローしてくれた方にDMを送る
手法⑨ 自分のジャンルと同じアカウントをフォローする
手法⑩ 保存したくなるような投稿を企画する
手法⑪ 世界観を統一する
手法⑫ ジャンル認知させる工夫を行う
手法⑬ 成功しているアカウントをリサーチする
手法⑭ ハッシュタグをフォローする
手法⑮ 反響の良かった投稿と「似ている投稿」をする

詳しくは、下記の記事をご確認ください。

過去記事:【全解説】Instagramのフォロワーを増やす15の手法

それでは、次にXのフォロワーの増やし方を紹介します。

X(Twitter)のフォロワーを増やす手法26選

Xのフォロワーの増やし方について、26の方法として過去記事でまとめたので、以下に抜粋します。

◆Xのフォロワーを増やす手法26選

手法① アカウント名は「名前@肩書」と一目でわかりやすくする
手法② プロフィール文は「誰に対して何を提供できるか?」「自己紹介」「フォロー訴求」という順序で作る
手法③ アイコンは本人写真にすべき!食べ物の写真などはNG
手法④ カバー写真は「看板」なので画像加工して世界観を演出する
手法⑤ 位置情報に位置は入れない!URLにつなぐ文章を入れる
手法⑥ 固定ツイートは自分のプロフィールがわかるものがよい
手法⑦ ベンチマークするアカウントを決める!
手法⑧ 1日に最低1投稿する
手法⑨ 投稿する時間帯は「ホットな時間帯」を狙う
手法⑩ トレンドワードでツイートする
手法⑪ 投稿はまず140字オーバーで書いてから140字にまとめるようにする
手法⑫ 投稿は言い切る!「です」「ます」など丁寧すぎる投稿はやめる
手法⑬ ハッシュタグは使わない
手法⑭ ポストする前に3回以上は見直す習慣を身に付ける
手法⑮ 画像や動画を投稿してアカウント滞在時間を増やす!
手法⑯ リプライや引用RTは全て返信する
手法⑰ 「いいね」をたくさん押そう!
手法⑱ 他のアカウントの伸びているツイートを引用RTする
手法⑲ 引用RTの割合も50%程度含めてみる
手法⑳ フォローバックをしない
手法㉑ X Premiumに課金して長文を作って滞在時間を稼ぐ
手法㉒ アナリティクスの数字を見る
手法㉓ リアルでたくさんの人と会って濃い人間関係を作る
手法㉔ 日々の仕事などでの「発見や気づき」をメモしておく
手法㉕ 質の高い投稿でアカウントのファンになってもらう
手法㉖ とにかく継続すること!

具体的に知りたい方は、この記事と合わせて下記の記事もご覧ください。

過去記事:Xのフォロワーを「グン」と増やすためのテクニック26選

それでは、次にTikTokについてフォロワーの増やし方を紹介します。

TikTokのフォロワーを増やす手法20選

TikTokのフォロワーの増やし方は、過去記事の抜粋で20の方法をまとめております。

◆TikTokのフォロワーを増やす手法20選

手法① ジャンル選びで重要なのは「ニッチ」を避けること!
手法② フォロワーを増やすなら「コンセプト設計」をしっかり作る
手法③ TikTokでフォロワーを増やすための「プロフィール」設定
手法④ リサーチ
手法⑤ 「TikTokインサイト」で自分の投稿を分析する
手法⑥ 動画で使う音楽はおススメで出てきたものを保存する
手法⑦ 投稿テーマを統一する
手法⑧ 最初の1~2秒でユーザーに指を止めてもらうためタイトルが重要
手法⑨ ジェットカットで「間を埋める」
手法⑩ 話すスピードは速めにする
手法⑪ すでにバズっている動画から共通点を見つける
手法⑫ テロップの位置は真ん中か真ん中よりやや上
手法⑬ 投稿時間は4つ:「6時~9時」「11時~13時」「16時~20時」「22時~24時」
手法⑭ ストーリーズでファンを育成する
手法⑮ ライブ配信でファンとつながる
手法⑯ TikTokのアルゴリズムを攻略する
手法⑰ ユーザーにエンゲージメントを促す
手法⑱ コメントを促すためのテクニック
手法⑲ 関係のあるハッシュタグをつけること
手法⑳ 動画を最後まで見てもらうひと工夫で視聴時間を上げる!

TikTokでフォロワーを増やしたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

過去記事:【全解説】TikTokのフォロワーを増やすための20の手法

次は、Facebookのフォロワーの増やし方を紹介します。

Facebookのフォロワーを増やす5つのステップ

Facebookのフォロワーの増やし方は、過去に5つのステップとして紹介いたしました。

Facebookのフォロワーを増やす5つのステップ

ステップ① ターゲットが一目で「こういうアカウントだな!」とわかるようなプロフィールを作る
ステップ② お役立ち投稿を定期的に実施する
ステップ③ Meta広告で「ページのフォロワーを増やそう」を実施する
ステップ④ 投稿に反応してコメントやDMが来たらすぐに返信をする
ステップ⑤ フォロワーが増えたら、エンゲージメントが高くなる投稿を企画する

過去記事:Facebookのフォロワーを一気に増やす5つのステップ

まとめ

ECサイトでのSNS運用は、まずはEC運用の一部として最小限の労力でスタートさせます。そして、ECサイトの売上が増えて体制が整ってきたタイミングで、SNSのフォロワーを増やす施策を試してみてはいかがでしょうか?

SNSではフォロワー数やバズばかり注目されますが、SNS運営で大切なことは、まずはコアファンを育成することです。そのためには、リアルでもSNS上でも積極的にユーザーと交流して、ファンを作っていくことに専念しましょう。

そういった活動の結果、フォロワーが増えてエンゲージメント率が高まり、さらり露出が高まってくることにつながるからです。あなたのSNSアカウントの成功を祈っております。