中古車業界のEC化が「ほとんど進まない」本当の5つの理由

様々な業種でEC化が進む中、中古車業界ではEC化がほとんど進んでいません。

業界の大手のみならず、インターネット通販大手「楽天」なども中古車のEC(オンライン販売)を手掛けていますが、実績はほとんど出ていません。 EC化がほとんど進まない理由は、「高額な取引だから」とか「実際に見て、試乗してみたい」、「全国どこでもリアル販売店が存在する」といった理由もありますが、本当の理由は下記の5つです。

◆EC化率がほとんど進まない5つの理由

理由①中古車販売店への不安
理由②手続きのほとんどが紙ベース
理由③決済手段が「現金(振込)」「ローン」のみ
理由④買取(下取り)は実車査定が必要
理由⑤アフターサービスへの不安

本日は、かつて中古車業界で仕事をしていた筆者が、中古車業界のEC化率がなかなか進まない理由について、業界の背景を含めて詳しく見ていきます。

 自動車業界のEC化率は「3.6%」と他分野に比べてかなり低い

中古車業界単体のEC化率は集計されていないため、ここでは自動車業界のEC化率の数値を基にします。

経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」によると、物販系分野のEC化率は下記グラフのとおりであり、「自動車、自動二輪車、パーツ等」の分野におけるEC化率は3.6と、「書籍、映像、音楽ソフト」の53.5%、「生活家電、PC・周辺機器等」の42.9%などの他分野よりもかなり低い数値です。

◆物販系分野のEC化率

データ引用先:令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書経済産業省

中古車業界に限らず自動車業界では大きく下記3つの理由により、EC化率が低くなっています。

◆自動車業界においてEC化率が低い3つの理由

理由①数十万円~数百万円という高額な買い物のため
理由②実際に見て、試乗してみたいというニーズがあるため
理由③全国どこでもリアル販売店が存在するためリアルの利便性が高いため

上記の自動車業界におけるEC化率3.6%という数値は、EC化が進んでいる「ナビゲーション」「タイヤ」などパーツ類の販売が含まれています。自動車業界の中の、中古車業界のEC化に限るとさらに低い数値と考えられます。筆者の知り合いの業界関係者の話も踏まえると、筆者は中古車業界のEC化率は1%未満ではないかと予測します。

中古車業界はリアルな取引が主流となっていましたが、デジタル化する近年においてもEC(オンライン)化がほとんど進まない本当の理由は下記5つであると筆者は考えます。

中古車業界のEC化がほとんど進まない本当の理由5つ

中古車売買という高額な取引はリアルで行うもの、という先入観が現在において根強くあるのも事実ですが、例えば高級ブランドやハイスペックパソコンなど高額な取引をEC(オンライン)で行っているものも多々あります。

また中古(リユース)のため、実際に見て取引したいというニーズもありますが、アパレルや家電の中古(リユース)売買ではEC化が進んでいます。高額な取引や実際に見て取引したいという理由以上に中古車業界のEC化が進まない本当の理由は下記5つです。

理由①中古車販売店への不安

全国の中古車販売店の総数は2025年現在で約4万店が存在し、そのほとんどは従業員10人以下の小規模店舗です。

昔からロードサイドには小規模な中古車販売店が多く立ち並んでいましたが、どの店も一元では入りにくく、またその規模の小ささから取引やアフターフォローの不安さが感じられています。

一方で、大手中古車販売店の「ガリバー」や「WE CARS(旧ビッグモーター)」、「ネクステージ」は全国で多数の大型販売店を出店していますが、大手といえども中古車業界の悪いイメージが少なからず残っています。

ビッグモーターの不正事件は中古車業界のイメージを一層悪くしており、メーカーのディーラー以外は信用できないという方が、まだまだ多いです。

 中古車という高額な売買を、取引に不安がある販売店のEC(ネット販売)で購入したいという方は、現時点では少数であり、EC化が進まない理由の一つです。 

理由②手続きのほとんどが紙ベース

デジタル化が進む昨今においても、中古車販売・買取の手続きはほとんどが紙ベースであり、取引のEC化が進まない理由のひとつです。

なぜ、いまだに紙ベースなのかというと、陸運局での登録が紙ベースであるためです。 車の車検証も紙ですし、登録するための「印鑑証明書」「委任状」「譲渡証」など登録書類は全て紙です。

よって、現段階ではEC化と言っても、登録手続きは全て紙であるため、手渡しや郵送と言った手数が発生します。 陸運局の手続きは、従来必要であったマークシートが不要になるなど、一部簡素化されていますが、紙ベースでのやり取りが多く残っています。

 完全なEC化を進めるには、「印鑑証明書」や「車検証」などの書類をデジタル化する必要があり、実現にはまだまだ時間がかかりそうです。 

 理由③決済手段が「現金(振込)」「ローン」のみ

 中古車販売店での代金の決済手段は、基本的に「現金(振込)」か「ローン」であり、他業種で主流の「クレジットカード」や「QRコード」の決済には対応していません。 「クレジットカード」や「QRコード」に対応しない理由は、代金が高額なため、手数料が高くなり、中古車販売店が負担しきれないためです。

 また、「ローン」の取引については、一部電子化がされているものの、いまだに紙ベースでの申し込みや審査が多く残っており、EC化が進んでいません。銀行などの金融機関では、いまだにハンコが必要なことも多く、オンラインで手続きが完結しません。 

理由④買取(下取り)は実車査定が必要

車の乗り換えで、今乗っている車を売りたい(買取)という時には、実車の査定が必要となり、対面でのやり取り(商談)が発生します。 中古車の買取(下取り)の非対面化は、過去に一部の業者で試されましたが、運営が立ち行かなくなっています。

インターネットサービス大手DMMでは「DMM AUTO」という名称で、スマホ上のみで売買を行うサービスを2018年に開始しましたが、利用者の拡大を進められず現在ではサービスを行っていません。

 中古車買取のEC化(非対面化)には、ネット上で車の価値を算出する必要がありますが、車の内外装や修復歴の有無は、実車を見なければわからず、EC化が進んでいません

中古車は修復歴の有無により、金額が大きく変わってくるため、正確な金額を算出するためには実車を確認する必要があります。ネットや電話で概算の金額を提示し、その金額で買い取るということも可能ですが、実際の値段より高く買ってしまうもしくは安く買いたたかれてしまう、という弊害があり、現時点ではEC化が進まない理由のひとつです。

新車登録時からの修理歴や整備歴をもれなく記録したデータベースが一元管理されるようになれば、実車を確認せずとも車の修復歴が明確になり、オンライン査定の確実性が増大するためEC化が進みます。ですが、その実現には全国の修理工場にシステム導入などが必要となり、実現へのハードルは高いです。 

理由⑤アフターサービスの不安

中古車購入後の車の不具合への不安はユーザーに取って大きいです。 不具合が起こった際は、まず購入した店舗に相談するというのが一般的であり、見ず知らずのところに持ち込むのはハードルが高いです。

EC(ネット販売)を手掛ける販売店では、「全国どこでも提携整備店で修理可能」と打ち出していますが、実際に不具合が生じた際は、ユーザーのほうで整備店に持ち込んでくれというものであり、不安は残ります。

 ECで購入しても、気軽に持ち込めたり相談できる店舗があれば、EC購入のハードルが下がりますが、そのような体制をしっかりと構築している販売店はほぼ無いため、EC化が進まないひとつの要因です。 

参考サイト(東洋経済オンライン):ビッグモーター不正報道「完全黙殺」成功の諸事情

業界最大手「ネクステージ」は2014年にEC販売着手するも断念し、近年は店舗網拡大

中古車業界の売上高トップの「ネクステージ」は、2014年にAmazonでオンライン販売を開始するも、思うように売上が伸びず、早々に断念しています。近年は、下記のようにリアルの大型販売店を含めた店舗網を全国で急速に拡大しています。

◆ネクステージ店舗数推移

データ引用先:ネクステージ決算説明資料より

オンライン販売は諦めているかのように、リアル販売に力を入れています。ネクステージの動向からも現状ではEC販売よりもリアル販売が圧倒的に強いことがわかります。 

インターネット通販大手「楽天」 も大苦戦

インターネット通販大手「楽天」は2020年に中古車販売に特化したサイトを開設し、オンラインの中古車販売に力を入れていますが、オンラインで完結できる取引の実績はほとんど出ていません。

楽天のサイト上は約10万台の在庫が掲載されていますが、これらは「カーセンサーネット」や「グーネット」と同様に、全国の提携中古車販売店の在庫を掲載しているのみであり、「楽天」がダイレクトにオンライン販売できる「楽天Car直販店」の在庫はごくわずかの約30台(2025年2月現在)となっています。

楽天の専用サイト「楽天Car」では多くの仲介販売は行っているものの、ECでの直取引はごくわずかとなっています。

参考サイト:【楽天Car】車を買う!売る!メンテナンスなどカーライフを幅広く提案

軽自動車の売買はEC化拡大の余地あり

中古車業界ではEC化は進んでいませんが、軽自動車の販売(買取)に限っては、EC化の拡大の余地があります。 なぜなら、軽自動車の登録には印鑑証明書が不要であり、購入者が提出する書類は全てネット上で完結するからです。

※画像は筆者撮影

 車検証や自賠責保険証などは紙になりますが、納車までの手続きは全てネット上で完結することができるため、EC化へのハードルは普通車より低いです。

軽自動車は普通車より車両価格が安価であるとともに、車両不具合時も普通車より短時間で対応できることが多く、決済方法の多様化やアフターサービス網が整備されれば、EC利用は浸透するかと思われます。

現状ではテスラがEC化でリード

テスラは国内のディーラーなどとは異なり、リアル店舗を極力持たず、オンライン販売に力を入れています。購入の申し込みはネットのみから可能であり、リアル店舗は実車の確認や試乗がメインとなっています。

◆テスラ モデルS

※画像は筆者撮影

中古車販売においても、大型展示場のようなものは持たず、新車と同様にネットで購入が完結する仕組みを取っています。書類のやり取りや納車時はリアルでの取引となりますが、ローンを含めた手続きはネットで完結でき、EC化では他社をリードしています。

テスラのような形態が他販売店でも広がっていくと、中古車業界のEC化率が高まっていくと思われます。

公式ページ:テスラ – 電気自動車、ソーラー、クリーンエネルギー

中古車のEC店舗(オンラインストア)を展開する代表3社

中古車業界のEC化ままだまだ進んでいませんが、オンラインサイトを運営し、EC化を進めようという取り組みは各社でなされています。オンラインストアを展開する代表3社をみていきます。

①トヨタオンラインストア

トヨタディーラーによるオンラインストアです。全国のトヨタのディーラー店が参画しており、サイト上で地域のディーラー店の在庫も選択できます。定期点検と保証を付帯し、ディーラーならでは安心感を打ち出しています。

ただし、全体の掲載台数が約400台(2025年2月現在)とかなり少ないです。しかも、車種構成はアクアやシエンタなどのコンパクトカーに偏っており、利用者の多様なニーズに対応できるとは到底思えません。トヨタも中古車業界におけるEC化はまだ早いととらえており、そこまで力を入れていないのが現状です。

◆トヨタオンラインストア

公式ページ:トヨタオンラインストア

②楽天Car中古車

楽天が運営するオンラインストアです。楽天の規模を活かし、全国の中古車販売店と提携することで掲載台数は10万台以上と多数の中古車情報を掲載しています。

ただし、上記にもありますが、「楽天Car直販店」の在庫以外は、提携する中古車販売店とつなぐだけで、完全なオンライン販売ではありません。「楽天Car直販店」の在庫は現在では少なく、オンライン販売の取引もごくわずかです。今後、「楽天Car直販店」の在庫が大きく増えると、利用者拡大の可能性があります。

◆楽天Car中古車

公式ページ:楽天Car中古車

③BADDICA DIRECT(バディカダイレクト)

元ビッグモーターの社員が立ち上げた中古車販売店「バディカ」が運営するオンラインストアです。AI(人工知能)を利用した相談受付や、SNSでの対応をメインにオンラインで取引が完結する仕組みを取っています。

YouTubeやXでの発信も積極的に行うことで、オンライン購入のハードルを下げる取り組みを継続しています。「バディカ」は新しい会社であり、大手と比べると知名度が低いですが、オンライン販売に注力しており、今後在庫台数も増えて、オンライン販売が伸びてくると中古車業界のEC化拡大に寄与しそうです。

◆BADDICA DIRECT

公式ページ:BADDICA DIRECT(バディカダイレクト)

最後に

中古車業界では、メーカーのトヨタなど大手も中古車オンラインストアを開設し、オンライン販売に力を入れていますが、まだまだ浸透していません。EC化が進まない理由は上記の5つとなりますが、中でも「書類が紙ベース」と「買取は実車査定が必要」ということが大きな課題となっています。

これらをクリアするためには、法改正と車両情報のデータベース化が必要であり、そちらが実現できればEC化が大きく進むと考えられます。EC化が進めば、現状で発生している中古車売買に関する高額な手数料(諸費用)が大きく削減されると見込まれます。そうなると、より気軽に中古車の売買ができるようになり、中古車業界の活性化にもつながることが予想されるため、早期の実現を期待します。

もし、中古車業界において、新規事業で「自社ECサイト」を構築するならfutureshop(フューチャーショップ)にすべきでしょう。なぜなら、注文を増やすための多くの仕組みが基本機能として、多数実装されているからです。

◆futureshop(フューチャーショップ)で注文を増やす機能の例

・カートインから決済までたった3ステップ!
・会員ログイン状態保持機能が延長可能!
・自由度の高い画面レイアウト!
・注文履歴から、思わず再注文したくなる画面デザイン

中古車業界でのカートシステムの導入を考えているなら、間違いなく筆者はfuturshopをおススメします。私だけでなく、EC関係者からも最も評判の良いカートシステムであり、売上を増やすための細かい機能が数多く実装されており、見た目が重視されるアパレル業界で、多く利用されているECプラットフォームでもあります。家具からインテリアはもちろん、小売業のネットショップ全般にfutureshopは最適です。

futurshop(フューチャーショップ)は、以下の公式ホームページから資料をダウンロードことができるので、ECサイトの構築を検討する方は、まずは資料を取り寄せてみましょう。

また、ECサイトに基幹システムや独自のカスタマイズが必要な場合や、あるいはBtoBのカスタマイズECサイトを構築したい場合は、フルカスタマイズ可能な中大規模用のSaaSのECプラットフォームの「EBISUMART(エビスマート)」がおススメです。下記のリンクより資料請求をしてみてください。

SaaS型カスタマイズ型EC構築ツールの【EBISUMART(エビスマート)】