ヨーロッパを代表する経済大国であるドイツのEC市場の市場規模は、2022年は1,017億ユーロ(約14兆円※)で、前年比19%増と成長傾向にあります。ネットインフラも整っており、国民のインターネット普及率も93%以上(2022年)と十分EC大国としての土台ができていますが、一方でEC化率は10%程度とそれほど高いわけではありません。
ドイツがヨーロッパ圏全体に人気の高いECサイトも擁しながら、先進諸国と比較してEC利用が進んでいないのは、実は根強い現金主義の文化を背景としたキャッシュレス比率の低さと、合理主義的で保守的な消費活動といった、ドイツ人消費者の特性が要因として考えられます。
本日は、forUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、ドイツのEC市場について詳しく解説いたします。
※1ユーロ=138.09円
ドイツEC市場の概況
まずはドイツのEC市場の概況についてですが、2022年の経済産業省によるレポートによると、世界においてドイツEC市場が占める割合は2.1%で、世界6番目のシェアとなっています。
◆2022年の国別EC市場シェア
2022年のドイツのEC市場規模は1,017億ユーロ(約14兆円※)でした。ドイツもコロナ禍の影響によりEC利用が促進され、世界的に見ればシェアは小さいものの、ドイツのEC市場は年々成長を続けております。
※1ユーロ=138.09円(2022年平均レート)
2023年のEC化率予測値は9.7%とやや低い
下記の表は、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)による、2023年のEC市場規模上位9カ国のEC市場規模とEC化率の予測値です。ドイツのEC化率は9.7%と予測され、世界のEC化率予測値である20.2%を約10%下回りました。
◆EC市場規模上位9カ国のEC化率(2023年予測値)
国・地域名 | 2023年のEC化率予測値(%) |
中国 | 46.9 |
アメリカ | 15.8 |
イギリス | 30.6 |
日本 | 13.7 |
韓国 | 29.9 |
ドイツ | 9.7 |
フランス | 10.5 |
インド | 8.5 |
インドネシア | 31.9 |
世界 | 20.2 |
ドイツではインターネットが十分に普及しており、2022年時点でのインターネット普及率は93.1%とされておりますが、この数値に対してEC利用は思ったほど進んでいないのが現状です。
このように、これまでドイツでEC利用が進んでこなかった理由について解説いたします。
EC化率が伸びない要因は根強く残る現金主義
高いインターネットの普及率に対して、それほどEC化率が高くない要因のひとつとして、ドイツ人の消費における根強い現金主義といった点が考えられます。下記は、ドイツのECサイトにおける主な決済手段のシェア率です。
◆オンラインショッピングにおける決済手段のシェア率(2020年)
決済手段 | シェア率 |
PayPal | 57% |
請求書払い | 22% |
クレジットカード | 11% |
その他 | 10% |
上記の表を見ると、PayPalや請求書払いのシェアが大きく、一方でクレジットカードのシェアは先進諸国に比べて非常に小さいことから、現金主義の文化が色濃いことがわかります。これはECに限らず、ドイツでは実店舗の買い物においても現金支払いがメインとなっています。
また、下記のキャッシュレス推進協議会の資料をご覧ください。日本も未だ現金利用が多く、諸外国に比べキャッシュレス化が進んでいませんが、ドイツのキャッシュレス比率は日本よりもさらに低いことがわかります。
◆世界主要国におけるキャッシュレス決済比率(2020 年)
このように、ドイツではキャッシュレス化が進んでいないことが、EC利用が促進されない大きな要因であり課題となっています。
それでは、さらにドイツのECユーザーの特性を掘り下げて解説いたします。
合理性を求めるドイツ人ユーザー
ドイツECにおける決済手段のメインのひとつが請求書払いであることからわかるように、ドイツのECユーザーは商品を確認してから代金を支払うことを好む傾向があります。
また、実はドイツはヨーロッパで最も返品率が高く、下記グラフが示す通り、年間で50%以上のユーザーが商品を返品しています。
◆ヨーロッパ諸国におけるオンライン購入商品の返品率(2018年)
出典:The Return of the Package | E-commerce in the European Union(Statista)
特にアパレル商品は、いくつかのサイズやカラーを注文して、気に入ったもの以外は返品するということが一般化しています。このことが顧客満足度を上げている効果もあるようですが、一方でEC事業者の収益向上の妨げとなっていることも事実です。
もちろん、そもそもドイツの多くのECサイトの返品ポリシーが比較的寛大なことも原因ではありますが、このように商品を受け取って、満足したものにだけ代金を支払うといった、合理主義的な特性がドイツ人ユーザーにはあるようです。
筆者が思うに、このようなドイツ人の「後払いを好み、返品率が高い」という消費に保守的なスタンスも、EC化率の伸長率の低さの一端となっているのではないかと考えます。
ECで人気のカテゴリは「ファッション」「電化製品」
下記は、ECで購入される人気商品の上位10品目の売上額を示すグラフです。
◆ドイツにおけるカテゴリ別EC売上額(2021年度)
グラフ引用:各国における越境ECの状況(日本政策金融公庫)
ドイツでは、ファッション関連の商品がECサイトで最も売れています。これについては、ファッション専門のECサイト「Zalando」や、ファッション通販よりスタートした「OTTO」といったECサイトがドイツ国内で大きなシェアを占めていることからも推察できます。
特にZalandoは、ほぼ全ての商品の返品・交換が無料なので、返品率の高いドイツ人ユーザーにとっても気軽にショッピングが楽しめます。この点も、ドイツEC市場でファッション分野の売上を高めている要因となっているでしょう。
ちなみに、ヨーロッパ全体で人気のZalandoの2014年の売上高は2,745億円で、日本のZOZOTOWNの同年売上高のおよそ7倍でした。
ファッションに次いで人気のカテゴリが「電化製品・通信機器」で、3位以下のカテゴリに大きな差をつける売上高となっています。とは言え、ドイツ人は電化製品の購入にかなり慎重な傾向があるようです。
下記記事によると、ヨーロッパ、特にドイツの消費者は家電製品の購入を検討する際に、事前にインターネットで情報収集をしてから店舗に足を運びます。そして、そこでも購入せずに、もう一度持ち帰って検討し直す消費者が多いようで、購入までに長い期間をかける傾向が見られます。
この記事にあるように、モノを長く使う使う文化が根強いことも、ドイツのEC市場の成長速度に影響しているのではないかと筆者は考えます。
ドイツで人気のECサイト5選
① Amazon.de
Amazonは世界22ヵ国に展開(※)する世界最大規模のショッピングモールサイトで、ドイツにおいても売上高1位を占める人気サイトです。Amazon.deはドイツ国内のみならず、ヨーロッパ圏で利用者が多いのが特徴です。また、日本からの利用もあり、商品によっては日本のAmazonで購入するより安く買えることもあるようです。
※2022年現在
② OTTO
OTTO(オットー)は、ドイツ本国に本社を持ち、世界20ヵ国以上で通信販売事業を展開する企業が運営する総合ECサイトです。アパレル、スポーツ用品、家具、家電など幅広い商品を扱っており、2018年の売上高は日本円で約1.6兆円にのぼるなど、ドイツ国内のEC市場の中心的存在と言えます。
③ Zalando
Zalando(ザランド)は、ドイツ・ベルリンに拠点を置く、欧州全体で人気の高いファション専門のECサイトです。ストリートブランドからハイブランドまで、1500以上の幅広いブランドを取り扱っております。購入後100日までは無料で返品できるサービスも、ドイツ人消費者には人気のポイントです。
④ MediaMarkt
MediaMarkt(メディア・マルクト)は、ドイツ国内最大の家電量販チェーン店ですが、ドイツのみならず欧州各国に展開しており、欧州最大の家電量販チェーンでもあります。主要な取扱い商品はデジタル家電、音響機器、白物家電、健康器具、パソコンなど一通りの家電はすべてここで揃えることができます。
⑤ ebay
アメリカ発のオンラインマーケットプレイスであるebayは、世界約30ヵ国に展開しており、オンラインオークション形式で企業・個人を問わず多くのユーザーが取引しております。Amazonなどでは手に入りにくいビンテージ品など、希少な商品を取り扱っていることが特徴です。
EC市場の成長の鍵はドイツ人消費者の特性をつかんで顧客満足度をあげること
本記事で解説したように、キャッシュレス化が進んでいない背景からドイツのEC利用はなかなか促進されない現状がありましたが、コロナ禍をきっかけに、その状況にも変化がありました。
今まで現金をメインに扱ってきた店舗も、キャッシュレス決済にシフトする店舗が増え、政府もクレジットカードの利用を促す広告を打ち出すなど、ドイツでもキャッシュレス推進の機運が高まっているようです。
また、返品率の高いドイツ人ユーザーに対して、前出のZalandoなどは、あえて100日間の無料返品サービスを展開してユーザーに積極的に返品を推奨することで、顧客満足度を高め、リピート購入を促進して売上を伸ばしております。
このように、EC各社が自国の消費者の特性を上手くとらえて顧客の満足度を上げていくことが、ドイツEC市場の今後の成長の鍵となるのではないかと考えます。
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