
BOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)は、ECサイトで注文した商品を、実店舗で受け取る購買スタイルです。2010年代に登場したこのサービスは、一般には「店鋪受取サービス」などと呼ばれ、配送料をかけずに自分の都合の良いタイミングで商品を受け取れる点で、近年再び注目を集めています。
このBOPISは、オンラインとオフラインの垣根をなくし、顧客にシームレスで最適な購買体験を提供する「OMO(Online Merges with Offline)」戦略の代表的な施策のひとつであり、とくにコロナ禍を契機に非接触ニーズが高まり、宅配インフラの限界や物流コストの上昇も重なる中で、再評価されるようになりました。
実際、ヨドバシカメラやユニクロ、ニトリなど、全国に店舗網を持つ大手企業は早くからBOPISを導入し、顧客満足度や売上の向上といった成果を上げています。
本記事では、国内企業における5つの導入事例を交えながら、BOPISの導入背景やメリット、導入方法、そして運用時の課題までを網羅的に解説します。店舗とECを連携させ、OMO戦略を実現したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
国内企業5社のBOPIS導入事例
日本国内でも、BOPISを導入し、顧客体験の向上や業務効率化を実現している企業が増えています。以下に、代表的な5社の事例をご紹介します。いずれも全国に多くの店舗を展開しており、リアル店舗と自社ECサイトの連携によるOMO(Online Merges with Offline)戦略を進めているのが特徴です。
事例① ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラでは、ECサイト「ヨドバシ・ドット・コム」で注文した商品を、全国の店舗で受け取ることができるサービスを提供しています。店舗に在庫がある場合、最短30分で商品を用意することが可能です。下記は、ヨドバシ・ドット・コムの店鋪受取画面(受取店舗選択)ですが、店舗ごとに「いつから受け取ることが可能か」が一目でわかる仕様(赤枠)になっています。
◆ヨドバシ・ドット・コムの店舗受取画面
画像引用:ヨドバシ.com
また、マルチメディアAkiba・マルチメディア梅田・マルチメディア博多といった旗艦店では24時間受け取りが可能な窓口を設置しており、ユーザーの都合に合わせた柔軟な受け取りが実現されています。なお、受け取り希望店舗に在庫がない場合も、他店舗に在庫があれば取り寄せもしてもらえます。
事例② ユニクロ
ユニクロでは、購入手続きの際に「ユニクロ店舗受取り」を選択し、希望の店舗を指定することで、商品を送料無料で受け取ることが可能です。商品の受け取り準備が整うと、登録されたメールアドレスに通知が届き、受け取りの際は、ユニクロアプリの会員QRコードや注文番号を店舗スタッフに提示することで、スムーズに商品を受け取ることができます。
◆ユニクロの店舗受取画面
画像引用:ユニクロ公式
店舗での受け取り時には、試着や裾上げ、サイズ交換などの付加サービスも利用可能なため、オンラインでの購入でも安心して商品を選ぶことができます。
また、BOPISの店舗側の大きなメリットのひとつですが、店舗での受け取り時に他の商品を購入する「ついで買い」も発生しやすく、店舗の売上向上にも寄与しています。筆者も、ユニクロの店舗受取をよく利用しますが、受取時には、ほぼ毎回エアリズムやヒートテックなどの消耗品系アイテムを追加購入しています。
事例③ ニトリ
ニトリでは、公式オンラインストア「ニトリネット」で注文した商品を、一部店舗を除き、日本全国のニトリ店舗で受け取ることができます。同社の店鋪受取サービスは、ニトリメンバーだけでなく、ゲスト購入者も利用できる点が特徴です。
下記はニトリネットの商品ページですが、カートに入れなくても受け取り可能店舗や受取日の目安がわかるため(赤枠)、非常に利便性が高い印象です。
◆ニトリの商品ページ
画像引用:ニトリ公式通販 ニトリネット
また、以下の注文条件を満たせば、最短で当日の受け取りも可能です。
・受け取り店舗に、ご注文商品のすべての在庫がある
・当日受取り対象店舗である
家具のような送料が高くなる商品を無料で受け取れることは、BOPISならではのメリットです。ただし、店舗での商品引渡しは段ボール梱包のまま行われ、店舗での開梱や組立には対応していないため、車での来店や自宅での開封を想定しておかなければいけません。
事例④ ワークマン
ワークマンの店鋪受取サービスは、オンラインストア会員限定で利用可能となっており、1点のみ、1万円以下というミニマムな買い物でも、指定の店舗へ送料無料で商品が届けられ、受け取ることが可能です。よく利用する店舗は「受け取り店鋪(My店鋪)」として、あらかじめ登録しておくことができます。
◆ワークマンの店舗受取画面
画像引用:ワークマン公式オンラインストア
事例②のユニクロ同様に、オンラインストアで裾上げ加工を依頼し、店舗受け取りを選択した場合、裾上げ代が無料となるサービスも提供しています。さらに、店舗での受け取り時には、商品を試着してから購入することが可能で、サイズやフィット感を確認してから購入を決定できます。
店舗の開店時間である朝7時から受取可能なため、主要顧客である建設業や工事現場などで働く職人層にとって大きな利点です。たとえば、現場に向かう前の早朝に立ち寄って、ヘルメットや手袋などの必需品を受け取るという使い方も可能になります。
事例⑤ ココカラファイン
ココカラファインの店舗受取サービスは、会員限定で税込1,980円以上の購入で利用可能です。
同社の店舗受取サービスの最大の特徴は、第1類医薬品の購入においても店舗受取が可能な点です。通常、第1類医薬品は薬剤師の対面による説明が必要ですが、ココカラファインでは、オンライン上で問診フォームに回答し、薬剤師が内容を確認・承認することで購入でき、配送および店舗での受け取りも可能となります。
◆ココカラファインのECサイトで第1類医薬品を購入する流れ
すでにオンライン上で薬剤師の確認が済んでいるため、店鋪受け取りの際は、薬剤師が不在の店舗でも第1類医薬品を受け取ることができます。商品は、ドラッグストアだけでなく調剤薬局でも受け取りが可能です。ココカラファインの店舗受取サービスは、医薬品の購入ハードルを下げ、ユーザーの利便性を高める取り組みとして注目されています。
このように、業種や取扱商品が異なる各企業においてもBOPISの活用は広がっており、それぞれの業態に合わせた仕組みや運用が工夫されています。店舗受け取りは今や一部の先進企業だけの取り組みではなくなりつつあるのです。
では、なぜ今、これほどまでにBOPISが広く導入されているのでしょうか。時効では、その背景について見ていきます。
BOPIS導入が急増している3つの背景
BOPISは、もともと欧米で普及が進んでいた購買スタイルですが、近年では日本国内でも導入企業が急増しています。その背景には、かつてのコロナ禍を契機とした非接触ニーズの高まりや、宅配インフラの限界が顕在化したこと、そして消費者ニーズの多様化といったさまざまな要因が複合的に関係しています。
ここでは、そうしたBOPIS注目の背景について詳しく解説してまいります。
背景① EC利用率の増加とコロナ禍での急激なECシフト
経済産業省の調査報告によると、2023年の物販系BtoC-EC市場規模は14.6兆円(前年比4.83%増)と過去最高を更新、EC化率も9.38%に達し、年々上昇を続けています。特に、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降、日用品・医薬品・衣料品など生活必需品のカテゴリをはじめ、多くの小売業で急速にEC利用が定着しました。
◆物販系分野のBtoC-EC市場規模及びEC化率の推移
対面購買を避けたい心理や、実店舗の営業時間短縮が重なったことで、消費者はオンラインでの購入にシフトし、その結果「オンラインで注文して、リアルで受け取る」という選択肢が広がる土壌が整いました。
背景② 非接触ニーズの高まりと宅配インフラの限界
BOPIS自体は2010年代に登場したサービスですが、コロナ禍を契機に対面接触を避けたいというニーズが定着するなかで、「ネットで購入を済ませて、店舗で受け取るだけ」というスタイルが、現実的な受取手段として支持を集めるようになりました。
また近年では、EC利用の増加に伴い、宅配便の遅延や再配達の問題が再び浮上しています。下記の国土交通省による再配達率推移を見ると、平成時代と比べて再配達率は減少したものの、現在も11.5%前後で推移しており、配送業者の負担増とユーザー側の不満が解消されきっていないことがわかります。
◆再配達率の推移(総計)
さらに、2024年4月の「物流2024年問題(時間外労働規制)」により、配送キャパシティの低下が懸念されており、それに伴う配送料の値上げや送料無料サービスの見直しも進んでいます。このような背景から、ラストワンマイルを補完する手段として、店舗受け取り(BOPIS)への注目が再び高まっています。
背景③ 消費者ニーズの変化とBOPISへの期待
BOPISへの注目の理由は、事業者側の戦略や物流事情だけでなく、消費者側の購買意識の変化にもあります。予約ラボ(株式会社リザーブリンク)が2022年に実施した調査によると、「店舗受け取りのサービスを利用したことがある」と回答したユーザーは全体の約49%にのぼり、うち約90%のユーザーが「また利用してみたい」と回答しています。
◆店鋪受取サービスの利用に関する調査結果
また別の調査では、サービスを利用する理由として多く挙げられたのが、以下のような「コスト」「柔軟性」「スピード」に関する要素です。
◆店鋪受取サービスの利用理由
・配送料が無料だから(54.5%)
・好きな時間に受け取ることができるから(45.4%)
・店舗での買い物時間を短縮できるから(29.7%)
つまり、ユーザーの意識は「自宅配送が最も便利」という一択から、「自分のライフスタイルに合わせた受け取り方法を選びたい」という方向にシフトしています。
とくにBOPISは、送料がかからず、配送待ちのストレスも少ないことから、効率的な購買手段として評価されています。
このような3つの背景が重なり、BOPISは今や「導入すべき選択肢」として多くの企業にとって現実味を帯びた施策となっています。では次に、BOPIS導入による具体的な利点について詳しく解説してまいります。
BOPIS導入の5つのメリット
BOPISは、単に受け取り手段を増やすだけの取り組みではありません。ユーザーにとっての利便性向上はもちろん、店舗側にとっても多面的な効果のある仕組みです。ここでは、BOPIS導入によってユーザー側・店舗側の双方が得られる主なメリット紹介します。
メリット① 配送料がかからない(ユーザーメリット)
オンライン購入の際、商品価格とあわせて多くの消費者が気にするのが「送料」です。一定額以上の購入で送料無料となるショップもあるものの、少額購入時や大型商品の注文では送料が高額になりやすいのが現実です。
とくに昨今では、先に触れたように運送業界の人手不足や「物流2024年問題」などの影響を受け、送料の値上げや送料無料サービスの廃止を進めるEC事業者も増えてきています。ユーザー側の体感としても、「以前より送料が高くなった」「送料無料のハードルが上がった」と感じているケースが少なくありません。
こうしたなかで、BOPISは配送料が一切かからず、指定店舗で確実に商品を受け取れるという点で、ユーザーにとって非常に合理的な選択肢となっています。とくにアパレルや日用品のように購入頻度が高く、単価が比較的低いカテゴリでは「送料を払いたくない層」に確実に刺さる受け取り手段として利用が定着しつつあります。
メリット② 受け取り時間を自分で選べる(ユーザーメリット)
自宅配送では、再配達や受け取り時間帯の制約によって「荷物がなかなか届かない」「予定を合わせるのが面倒」といった不満が生じやすい傾向があります。BOPISでは、ユーザーが自分の好きな時間に店舗へ行き、受け取るだけというシンプルなフローのため、ライフスタイルに合わせた柔軟な受け取りが可能です。
さらに、一部の大手小売店では専用ロッカーの設置や無人カウンターの活用により、24時間いつでも受け取れる体制を整備しています。たとえば、事例でも紹介したように、ヨドバシカメラの旗艦店では24時間対応の受け取り窓口が運用されており、深夜や早朝など営業時間外のニーズにも応えています。
このように、配送待ちのストレスを避けつつ、通勤・通学・買い物など日常の動線に組み込みやすい柔軟性は、BOPISの大きな強みの一つといえるでしょう。
メリット③ 店頭での試着・サイズ交換が可能(ユーザーメリット)
アパレルや靴などサイズに不安のある商品は、ECでの購入にためらいが出やすいカテゴリです。BOPISでは、店頭での試着・サイズ確認を可能にしている店舗が多く、万が一サイズが合わなかった場合もその場で交換・返品がしやすくなります。
特にユニクロやワークマンなどの事例では、店舗スタッフがその場で裾上げなどの対応を行うケースもあり、オンラインとオフラインの利点を組み合わせた購買体験が実現しています。
メリット④ 物流コストの削減(店舗メリット)
事業者にとって、宅配便による個別配送は人件費・資材費・再配達コストなどが大きな負担となります。とくに物流コストが上がっている昨今では、ラストワンマイル配送の効率化は、多くの小売事業者にとって重要課題です。
BOPISでは、店舗を中継拠点とした集約配送が可能となるため、宅配依存による物流コストの増加を抑制できます。さらに、再配達リスクがなくなることで、配送効率の改善と運用コストの安定化が見込まれます。
メリット⑤ 来店頻度の向上と「ついで買い」の誘発(店舗メリット)
商品の購入というて点で見ればBOPISは、「本来、来店の必要がない顧客」が店舗に訪れる理由を作ってくれるサービスであり、これだけで店舗にとっては機会創出という大きなメリットをもたらします。とくに「ついで買い」は、実店舗での購買機会を創出し、顧客単価の向上にもつながります。
「ECのミカタ」の記事では、実際に衣料品チェーン大手のしまむらグループでは、BOPIS導入によって客単価が約2倍に伸長した事例が紹介されています。記事には下記のように書かれています。
また同グループは、2021年2月期決算説明会質疑応答要旨(註4)の中で、実店舗受け取りの具体的な効果について言及しています。それによると、通常の実店舗では、買上点数が約3点、1点単価が約900円、客単価が約2,700円。それに対し、ECサイトの実店舗受け取り、つまりBOPISの場合、ECサイト注文分は約1.5点と、実店舗で普通に購入する場合の半分ですが、それに実店舗での受け取り時の買上約3点が加わり、合計で買上点数約4.5点、客単価約4,800円となったとのこと。事業者側にとってのBOPIS最大のメリットである「ついで買い」の誘発によって、客単価が2倍近くにまで跳ね上がったわけです。これを受けて同グループは、「ECから店舗への送客による買上点数向上が店舗売上の向上に寄与する可能性が高い」とし、最終的にはEC事業の売上を250億円まで伸ばすと意気込んでいます。
さらに同社では、EC利用者の約9割が実店舗での受け取りを選択しており、オンラインとオフラインの相互送客効果も高いと報告されています。こうした構造を上手く活かすことで、EC単体では実現し得なかった売上機会を創出できるのが、BOPISの大きな魅力です。
以上のように、BOPISは単なる受け取り手段というだけでなく、ユーザー・店舗双方にとって多面的な利点をもたらします。
BOPIS導入の2つの方法と必要機能
BOPISを導入するには、ECと店舗双方の業務・システムをシームレスにつなぐシステムが欠かせません。とくに「在庫の正確な把握」「注文情報のリアルタイム連携」「受け取り業務の標準化」が実現されていなければ、ユーザーにとってもスタッフにとっても使い勝手の悪いサービスになってしまいます。
ここでは、BOPISを実現する代表的な導入方法と、それぞれに必要なシステム機能を解説します。
方法① ASP型のECサービスを活用する
比較的スピーディにBOPISを導入したい中小規模の事業者や、新たにECに参入する小売企業では、ASP型のECサービス(SaaS)を利用するケースが一般的です。最近のASP-ECでは、「店舗受け取り」や「在庫連携」などBOPISに必要な機能を標準装備、あるいはオプションとして提供しているサービスも多く見られます。
◆ASP-ECでBOPISを実現するための主な機能例
・受け取り希望日時の指定(受取可能時間帯の制御)
・リアルタイム在庫表示(店舗ごとの在庫反映)
・注文管理機能(受注状況に応じたステータス変更)
・通知機能(受取準備完了メール/プッシュ通知など)
・外部システムとのAPI連携(在庫管理・店舗管理システム)など
ASPは導入しやすい反面、カスタマイズ性に制約があるため、自社業務とのフィット感を見極める必要があります。また、既存の業務フローを柔軟に見直す姿勢も求められるでしょう。
方法② パッケージ・クラウド・フルスクラッチで「独自構築」する
年商数億〜数十億円規模の中堅〜大手EC企業では、パッケージ型やクラウド型のカスタマイズEC、あるいはフルスクラッチでの独自開発により、BOPIS機能を内製するケースが主流です。とくに「店舗数が多い」「SKUが多い」「会員施策やポイント連携を要する」「OMO施策と連動したい」といった複雑な要件を抱える企業では、ASP型ECでは対応が難しく、パッケージ型やフルスクラッチによる独自開発が検討されます。
◆カスタマイズ開発で求められる主な機能例
・店舗スタッフ向けの受注、ピッキング画面
・モバイル端末(バーコード)対応
・返品や交換を考慮した受け取りフローの設計
・受取失効時の自動キャンセル処理
フルスクラッチやパッケージカスタマイズでは、初期コストが高く開発期間も長くなりますが、その分「自社の業務に最適化されたBOPIS」が構築可能です。既存のPOSやWMS(倉庫管理システム)との連携も前提となるため、社内のIT体制と予算に応じた設計が不可欠です。
いずれの方式でも、単に「店舗受け取り」という機能を実装するだけでなく、以下のような観点がBOPIS導入の成功につながります。
◆導入を成功させるためのポイント
・店舗スタッフが迷わず対応できる体制づくりやマニュアル整備
・在庫反映のタイムラグや誤差の最小化
単なる機能導入にとどまらず、現場とシステム部門が連携しながら、「受け取りやすく」「受け渡しやすい」体制をつくることが、BOPIS定着のカギとなります。
次項では、BOPISを導入する際に直面しやすい主な課題と、それぞれへの対策ポイントについて詳しく解説してまいります。
BOPIS導入の4つの課題
BOPISはユーザー・店舗双方に大きなメリットをもたらす施策ですが、導入や運用にあたっては、いくつかの注意すべき課題も存在します。事前に起こり得るトラブルを想定し、対策を講じておくことで、スムーズな導入と継続的な活用が可能となります。
ここでは、BOPIS導入時に特に多くの企業が直面する4つの課題とその対処ポイントを解説します。
課題① リアルタイム在庫連携の不備
BOPISサービスの根幹を支えるのが「店舗在庫の正確な把握と連携」です。しかし、ECと店舗の在庫管理システムが分断されている場合、注文後に「在庫切れ」が発覚するなど、ユーザー体験を大きく損ねる事態になりかねません。
対処のポイントは以下のとおりです。
◆対処ポイント
・店舗ごとの在庫反映タイミングを可視化
・在庫変動の激しい商品については、BOPIS非対応とするなどの運用設計も視野に入れる
課題② 店舗オペレーションの混乱
BOPISでは、スタッフがオンライン注文を店舗で受け取り用にピックアップ・保管・手渡しする必要があります。通常業務に加えて新たな業務が加わるため、導入初期には混乱やオペレーションミスが生じやすくなります。
◆よくある混乱やミスの例
・商品の取り違え
・保管場所の混乱
・レジ、受取対応のスタッフ連携不備
・受取証や本人確認のミス
対処のポイントは以下のとおりです。
◆対処ポイント
・ピックアップ指示や保管状況を管理できるモバイル端末や専用システムの導入
・店舗レイアウトの工夫(受取カウンターや専用保管棚の設置)
課題③ 受取期限やキャンセル対応の煩雑さ
店舗での受取を選んだものの、顧客が来店しないケースも一定数発生します。この際、いつまで保管し、どのようにキャンセル処理するか、在庫はどうするかといったオペレーション設計が必要になります。
対処のポイントは以下のとおりです。
◆対処ポイント
・一定期間経過後の自動キャンセルと返金フローの設計
・未受取商品の返品処理と在庫戻しのルール整備
課題④ 受取場所の物理的制約
小規模店舗では受取用の商品を置くスペースが限られているため、バックヤードが圧迫されたり、保管ミスが発生することがあります。また、混雑時には受取カウンターで待たされるなど、顧客体験に悪影響を与える可能性もあります。
対処のポイントは以下のとおりです。
◆対処ポイント
・時間帯指定や混雑状況表示による来店分散
・ピックアップ専用ロッカーの設置検討(ただし、導入・維持費用が高い)
このように、BOPIS導入には多くの利点がある一方で、現場やシステムに与える影響も大きいため、各課題を事前に把握しておくことが重要です。
まとめ
BOPISは、オンラインとオフラインの境界がシームレスになる中で、急速に注目を集めている購買モデルです。実店舗を持つ企業にとっては、ECの利便性と店頭ならではの接客や販売機会を両立させる強力な手段であり、特にコロナ禍以降、非接触ニーズや物流コストの課題に対応する施策として再評価されています。
BOPISは単なる受け取り手段ではなく、「オンラインからリアル店舗へ顧客を呼び戻す」ためのOMO戦略の要でもあります。今後、ますます進化・多様化する消費者行動に対応していくためにも、多くの企業にとってBOPISは積極的に導入すべきサービスとなっていくでしょう。