ECサイトのリニューアル

ECサイトのリニューアルを実施して、問題点を解決して売上を高めたいとEC担当者なら誰でも考えるはずです。しかし、ECサイトのリニューアルは失敗するケースも多く、売上を伸ばすどころか炎上してしまうプロジェクトも非常に多いのです。

その理由の原因はECサイトのリニューアルを開発ベンダーまかせになっているため、リニューアルしたECサイトが要件を満たしていなかったり、あるいは複雑な要求をベンダーに通すのも、リニューアルの失敗の原因となります。文化シャッター社のシステムリニューアル失敗も世間を騒がせました。

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そうならないためにも、既存のECサイトの問題点をEC担当者がしっかり把握して、開発ベンダーと問題点を共有し、無理で複雑なシステム要求にならないようにしなくてはなりません。

本日はforUSERS株式会社でコンサルティングをしている筆者がECサイトのリニューアルで気を付けるべき7つのポイントについて詳しく解説いたします。

ECサイトのリニューアル失敗事例

ECサイトのリニューアルは有名大手企業においても、失敗することはしばしばあります。2015年のことですが、ニトリではリニューアル時に、ECサイトでエラーが発生し、普及するまで6日間を要したことがあります。

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幸い、ニトリは自社ECサイトだけでなく、楽天市場でも通販サイトを展開していたために、復旧までの売上減少のダメージを最小限におさえることができました。このようにリニューアル失敗が世間に出てくるのは一部であり、EC業界にいる筆者の耳には「○○会社がECサイトリニューアルで炎上中!」などの話は絶えず入ってきます。

その原因の多くは、受注側がクライアントの要求をおさえることができずに、受注側が要望を受け入れて機能を複雑化しすぎていたり、リリースをフェーズに分けずに一気におこなっていることに問題があるように思えます。

では、ECサイトで具体的にリニューアルを失敗しないためにはどのようなポイントがあるでしょうか?

それには以下の7つのポイントを抑えることです。

ECサイトでリニューアルで成功するための7つのポイント

それでは筆者の経験を交えて、リニューアルにおいての重要な7つのポイントを解説します。

ポイント①既存のECサイトの問題点を把握する

まず、既存のECサイトの問題点を把握することが先決です。例えば以下のようなものです。

◆既存ECサイトの問題点の例

・出荷作業でヒューマンエラーが多い
・システム連携をしておらず、業務効率が悪い
・SEOが弱い
・ページ読み込みに時間がかかる
・ブログ機能が弱い

この中で、SEOが弱いという問題のためにリニューアルは必要ないかもしれません。

なぜならSEOはECサイトのシステムをリニューアルをしても、改善しない場合もあるどころか、SEOが弱くなることもあります。それに対して、システム連携であったり、バックエンド業務の改善を実施する場合は、高価なパッケージシステムを導入して、ECサイトにリニューアルを実施しないと、改善は難しいです。

このように、問題点を洗い出して、それぞれの問題点がリニューアルによって解決できるかを検討してみることです。多くの場合はリニューアルせずとも改善できたり、あるいはリニューアルと問題点が関係ないことがあります。

◆既存ECサイトの問題点に対して、リニューアルが有効か?を検討した例

・出荷作業でヒューマンエラーが多い<==リニューアルで効果がある
・システム連携をしておらず、業務効率が悪い<==リニューアルが必要
・SEOが弱い<==リニューアルせずとも改善可能
・ページ読み込みに時間がかかる<==リニューアルで効果がある
・ブログ機能が弱い<==リニューアルせずとも改善可能

よくあるリニューアルの間違いが「そろそろ前のリニューアルから3年たつから、そろそろリニューアルしようか?」など上司や社長の感覚(気まぐれで)でECサイトのリニューアルを実施しないようにしましょう。

私の知り合いの会社は、2年ごとにECサイトのシステムリニューアルを特に意味もなく実施しており、常に現場のEC担当者がリニューアル作業に追われており、肝心の売上を高めるための施策に全く着手できておりません。このような会社は意外と多い印象です。

ポイント②複雑なシステム連携はフェーズに分けて実施

もし、ECサイトのリニューアルの目的がシステム連携である場合は、フェーズに分けてリニューアルすべきです。一気にリニューアルすると、テストが十分でないかぎり予期しないエラーが発生することもあります。また問題点を把握しづらい点もあります。下記のようにフェーズをわけるべきです。

◆フェーズ分けの例

フェーズ1:ECサイトのフロント部分のみリニューアル
フェーズ2:システム連携したバックエンド部分のオープン
フェーズ3:実店舗システムとのデータ連携のスタート

このように綺麗にフェーズ分けできるのは稀ですが、それでもフェーズ分けを実施して部分的なリニューアルをおこなうように心がけましょう。一気にリニューアルするのは事故の元となりやすいからです。

ポイント③業者ではなく、パートナーを探すこと

ECサイトに関わりませんが、システムのリニューアルは非常に大きな予算と工数を要するプロジェクトとなります。そのためECサイトのリニューアルを実行するベンダーにおいては、業者ではなくパートナーを探すべきでしょう。

同じ志や考え方を持つパートナーをベンダーにすれば、クライアントの要求に対しても、同じ土俵で意見することとなり、クライアントの目標を達成のためにプロジェクトを進めることができます。

しかし、業者的なマインドのベンダーだと、クライアントの要求を全て受け入れ、結果として無理なシステム開発となってしまい、プロジェクトが炎上しやすくなります。

こうならないためにも、リニューアルを依頼するベンダーは、志をともにするパートナーである必要があります。特にPM(プロジェクトマネージャー)においては、志や目標を共有できる人材を探す必要があります。

ポイント④無愛想なエンジニアも尊重しよう

EC業界に関わらず、システム開発を実施するITエンジニアは無愛想な方が多いのが現状です。

そのため、ベンダー企業との打ち合わせで、受注前には人当たりの良いベンダーの営業が出てくるのですが、受注後には無愛想なエンジニアが打ち合わせに出てきて、

経営陣が「なんだ!あいつは!俺を舐めているのか!」

とITエンジニアをチェンジしてしまうことは度々あります。しかし、エンジニアに求められるのは愛想の良さではなく、技術力です。

◆ITエンジニアで重要なこと

・技術力
・経験
・細心の注意力

◆経営陣がベンダーのITエンジニアに求めがちなこと

・愛想の良さ
・受け答え
・ビジネスマナー

私の知り合いの会社では、経験値が高いITエンジニアが、経営陣との打ち合わせで失礼があったとして、チェンジになり、その後プロジェクトが炎上したという話を聞いたことがあり、このような問題は他人事ではありません。

もし、あなたの会社のECシステムのリニューアルの際、愛想は悪くともキーパーソンであるエンジニアがいた場合は、経営陣と打ち合わせの前に「○○部長、今日打ち合わせに来るエンジニアは、愛想が悪いですが、彼がキーパーソンなんで、仕事はしっかりするエンジニアなので、ご了承ください。もし粗相があれば後で私から注意します」と事前にインプットしておくべきです。

通常、経営陣と話す際は、ベンダー側にも「今日は打ち合わせに先方の役員が出てくるから、言葉遣いに気を付けてね」と言うべきかもしれませんが、ITエンジニアにはそのような器用なことを求めても難しいケースが多々あります。

いずれにせよ、しっかり仕事ができるITエンジニアに対しては「言葉遣い」「愛想」などが欠けていても、ITエンジニアの技術力や経験を重視すべきでしょう。

ポイント⑤リニューアルするとユーザーがログアウトしてしまう

ECシステムをリニューアルすると、今までユーザーがログイン情報をブラウザーに覚えさせていたものが、解消されてしまい、ユーザーは再度ログインする必要が出てきます。今までログインをしていなかったユーザーがログイン情報を忘れてしまい、ログインできないためにリニューアル初期は売上が下がることがあるのです。

そのため、リニューアル後は「ログインキャンペーン」を行うなどして、再度ログインを促しましょう。またパスワードを忘れるユーザーも多くいるため、そのようなユーザーに対してスムーズにログイン情報の再取得ができるように、ログイン画面からのリンクをわかりすく導線設計をします。

ポイント⑥デザインをカッコよくしたら売上が下がることもある

これは筆者の経験ですが、英会話教材のECサイトのリニューアルを、コンサルタントを入れて行ったことがありますが、コンサルタントが提案したのは、ECサイトをクリックしたりスワイプすると激しくエフェクトするECサイトでした。

当時の筆者はECサイトの経験が浅く、コンサルタントから提案されるがままにECサイトをリニューアルしたのですが、ユーザーから見ると非常に使いにくく、全く商品が売れないECサイトをリリースをしてしまいました。

まるでルイヴィトンやグッチの公式サイトような「カッコいい」ECサイトを作ることと、売上は結び付かないのです。ルイヴィトンやグッチには、世界最高峰のファッションの世界観があるため「カッコいい」サイトである必要がありますが、有名でもないECサイトは、無駄にカッコ良いとユーザーにとって利用しにくいサイトとなる場合があるのです。

それは、サイトの文言でも同じことです。例えば

価格を「Price」
カテゴリーを「Category」
人気商品を「PicUp」

など、わざわざ英語で表記することも利用しにくいECサイトになる場合があります。まずは日本語表記を第一に考えるべきです。

もし、5年前のECサイトであれば、確かにデザインも陳腐化しており、デザイン面もリニューアルが必要ですが、その際は見た目と同じくらい「わかりやすさ」についても意識してみましょう。

ポイント⑦SEOを新しいECサイトに引き継げるか?

ECサイトのリニューアル時はSEOについて気を付ける必要があります。なぜならリニューアルがキッカケで、検索エンジンからの流入が全くなくなってしまうケースもあるのです。そのため以下のケースに気を付ける必要がります。

・ECサイトのドメインはリニューアル後も同じか?
・各商品ページのURLはリニューアル後も同じか?

また、システムの関係でECサイトのドメイン(URL)が変わる場合は、昔のECサイトのサーバー設定でリダイレクトを行い、新URLに誘導することでSEOの状況を引き継ぐことができます。

ECサイトのリニューアル前に、どの商品ページ、あるいはどのブログ記事のSEOによる流入が多いのか前もって把握しておけば、SEOの状態を上手く引き継ぐことができます。

ただし、リニューアル前のECシステムが無料プランによるものであったり、安価なシステムの場合は、URLの変更やリダイレクトもできないので、SEOはゼロから再スタートを切る必要があります。

まとめ

ECサイトのリニューアルは大変な仕事です。しかし、リニューアルを上司や経営者の感覚で行うのはリニューアル失敗だけならまだしも、EC担当者がやる気をなくして会社を辞めてしまうこともあります。今はEC業界だけでなく、あらゆる業界で人手不足であり、担当者がやめてしまうのは大きなリスクです。

もし、リニューアルが必要な場合は、リニューアルの目的をはっきりした上でその改善に努めましょう。そして、この記事を読んでいるのがリニューアルを担当する方でしたら、リニューアルを成し遂げるのも大きなキャリアとなります。リニューアルは大変ですが、生涯にわたって役に立つ経験です。

もし、リニューアルを実施する場合は、前向きに取り組んでみてください。