セブン‐イレブン EC「7NOW」成長の可能性を探る

セブン‐イレブンが即時配送サービス「7NOW(セブンナウ)」の強化に本格的に乗り出しています。

国内のコンビニエンスストア業界で数多くの革新を起こしてきた同社ですが、今回の取り組みは果たして顧客の支持を得ることができるでしょうか。

本稿では、7NOWの特徴を解説するとともに、先行して展開している北米の同名サービスの取り組みなどを参照しながら、7NOW事業の成長の可能性を検討します。

セブン‐イレブンの店舗事業の現状

7NOWは、セブン‐イレブンの店舗から商品を配送する「店舗出荷型EC」に位置付けられます。言い換えれば、7NOWの成功は、店舗が顧客にとって魅力的な存在であることが前提だと言えるでしょう。そこで、最近のセブン‐イレブンの店舗事業の営業状況を確認します。

下図は、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの全店平均日販の推移を表しています。

◆セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの全店平均日販の推移(直近3期)

出典:各社の決算資料を元に筆者作成。

この図から、セブン‐イレブンが平均日販では、競合2チェーンに大差をつけてリードしていることがわかります。ただし、日販の差は徐々に小さくなっています。

次の図は、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの既存店売上高の対前年同月比の推移を表しています。

◆セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの既存店売上高の推移(対前年同月比)

出典:各社の月次営業情報を元に筆者作成。

この図からは、ファミリーマートとローソンの既存店売上高が高い水準で推移している一方で、セブン‐イレブンは大きく差をつけられていることがわかります。

以上より、近年のセブン‐イレブンは、平均日販では依然としてファミリーマートやローソンを大きく上回っているものの、既存店売上高の伸びは鈍化していると言えます。

こうした中で、同社が7NOWに注力する動きは、既存店の売上の増加に寄与し、成長の新たな原動力となる可能性があります。

7NOWの歴史

ここで、7NOWの現在までの歴史を簡単に確認しておきます。下の表は、7NOWのこれまでの歩みをまとめたものです。

◆7NOWの歩み

出典:株式会社セブン‐イレブン・ジャパンのニュースリリースをもとに筆者作成。

7NOWという名称は2022年2月から使用されていますが、それ以前からセブン‐イレブンは一部地域で「セブン‐イレブン ネットコンビニ」という名称の店舗出荷型ECサービスを展開していました。

このネットコンビニは、2017年10月に北海道の札幌・小樽地区の15店舗で実証実験としてスタートしました。実は、この取り組みは、本部主導のトップダウンによるものではなく、現場、つまり、店舗からの「お客様の不便を解消したい」という強い想いから始まったのです。

情報出所:株式会社セブン&アイ・ホールディングス 2018年2月期 決算説明会資料

北海道は、高齢化が進み、買物不便者が増加していることなどから、「日本の課題先進地域」と称されることがありますが、北海道の店舗から顧客視点の新しいサービスが始まり、今では全国に展開しているという意味で、7NOWはコンビニエンスストアが地域の生活インフラとして進化していく一端を担うサービスだと評価できます

北海道でスタートしたネットコンビニのテストは、その後、東京都、広島県でも展開され、名称が7NOWに変更された2022年2月には、約1,200店舗でテストを実施していました。その後は、順調に店舗数を増やし、2025年2月には全国展開が完了しています。

また、北海道や埼玉県で行われた実験的な取り組みが好評を博し、「できたての商品を、手軽に、気軽に食べたい」という顧客ニーズの存在が確認できたことを受け、2025年4月より、全国で揚げ物5アイテムを7NOW専用商品として発売しています。

◆7NOW専用「揚げ物 盛盛シリーズ」

画像および情報出所:株式会社セブン‐イレブン・ジャパン ニュースリリース「ご注文後に店内で揚げてからお届け!『7NOW』専用商品を全国展開~4月25日(金)より取り扱い開始~」(公開日:2025年4月23日、閲覧日:2025年5月10日)

これまでの歴史を振り返ることで、「顧客ニーズから生まれたネットコンビニが、テストを通じて改善を重ね、7NOWとなって全国展開を果たし、顧客ニーズに応えることで進化しようとしている」ことを確認しました。

ちなみに、2025年現在、7NOWの最低注文金額は1,000円(税抜)、配送料は110円~550円(税込)となっています。筆者が同年5月に注文した際には、商品の価格が店頭価格より約20%高く設定されていました。

また、24時間の注文受付や不在時の置き配には対応しておらず、現時点のサービス水準は他のECサービスと比べて必ずしも高いとは言えません。サービス内容については、収益性とのバランスを考慮しながら、今後も随時見直されていくものと考えられます。

7NOWの3つの特徴

公式ウェブサイトによると、7NOWの特徴は次の3点です。

  • 最短20分で届く
  • 3,000アイテムの商品から選べる
  • アプリで楽しく買物ができる

情報出所:株式会社セブン‐イレブン・ジャパン ニュースリリース「“揚げたて”の商品を最短20分でお届け『7NOW』初の限定商品が登場!~8月6日(火)より北海道110店舗でスタート~」(公開日:2024年8月6日、閲覧日:2025年5月10日)

特徴1:最短20分で届く

7NOWは、即時配達が可能なECサービス「クイックコマース」です。

配送を担うのは、店舗従業員、または、PickGo(ピックゴー)、UberDirect(ウーバーダイレクト)、Wolt Drive(ウォルトドライブ)、DIAq(ダイヤク)、エニキャリといった外部委託先です。

配送担当に関する情報出所:7NOWの公式ウェブサイト (閲覧日:2025年5月25日)

店舗従業員が店舗業務を行いながら7NOWの配送を担う場合、作業負荷が大きいだけでなく、顧客から見て注文から到着までの時間(リードタイム)が長くなってしまいます。そこで、外部の専門事業者を活用することで、最短20分での配送を可能にしているというわけです。

特徴2:3,000アイテムの商品から選べる

7NOWの品揃えは、実店舗で販売されているラインナップとほぼ同じです。これにより、「いつも使っているセブン‐イレブンの店で売っている商品を届けてもらいたい」という顧客ニーズに、概ね応えることができます。

ちなみに、下の画像は筆者がアプリで7NOWの注文をした際の画面をキャプチャしたものです。このときは、常温・冷蔵・冷凍という異なる3つの温度帯の商品を、ストレスなく選ぶことができました。

◆7NOWの注文画面

出典:筆者がスマホアプリ「7NOW」で注文した際の画面をキャプチャ。

なお、配達時には、下の写真のように、温度帯ごとに袋を分けて届けてくれました。

◆7NOWで注文した商品が到着した時の様子

出典:筆者撮影。冷凍商品の袋には保冷剤も入っていました。

ちなみに、2025年5月時点、不在時の置き配には対応していません。これは、冷蔵や冷凍などの食品を扱っているためです。配送員が到着した際に不在だった場合、再配達はされず、注文はキャンセルとなります。在宅の場合は、インターホン等で配送員に玄関先に置いてほしい等と要望を伝えれば対応はしてくれるとのことです。

特徴3:アプリで楽しく買物ができる

7NOWはウェブブラウザからも利用できますが、専用アプリを使うことで、より快適で楽しい買物体験が得られます。

アプリには、お気に入り登録した商品の配送拠点となる店舗の在庫状況が確認できる機能や、顧客の購買履歴に基づくレコメンド機能があり、これらも便利なのですが、筆者が実際にアプリを使用して面白いと感じたのが、実店舗の売場を思わせる、商品画像の表示方法です。

下の画像は、アプリで「探す」を選び、カテゴリーから「スイーツ・ヨーグルト」を選んだ状態です(画像は加工したものです)。このカテゴリーには、「洋菓子(冷蔵)」、「洋菓子」、「和菓子(冷蔵)」、「和菓子」、「ヨーグルト」、「ゼリー」というサブカテゴリーがあり、スマートフォンの縦長の画面に、上から下に向かって配置されています。

 

◆7NOWアプリの商品選択画面

出典:筆者がスマホアプリ「7NOW」の画面をキャプチャしたものを加工して作成。

画面を縦にスクロールすると、カテゴリーに含まれるサブカテゴリーが次々に表示されます。特定のサブカテゴリーに属する商品を見たい場合は、横にスクロールすると、サブカテゴリーに含まれる商品が順に表示されます。上の画像は、「洋菓子(冷蔵)」の「行」を右にスクロールして、「洋菓子(冷蔵)」の商品が一つずつ画面に表示される様子を表しています。

下図は、7NOWのアプリにおける商品の表示のされ方をイメージしたものです。赤枠線は、スマートフォンの1画面に表示される範囲を示しており、上述の通り、画面を縦方向にスクロールするとカテゴリーが変わり、サブカテゴリー単位で横方向にスクロールすると、そのサブカテゴリー内の商品が表示されます。

◆7NOWアプリの商品表示イメージ(「スイーツ・ヨーグルト」カテゴリーの場合)

出典:筆者作成。

7NOWアプリでは、この図のように商品を配置することで、商品の大きな括りである「カテゴリー」があり、その中に「サブカテゴリー」があり、さらにその中に「商品」が含まれるという、階層的な商品分類構造を視覚的に把握できるようになっています。

こうした、店舗の売場での陳列に似た商品配置は、顧客に快適な買物体験を提供する要因となりうるでしょう。

食品EC業界における7NOWの位置づけ

ここでは、他の食品ECと比較することで、7NOWの特徴を確認します。注文から到着までのリードタイムと出荷拠点のタイプという2つの軸で、国内の主な食品ECを整理したものが、下の表です。

◆リードタイムと出荷拠点による食品ECの分類

出典:2025年5月現在の各社の事業内容を元に筆者作成。

店舗出荷型の食品ECは、リードタイムが当日から数日後までの「ネットスーパー」と、数十分から数時間以内に届く「クイックコマース」に大別できます。7NOWは、ローソンやまいばすけっとが手がけるデリバリーと同様に、クイックコマースに位置づけられます。

これらの出荷拠点は主に小型の店舗であり、少人数の従業員で運営されているため、店舗スタッフが配送まで担うと、店頭業務に支障をきたしかねません。そのため、クイックコマースを展開する各チェーンでは、配送業務を主に外部委託しています。

クイックコマースの強みは、何と言っても圧倒的な速達性にあります。それを可能にしているのが、コロナ禍以降に拡大したギグワーカーを活用する配送事業者の存在だと言えるでしょう。

なお、2025年5月現在、7NOWと他のクイックコマース型サービスには、たとえば注文可能時間の違い(ローソンは24時間対応、7NOWは非対応)など、いくつかの相違点があります。ただし、これらの違いは固定的なものではなく、今後、クイックコマース市場が成長するにつれて、各社がサービス水準を高めていくと考えられます。

見えてきた7NOWに対するニーズ

セブン&アイ・ホールディングスは2025年4月9日の決算説明会で、セブン‐イレブンの2025年度の重点施策として、次の3点を挙げました。

  • 高付加価値商品の強化
  • SIPの取り組み強化
  • 7NOWの強化

7NOWが重点施策のひとつとされていることから、セブン‐イレブンはこのサービスの成功が、事業全体に大きく貢献すると考えていると推察されます。

同社は7NOWを強化するにあたって、「SIP要素の展開と連動した7NOWの認知向上策による利用促進を目指す」としています。

◆セブン‐イレブンの2025年度重点施策の1つ「7NOWの強化」

出典:株式会社セブン&アイ・ホールディングス「2024年度 決算説明資料」(2025年4月9日)

SIPとは、「SEJ・IY・パートナーシップ」のことです(SEJはセブン‐イレブン・ジャパン、IYはイトーヨーカ堂)。2024年2月29日にリニューアルオープンした「セブン‐イレブン松戸常盤平駅前店」は、SIPストアと呼ばれ、イトーヨーカ堂の持つノウハウを導入するなど、グループの知見を活かしたテスト店舗と位置付けられています。

2024年に埼玉県内のセブン‐イレブン20店舗にSIP要素を導入したところ、上図に示すように、同年2月の7NOWの販売数ランキング上位10品目のうち9品目を出来立て商品が占め、全国とは異なる傾向を示しました。また、これらの店舗における7NOWの平均注文件数は全国平均の約2倍に達しました。このことから、7NOWにおける出来立て商品への顧客ニーズが非常に高いことがわかります。

この結果を受けて、先に述べた通り、セブン‐イレブンはSIP要素の展開と連動させて、7NOWの認知向上と利用促進を図ろうとしています。2025年4月には、7NOW専用商品として揚げ物5品目を発売しましたが、これも出来立て商品に対するニーズの高さに対応した取り組みといえるでしょう。

また、上図より、同社は2030年度の7NOWの売上目標を1,200億円に設定していることがわかります。そこで、次のブロックでは、この売上目標をベースに2030年度の7NOW事業について考えてみます。

2030年度の7NOW:1店舗あたりの売上・構成比・件数をシミュレーション

2030年度に7NOWが売上高1,200億円を達成することを考えてみます。ここでは、仮に、全国2万店舗に7NOWを展開するとします。なお、以下の計算はあくまで簡易的な推計である点にご留意ください。また、四捨五入の関係で、小数点以下の値が一致しない場合があります。

上述の条件で7NOWの1店舗当たり売上高と日販を求めると以下のようになります。

  • 7NOWの1店舗当たり売上高:1,200億円÷2万店舗=600万円
  • 7NOWの日販:600万円÷365日=1.64万円

セブン&アイ・ホールディングスの「2024年度 決算説明資料」によると、2030年度の平均日販の目標は75万円以上となっています。日販75万円の店舗における7NOWの売上構成比は以下の通りです。

  • 店舗日販に占める7NOW売上構成比:1.64万円÷75万円=2.2%

セブン‐イレブンは、2024年7月4日に行ったメディア向けの説明会で、7NOWの客単価は2,234円(店舗の客単価752円の約3倍)、買上点数は8.57点(店舗の買上点数3.22点の約2.7倍)と発表しています。この客単価2,234円を用いると、7NOWの1日当たりの注文件数は以下のようになります。

  • 7NOWの1日当たり注文件数:1.64万円÷2,234円=7.36件

7NOWの客単価と買上点数の情報出所:流通ニュース「セブンイレブン/「7NOW」で焼きたてピザ配送、8月200店舗に拡大」(公開日:2024年7月4日、閲覧日:2025年5月10日)

以上、2030年度の7NOW売上目標、店舗の平均日販、および、2024年時点の7NOWの客単価を用いて、2030年度の7NOWの1店舗当たりの業績を簡易的に推計しました。

7NOWの目標売上1,200億円は、1企業が展開するEC事業としては十分に大規模なものと言えるでしょう。これを日販75万円の実店舗に換算すると、438店舗の新規出店に相当します。

一方、1店舗あたりで見ると、1日の注文件数は約7.4件、売上は約1.6万円にとどまり、店舗日販の約2.2%とインパクトには欠ける数値です。

とはいえ、筆者は、適切なマーケティング戦略を講じることで、7NOWが顧客からの支持を得て、今後大きく成長する可能性があると考えています。以降では、その成長の可能性について考察していきます。

7NOWの成長ポテンシャルを2つの事例から探る──競合動向と北米事業からの示唆

7NOWの今後の成長の可能性を検討するために、2つの参考事例を見ていきます。

  • 好調なローソンのデリバリー
  • 先行する北米の7NOW

参考1:好調なローソンのデリバリー事業

ローソンはデリバリー事業に注力し、サービス水準の向上を図っています。2024年4月19日に開催されたメディア向け説明会では、以下のような説明がなされました。

  • コンビニエンスストア業態に対して、商品を配送してほしいというニーズは、今後さらに高まっていくと考えている。
  • 「タイパ(タイムパフォーマンス)重視」「買い場の減少」「高齢化」という3つの要因から、デリバリー市場は今後も成長すると見込んでいる。
  • デリバリーの1日当たり売上が10万円を超える店舗も存在する。
  • 売上全体に占めるデリバリーの構成比が2割に達する店舗が増加している。

いずれも注目すべき内容ですが、デリバリー日販が10万円を超える店舗が存在すること、そしてデリバリー売上が店舗日販の2割に達する店舗が増加しているという点には、驚かされます。これらの数字を見ると、コンビニエンスストアにおけるデリバリー事業には、大きなポテンシャルがあると感じられます。そう考えると、7NOWの2030年度における売上目標は、やや控えめに設定されているのかもしれません。

また、説明会では、デリバリー事業に対するニーズについて、以下のように説明されました。

  • デリバリーの利用者は夕方から夜間にかけて多く、深夜帯も一定のニーズを得られている。
  • デリバリーの注文数は週末に大きく伸長する傾向にある。
  • デリバリーでは特にファストフードの人気が高く、デリバリー限定商品の大容量サイズの「からあげクン」はリピート率も高い。

ローソンがデリバリー限定の揚げ物を販売しているのは、7NOWと同様ですね。一方、ローソンのデリバリーに対するニーズは深夜帯にもあり、24時間対応をしている同社はこれに対応できていますが、7NOWは24時間対応しておらず、深夜帯のニーズを取りこぼしている可能性があります。

  • デリバリーの注文件数は、エリアの人口に比例する傾向がある。
  • 郊外エリアにおいても、一定のデリバリー需要が見込める。
  • 各店舗から半径1~1.5km圏内であれば、注文から15分以内の配送が可能である。
  • エリア内の空白地帯を解消するため、店舗同士が互いにカバーし合えるような出店戦略を採り、都市部でのクイックコマースの加速を図っている。

ローソンは出店戦略とデリバリー事業を一体的に捉え、エリア全体で需要を取り込もうとしています。新規出店と7NOWの展開を同時に進め、商圏の拡大によって成長を目指すセブン‐イレブンと方向性は共通していますが、一方でローソンは、エリア内の空白地帯を埋める手段としてデリバリーを活用している点が特徴的です。

情報出所:流通ニュース「ローソン/デリバリー事業拡大、売上10万円越えの店舗も」(公開日:2024年4月19日、閲覧日:2025年5月16日)、株式会社セブン&アイ・ホールディングス「『IR Day 2024 Autumn』国内CVS事業戦略」(2024年10月24日)

参考2:先行する北米の7NOW

北米市場のセブン‐イレブンは、2018年にアメリカで、2021年にカナダで、デリバリーサービス「7NOW」を開始しました。日本では、当初「ネットコンビニ」と称していたデリバリーサービスを後に「7NOW」へと改称しましたが、これは北米におけるデリバリー事業の名称に倣ったものです。

北米の7NOWには、日本の7NOWにはない独自の取り組みがあります。その一つが、月額9.95ドル(年間プランの場合は月額7.92ドル)で、配送料無料や毎月7回ドリンクが無料になるといった特典を利用できるサブスクリプション型デリバリーサービス「7NOW Gold Pass」です。

サブスクリプション型モデルを導入することで、継続的な収益を見込めるようになります。これにより需要予測が容易になり、在庫管理や業務運営の効率化が図れます。また、顧客との継続的な関係が築かれることで、パーソナライズされたプロモーションやレコメンドの提供も可能になります。

一方、顧客にとっても、特に7NOWを高頻度で利用する場合には、サブスクリプションに加入することで、さまざまなメリットを享受できる点が魅力です。

また、北米の7NOWは、日本の7NOWでは実施されていない24時間対応を行っており、高い利便性を提供しています。

セブン&アイ・ホールディングスの「2024年度第3四半期 決算説明資料」によれば、こうした取り組みが奏功し、北米における7NOWの既存店売上は前年同期比で24%増加しました。また、7NOW導入店舗における売上構成比は5.3%に達しています。

情報出所:株式会社セブン&アイ・ホールディングス「2024年度 第3四半期 決算説明資料」(2025年1月9日)、株式会社セブン&アイ・ホールディングス「2024年度 決算説明資料」(2025年4月9日)、株式会社セブン&アイ・ホールディングス「7NOWによって、お客様の多様なお買物ニーズに応える。」(公開日:2024年8月2日、閲覧日:2025年5月15日)

以上、セブン‐イレブンの競合であるローソンのデリバリー事業の最新動向と、北米における7NOWの独自の取り組みを確認しました。

これらを踏まえると、国内の7NOW事業も、出店戦略との一体化や顧客ニーズの的確な把握によって大きな売上を見込める可能性があり、サブスクリプションサービスの導入によって顧客の支持を得ながら成長を実現できると考えられます。

まとめ

本稿では、セブン‐イレブンが重要施策の1つに位置付けているクイックコマース「7NOW」の特徴とその歩みを確認し、今後の成長可能性について検討しました。

EC専業企業と比較すると、国内の店舗小売業が展開するEC事業は、単体での黒字化が難しいのが実情です。とりわけクイックコマースは、小口かつ即時配送が前提となるためコストが高く、取扱商品の多くが数百円と低価格であることから、収益性の確保が難しいという課題を抱えています。さらに、都市部以外では効率的な配送ネットワークの構築が困難であり、事業規模の拡大が必ずしも効率化につながるとは限らないという側面もあります。

こうした課題を踏まえると、7NOWの成長には、単なる販路拡大にとどまらない工夫が求められます。具体的には、SIP要素との連動による差別化、データを活用したパーソナライズ施策、サブスクリプションの導入などが、収益性と利用頻度の向上に寄与すると考えられます。

また、競合企業や北米の先行事例に学びながら、地域特性や顧客ニーズに応じた柔軟なサービス設計を行うことも不可欠です。店舗の資産を活かした運用モデルを確立できれば、店舗小売業ならではの強みを発揮し、持続可能なEC事業へと進化させることができるでしょう。

今後の7NOWの展開が、国内小売業における新たな成長の形を示すものとなるか、引き続き注視していきたいと思います。