BtoB事業者は、ECサイトの構築の際に与信管理をどのように行うかを考えなくてはなりません。与信管理は、以下のカテゴリーによって同じBtoBであっても与信管理方法が変わります。
・クローズドBtoB
スモールBtoBは1商品あたりの単価が安く、BtoCに近いECサイトのことで、一般に公開され誰でも閲覧できるのが特徴です。わかりやすく言えば「モノタロウ」のようなサイトのことです。一方、クローズドBtoBはログインするためにIDとパスワードが必要で、クローズドBtoBで買い物するには、会員登録後、与信の通った会員しか買い物をすることができません。
そのため、スモールBtoBかクローズドBtoBかで与信管理方法が変わってくるのです。スモールBtoBの場合は、企業間後払い決済を使い、クローズドBtoBの場合は、与信管理機能を実装する必要があります。
本日はforUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、BtoB-ECサイト向けの与信管理機能について詳しく解説いたします。
スモールBtoBとクローズドBtoBで与信管理の仕方が変わる!
まず、取引先の規模感によって与信管理方法が異なります。下記をご覧ください。
◆BtoBの種類ごとの与信管理方法
BtoBの種類 | 与信管理方法 |
スモールBtoB(BtoCに近いECサイト) | ECサイトの会員登録時 |
クローズドBtoB(会員に限定した大型取引のECサイト) | ECサイトで商品を購入するタイミング |
このように、取引先の規模感で与信管理方法は異なるのです。なぜなら、もし取引先が少額決済の多い企業であれば、注文毎に企業の与信管理を行うのは負荷が大きくなりますし、取引先からみても「面倒なECサイトだ!」という印象を持たれてしまうからです。
それでは、各BtoBの与信管理方法について、詳しく解説してまいります。
スモールBtoB/クローズドBtoB それぞれの与信管理の違い
まずは、スモールBtoBの与信管理機能から解説します。
① スモールBtoBの与信管理は「企業間後払い決済」が基本
スモールBtoBは1商品の価格が数千円~のケースが多く、またBtoCのように一度しか購入しない新規顧客も多くなります。そのため、都度与信管理をするのは企業にとっては非常に大変です。そのためスモールBtoBのECサイトで多数導入されているのが「企業間後払い決済サービス」です。
企業間後払い決済サービスとは、例えば下記のリンク先のような「NP掛け払い」のようなサービスのことです。
企業間後払い決済サービスを導入しているECサイトでは商品購入の際、注文ボタンを押すと、自動的に企業間後払い決済サービスのシステムがリアルタイムで与信を実行します。
もし、与信の通らない企業であった場合は、ユーザーの決済画面がエラーとなり、クレジットカード決済など他の決済方法が提示されます。
つまり、後払い決済会社が与信を代行してくれるのです。大手決済会社のNP掛け払いは、与信を行うための膨大な取引情報や与信情報を保有しており、そのデータを分析した上で、数秒で与信を自動的に実行することができるのです。
しかし、企業間後払い決済サービスが使えるのは、あくまで少額サービスの場合だけです。1商品が数十万円~もするような高額取引の場合は、スモールBtoBサイトではなく、クローズドBtoBサイトで取引を行います。
② クローズドBtoBサイトの与信管理は「会員登録時」が基本
ECサイトにおいて、1商品が数十万円~数百万円もするような高額取引においては、購入時に与信管理を行うのではなく、会員登録時に与信管理を行います。そのため、以下のような業務フローとなります。
◆クローズドBtoBの与信管理の業務フローの例
② 入力後、企業データが与信部門にメールで伝達
③ 与信部門が与信を行い、その結果をメールで送付
④ 新規顧客が与信結果を受け取り、ECサイトを利用する
ユーザーへの与信枠の提示についてはケースバイケースです。企業によっては「与信枠は○○万円です」とユーザーに伝えるケースもあれば、与信枠をユーザーに伏せておくケースもあり、これは企業ごとに変わってきます。
クローズドBtoBのECサイトは基幹システムと連携する必要あり
クローズドBtoBにおいては、与信管理を実施するために自社の基幹システムと連携する必要があります。なぜならBtoBにおいて、多くの企業は基幹システムで与信を管理しているケースがほとんどだからです。ECサイト側からは会員情報を送り、基幹システム側からは与信結果をECサイトに返す仕様となります。
◆基幹システムとの連携イメージ
基幹システムはスクラッチによる構築で、IBMや日立ソリューションズなどの大手SIer(システムインテグレーター)が開発しているケースがほとんどです。そのようなシステムと連携するのは結構大がかりな開発となるため、システム連携費用は基幹システムとの連携だと1,000万円~が相場となり、安くはありません。
ECと基幹システムの連携のコツは、コストのかかる基幹システム側の開発をなるべく抑えて、ECサイト側の項目を基幹システムに合わせるべきでしょう。
企業の与信管理とはどのようなものなのか?3つの方法を紹介
大企業であれば、専門の部門があり独自の与信管理を行うことができますが、中小企業であれば、だいたい以下の3点による与信管理が行われます。
◆与信管理の3つの方法
方法② 登記簿謄本の確認
方法③ 営業社員による情報収集
①は、帝国データバンクのような調査会社に調査を依頼する方法です。1社あたり3万円が相場で安くはありませんが、取引先の評点を見ることができます。この評点が50点以上であれば、ほぼ問題のない取引先と言えますが、45点以下だと要注意です。
②の登記簿謄本では、役員の名前を確認します。会社の雲行きがおかしくなると、役員に怪しい人物が登録されていることがよくあるからです。また、不動産を確認して抵当権や差し押さえなどが入っていないかを確認することができます。
③では、自社の営業社員に、相手先企業に訪問した際に
「相手は時間を守るのか?」
「共用スペースは掃除されているか?」
などを見て、異変に気が付くようにアドバイスするべきです。特に段ボールが積まれている会社は要注意です。
帝国データバンクのウェブサイトでは、与信管理運用のサポートとして要注意企業のチェックリストがまとめられていますので、下記リンク先もぜひ参考にしてみてください。
与信管理機能をECサイトに持つべきか?基幹システムに持つべきか?
システム構成についてですが、与信管理自体は難しいシステムではないのでECサイト側に実装することは可能ですが、与信情報ともなると、ECサイトだけに使われるわけではないので、企業のシステム全体からみると基幹システムにある方が最適なシステム配置となります。
また、ECサイトは利便性を追求して売上を高めるために変更が多くなってしまいますので、そのようなシステムに変更があまり発生しない与信管理システムを実装するよりは、基幹システム側に与信管理を配置して、ECシステムは基幹システムと連携して、その結果を受け取ることのできるシステム構成にすべきでしょう。
まとめ
与信管理機能を実装する際は、以下の3つのポイントを念頭に入れましょう
ポイント② スモールBtoBなら企業間後払い決済の導入、クローズドBtoBなら与信管理機能を実装
ポイント③ 与信管理機能を実装する場合は基幹システム側に実装する
肝心なのは、業務を効率化することです。自社の業務フローに合わせるよりも、利用するシステムに合わせるようにすることは、DXを考える上でも重要となるからです。