オムニチャネル導入効果

オムニチャネルの導入を検討する上で、どのような効果が見込めるかを事前に検討しておかないと、社内でなかなかコンセンサス(合意)が得られません。

オムニチャネル導入の効果を端的に言うとシステム統合により、ユーザーは店舗やECを意識することなく、購入、返品、ポイント利用ができるため、ユーザーの利便性を極限まで高めることで、リピート購入を増やし、売上が高まります。

ECサイトと店舗のシステム統合することで、このようなことが実現できるのです。ユニクロなどの大手企業は、オムニチャネル導入により、ユーザー一人当たりの売上を高めることに成功しております。

本日は、forUSERS株式会社でコンサルティングを行っている筆者が、オムニチャネルの効果について解説します。

2極化が進むアパレル業界!勝ち組は全てオムニチャネル実装済み

まず、オムニチャネルの効果を解説する前に、アパレル業界を例にとって解説します。下記の売上ランキングをご覧ください。上位10社を見ると、全てオムニチャネル導入に成功している企業であり、EC商品の店舗受け取りや、店頭試着、あるいは自社ECの会員とSNSの連携など、様々な形でオムニチャネル施策を推進しております。特に1位のユニクロは、早くからオムニチャネル施策に取り組み成果を上げてきた企業です。

◆アパレルEC売上高ランキング(2022年版)

2022版ファッションEC売上高ランキング

データ引用元:【「ファッションEC売上高ランキングTOP120」発表】大手も業績はまだら模様 本質的なOMOが成長継続の鍵(日本ネット経済新聞)

上記のランキングは、引用元の日本ネット経済新聞で無料会員登録をすれば上位50社をご覧いただけますので、興味のある方はぜひご覧ください。(全社120社のデータは有料)

アパレル業界というのは、EC化が進んでいる分野※の一つであり、ECサイトにおいては最も最新のテクノロジーやソリューションが使われる業界でもあります。その業界において上位10社全てがオムニチャネルを実践しているということを考えると、リテール業界においては今後オムニチャネルの導入は必須であるとも言えます。

※2022年のアパレル業界のEC化率

日本のEC化率:9.13%
アパレル業界のEC化率:21.56%

経済産業省のデータより引用:令和4年度 デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」

オムニチャネル導入による5つの効果

では、オムニチャネル導入を成功させるとどのような効果があるのか?具体的に解説してまいります。

効果①リピート購入が増える

オムニチャネル導入により、ユーザーには以下のメリットがあります。

・EC、店舗、コールセンター等どこでも購入できる
・ECで購入した商品を店舗で返品できる
・EC、店舗のポイントの統合。どこでもポイントが付与、使える。
・アプリのクーポンを店舗で使うことができる

つまり、ユーザーはチャネルを意識せずに、あらゆる顧客接点で買い物ができ、ポイントやクーポンも利用できます。そのためユーザーの利便性は格段に向上します。そのためリピート購入が促進され、ユーザーの囲い込みが実施できるため、結果としてリピート購入が格段に増えて、社全体の売上が高まります。

オムニチャネル導入による最たる効果とは、リピート購入増加による売上の増加と言えるのです。

効果②一人当たりの購入総額が増える

下記の記事によると、店舗受取を利用した19%のユーザーは、店舗でも買い物を行い、店舗で返品したユーザーの15%は追加購入を行います。

参考記事:【オムニチャネル徹底調査】消費者の約2割が商品受取時に、15%が返品時に追加購入。店頭受け取りなどが高い満足度に直結

また、下記のユニクロのチャネル別の年間購入金額・回数の表をご覧ください。

◆国内ユニクロのチャネル別年間購入金額・回数

ユニクロの決算資料

データ引用先:株式会社ファーストリテイリング 2019年8月期 期末決算説明会資料:ECを本業に。

このデータを見ると、ECと店舗の両方を使うユーザーが最も購入金額と購入回数が高いことがわかります。オムニチャネルを実現したからこそ、このような取り組みを行うことができるのです。

店舗受取を利用すれば送料無料にすることができ、ユーザーは積極的に店舗受取を利用する気になり、企業側も店舗に送客するマーケティングともなるため、店舗の売上も高めることができるのです。

このようにオムニチャネルはユーザーのLTV(顧客生涯価値)を高める施策ともいえるのえす。

効果③業務効率の向上

オムニチャネルを導入していない企業では、システムが統合されていないために、従業員は多数のシステムの操作方法を覚えることを強いられます。またレガシーシステムでは、若い従業員には非常に使いづらいシステムとなります。

オムニチャネルでシステム統合すれば、オペレーションの負荷は下がります。さらにタブレット対応するソフトウェアであれば、若い世代にはなじみがあるのでシステムのトレーニング時間が短くて済み、タブレットであれば場所を選ばず、接客や業務を行うことができるので、全社で考えると業務効率を高めることができます。

効果④在庫削減

オムニチャネルを実施すれば、今までECと店舗でバラバラだった在庫管理を一つにすることができます。そのため、ECで余った在庫を店舗で販売したり、その逆も行うことができます。下記はABCマートの事例です。

ABCマートのEC含めたデジタル売上高は9%増の約224億円(推定)【2022年2月期】

ABCマートでは、店舗で欠品している商品を直送発送を行うなどして、社全体としての在庫の有効活用を進めております。オムニチャネルが導入されていなければ在庫が各店舗やEC毎に管理する必要がありましたが、一括管理をすすめることで、在庫の有効活用を進めることができるのです。

効果⑤細分化されたカスタマージャーニーに対応が可能

オムニチャネルの大きなメリットは、現在の複雑なカスタマージャーニーに対応できることです。下記をご覧ください。

◆マスマーケティング時代 VS 現在 のカスタマージャーニー

カスタマージャーニー

スマホの登場により、昔のようにテレビCMだけを行えば、ユーザーにリーチできる時代ではありません。そのため企業は、ユーザーにメッセージを届けるために、スマホ上のSNSやYouTube、メルマガなどあらゆるチャンネルに対応しなくては、多くのターゲットユーザーにリーチできません。

オムニチャネルで、顧客データを一元化していれば、それぞれのチャネルに最適化したメッセージをデジタルマーケティングによって送ることができ、しかもデジタルマーケティングは、効果検証をしっかりおこなうことができます。

オムニチャネルのデメリットは導入障壁が高いこと

このように導入より高い効果が見込まれるオムニチャネルも、多くの会社が導入に二の足を踏んでおります。なぜなら、オムニチャネル導入のためには、莫大なシステム投資が必要となるだけではなく、オムニチャネルは全社を巻き込むプロジェクトであり、そのようなプロジェクトを進めるには、社長自らが強い意志を持って、オムニチャネルを推進していかないと、社内ではなかなか受け入れられるものではありません。

筆者も、過去に所属した企業で、レガシーシステムの刷新のプロジェクトに携わりましたが、現場が現在のシステムを使い慣れているため、猛烈な反対にあい、システム導入が一向に進みませんでした。このような話は珍しいことではなく日本全国の企業でよく聞く話です。

このようにオムニチャネルは導入障壁が非常に高いことがデメリットと言えるのです。

オムニチャネル導入のポイントはフェーズ分け

そのため、オムニチャネル導入のポイントは、フェーズ分けすることです。例えば、

◆オムニチャネル導入のフェーズ分けの例

フェーズ①ECと店舗のポイント連携
フェーズ②ECと店舗の在庫情報の連携
フェーズ③ECと店舗の顧客情報の連携

このように、限定的なオムニチャネルをフェーズ分けで実施していくことです。一気にすべてのシステムを刷新しようとすると、非常に工数がかかり、リリースが延期に延期を重ねて、いつまでたってもオムニチャネルが導入されないばかりか、その間に新システムが陳腐化する可能性もあるからです。

つまり、オムニチャネルはフェーズ分けを実施し、小さく早くシステムリリースしていくべきなのです。

まとめ

オムニチャネル導入には、企業にとってもユーザーにとっても多くのメリットがあります。

そして、多くのユーザーが買い物の場として、Amazonや楽天市場が利用されているため、それら大手のECモールに対抗するために利便性を高めて、顧客の囲い込みを実施しなくてはなりません。オムニチャネル導入に関しては、経営者を説得し、全社一丸で推進する覚悟が必要となります。

当記事が、オムニチャネル導入の参考になれば幸いです。