ASPも可能!ECと外部システムをAPIを使った連携が普及

APIとは(Application Programming Interface)の略で、HTTPリクエストを発行しデータ(JSON、XML方式)を返してもらうことで、外部サービスとデータ連携を行うことができます

そのため、最近ではAPIを使ってECサイトと外部システムを連携をするケースが非常に増えております。なぜなら、ECサイトにカスタマイズを入れて、その機能を実装するよりも、外部のシステムやツールとAPI連携する方が費用も負担も非常に少なくなるからです。

ただし、API連携は外部サービスの仕様変更に対応する必要がありますし、また、外部連携先ごとにAPIの仕様が異なる場合は、それぞれに対応しなければならないなど、API連携においては業界標準の仕様がないデメリットがあります

本日は、forUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、ECサイトのAPI連携について詳しく解説いたします。

ECサイトで他社サービスのAPIを使うとはどういうことか

例えば、ASPサービス(SaaS)のECシステムを使っている場合、基本的にシステム連携やカスタマイズを行うことはできません。しかし、MakeShopのような一部のASPサービス、あるいはパッケージのECシステムでは、以下のようなAPIによるシステム連携が可能です。

APIと外部システムの連携

APIを使って、連携したい相手先のWEBサービスからデータを取得して、以下のような4つの処理を行うことができます。

① データ登録処理
② データ取得処理
③ データ更新処理
④ データ削除処理

つまり、連携したい相手先のWEBサービスがAPIとして公開されていれば、ECサイト側からWEBサービスを呼び出して、相手先のデータを登録・更新・削除したり、あるいは相手先のデータを取得してECサイト側に持ってくることができるのです。

ECサイトとAPI連携でどのようなことが可能になるのか?

では、具体的にMakeShopのようなAPI連携できるECサイトが、他のシステムと連携してどのようなことが可能なのか?具体例をあげて解説します。

① 基幹システムとの連携

基幹システムとのシステム連携は、中大規模の事業者に必要な連携サービスです。基幹システムとの連携は、ECサイトと連携する側の基幹システムをカスタマイズして、ファイル転送によるものやデータベースを直接参照するなどのシステム連携を行うのが一般的ですが、この方式だと、軽く数千万円からの費用がかかる連携となります。

しかし、もし基幹システム側がAPIを提供できる場合は、ECサイト側でそのAPIを使ってデータの受け渡しができるので、開発費用や開発期間を一気に短縮することが可能です。

ただし、基幹システム側がスクラッチで作られていたり、レガシーシステムの場合はAPI連携が困難となります。

② WMS(倉庫管理システム)との連携

WMSとECサイトの連携は、主にCSVファイルを使った連携が多いのですが、もしWMS側のシステムがAPIでインターフェースが標準化されているなら、ECサイト側でAPI連携をすることができます。

CSVファイルを使った連携では、どうしてもCSVファイルのアップロードとダウンロードに手作業が入ってしまい業務効率が悪くなるのですが、APIを使った連携を行えば、出荷指示の取り込みなどの作業を自動化できるので業務効率が高まります。

③ Amazon Payや楽天ペイなどの決済サービスとの連携

自社ECサイトを、スクラッチで作っている方は、独自にAmazon Payや楽天ペイなどのID決済サービスとAPIを使ってシステム連携を行うことができます。

※ASPサービスやパッケージECは、すでにこれらのサービスと連携済みであることが多く、自分達で連携が不用です。

もちろん、これらのID決済サービスを契約を事前に結ぶ必要がありますが、その後、下記リンク先のようにAPIで連携するためのリファレンスが各社から公開されており、ITエンジニアはそのリファレンスを参考して、自社ECサイトにID決済を導入します。

V2:サービス詳細||楽天ペイ(オンライン決済)

④ SNS提供のAPI利用

FacebookやLINEなどのSNS事業者が公開するAPIをログイン認証に活用することで、様々なウェブサービスやアプリでログインする際に、すでにユーザーが持っているSNSアカウントでログインできるようになります。

またSNSのAPI連携では、例えばInstagramに投稿するとFacebookにも同時に投稿できるなど、ひとつのSNSに投稿することで別のSNSへの記事共有も可能にします。

◆SNSの同時投稿

SNSの同時投稿

⑤ Googleアナリティクス提供のAPI利用

ECサイト担当者であれば必ず導入しているGoogleアナリティクス(GA4)ですが、実はGoogleアナリティクス側でAPIが提供されており、そのAPIを利用して独自のレポートを自動で出力することができるのです。

Googleアナリティクスで用意されているレポートならば、Googleアナリティクスの設定で自動化も可能ですが、例えばGoogleアナリティクスから出力したデータを自社ECサイトに取り込むなども可能になります。Googleアナリティクスに限らず、APIを提供している分析ツールであればECサイトに自動で取り込むこともできるのです。

下記のサイトでは、GoogleアナリティクスのAPIの利用について素晴らしくまとめられているので、興味のある方は併せてご覧ください。

Googleアナリティクス APIの基本から利用準備まで

⑥ 各種マーケティングツールとの連携

ECサイトには、売上を高めるための様々なツールがあります。

・WEB接客ツール
・かご落ち対策ツール
・在庫連携ツール
・CAMツール

ツール側がこのようなAPIを提供していれば、カンタンにAPI連携することができます。ひと昔前までは、このようなソリューションの利用は、カスタマイズしたり該当ページのみを他のURLで用意する開発が必要でしたが、昨今ではAPIにより費用も開発労力もかけずに連携ができるようになっているのです。

API連携のデメリット

API連携を使えば、ECサイトに必要な機能やソリューションを、費用を抑え労力を最小限にして導入することができますが、以下のデメリットがあることを踏まえてECサイトの運営を行うべきです。

デメリット① 相手先サービスのサーバー障害

API連携のトラブルで最も多いのが、相手先サービスのサーバー障害です。例えば、導入したAPIサービスが受注や決済と関係するなら、ECサイトの運営自体が止まることがあります。APIに限った話ではないですが、サーバー障害で大騒ぎとなったのがAmazon社が提供するAWSの障害です。

2021年9月2日にAWSの大きな障害があり、日本国内の多くの有名サービスがストップする事態となりました。

AWSの大規模障害、原因はネットワークデバイス 新プロトコル処理に潜在的なバグ

AWSは例としてあげましたが、APIで連携先のサービスが止まると、場合によってはECサイトの運営も止まることもあるのです。Amazonでさえこのような障害があるのですから、残念ですが100%完璧な企業は存在しません。そのため、ECサイト担当者はそのような緊急事態にどのようなことを実施すべきか、事前に対策を練っておきましょう。

デメリット② APIの仕様変更への対応

API連携だと費用が抑えられて労力も最小限と解説しましたが、相手先のAPIに仕様変更がある場合はECサイト側でも対応する必要があるので、例えば連携しているサービスがGoogleマップなどのAPIを利用している場合に、急な仕様変更があれば対応せざるを得ません。

費用を支払っていたり、パートナー企業とのAPI連携であれば急な仕様変更はないはずですが、GoogleやInstagramなど広く公開されているAPI連携を行っている場合には、更新情報を常にチェックするなど注意が必要となります。また、API連携が相手先の理由によりサンセットしてしまう場合も同様です。

デメリット③ API連携が多いと、それぞれに対応が必要

一見便利そうなAPIですが、自社ECサイトとAPIの連携が増えるとそれぞれに対応が必要となります。つまり現状としては、連携先のサービスごとに対応が必要であり、標準化されたものはAPIにおいては存在しないので、都度個別の対応が必要となるのです。

まとめ

APIの普及により、多くのSaaSサービスが個別のカスタマイズが可能となっています。例えば、無料の決済サービスで有名なSTORESも、複数店舗を持つ中規模以上の企業に対してAPIによる個別カスタマイズを実施しています。

このように、ECシステムにおいても今までカスタマイズが不可能とされていたASPサービスにおいても、APIを使って個別のシステム連携に対応することが可能になってきました。今後はこの技術の仕様が標準化され、さらに普及すれば、外部システムとの連携でさえももっと気軽なものになるのではないでしょうか?