BNPL(Buy Now Pay Later)とは、商品を購入した際にその場で支払いをせず、数日後〜翌月以降に一括または分割で支払うことができる「後払い決済」のことであり、特にECサイトにおける決済方法として広く利用されています。
BNPLは、クレジットカードのような信用審査が不要なことが多く、原則として分割払いに手数料がかからないため、クレジットカードを持たない、あるいはクレジットカードを使いたくない若年層の消費者に支持されている決済方法です。
ショッピングにおける決済方法が多様化し、BNPLの市場規模も急速に拡大傾向にあるため、今後もニーズが増えていくと見られている決済サービスです。
本記事ではBNPLを10分で理解するために、BNPLの実際の利用状況や仕組み、また事業者が導入するメリットなど、BNPLについて詳しく解説します。
BNPLの市場規模は右肩上がりに拡大
まずは、決済市場におけるBNPL(後払い決済サービス)の現状について見ていきます。下記は、BNPLの市場規模推移および今後の予測を示したグラフです。
◆BNPLの市場規模推移・予測

※後払い決済サービス提供事業者の取扱高ベース
※2024年度は見込値、2025年度以降は予測値
※後払い決済サービス市場は、EC決済サービス市場の内数
引用:「EC決済サービス市場に関する調査を実施(2025年)」(株式会社矢野経済研究所 プレスリリース)より筆者がグラフ作成
また、下記は決済サービスの利用率を年齢階層別に示したグラフです。
◆各決済サービスの年齢階層別の利用率

引用:「決済動向2025年調査」(インフキュリオン)より筆者がグラフ作成
これらのグラフが示す通り、BNPLの市場規模は、決済市場全体においては小さいものの、近年右肩上がりに成長しており、ニーズが高まっている決済サービスと言えます。また、下記は2022年のデータになりますが、BNPLの利用率を性別および年代別に示したグラフです。
◆BNPL利用率 性別・年代別の利用動向

引用:「決済動向2022年4月調査」(インフキュリオン)より筆者がグラフ作成
このグラフが示す通り、BNPLは前年代において女性の利用が多く、また男女に関わらず10代〜20代の若年層に支持されている決済手段であることがわかります。若年層ユーザーが多い理由としては、BNPLの3つの特徴によるものと考えられます。
◆若年層に支持されるBNPLの3つの特徴
② クレジットカードを持っていなくても利用できる
③ 分割払いができる
BNPLのこれらの特徴により、収入が安定せず、クレジットカードを持っていない、あるいは使いたくないという若年層、特にZ世代やミレニアル世代のニーズに合った支払い方法と言えます。
さらに、BNPLを利用する理由についての具体的な調査データとして、下記のグラフをご覧ください。
◆BNPLを利用する理由

※非利用者は、どういう理由で使うかを想像して回答
出典:コラム「日本におけるBNPLの成長性について」(財務省)
グラフを見ると、「手持ちのお金が不足」といった理由に次いで「購入時の決済が面倒」という理由が多く、つまりBNPLは、若年層の消費者に加え、決済時の利便性を求める消費者にもニーズのある決済方法であることがわかります。
米国におけるBNPLの現状:2024年の市場規模は1,090億ドルに達する
前項では、日本国内におけるBNPLの状況について述べましたが、海外においてもBNPLの利用率は近年上昇傾向にあり、特に米国においては、2024年には1,090億ドル(約16兆円)に達したとされています。
また下記は、米国における世代別のBNPL利用者割合の推移を示すグラフですが、米国も日本同様に、Z世代やミレニアル世代といった若年層の利用が拡大していることがわかります。
◆米国の世代別BNPL利用者の割合と見通し(2019~2025年)
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引用:「EC市場拡大に伴い、後払いサービスが成長(米国)」(JETRO)より筆者がグラフ作成
引用元の記事によれば、クレジットカードに比べてBNPLの審査が容易であることに加え、米国では学生ローンの債務額が社会問題になるほどに大きく、借金を抱える若年層がクレジットカードの審査に落ちた結果、その代替手段としてBNPLを利用していることが、若年層に支持される要因と見られています。
米国ではBNPLのこのような利用拡大に伴って、JPモルガンやマスターカードなどの伝統的な金融機関やクレジットカード会社などもBNPL市場参入を果たしており、今後もさらに市場は拡大していくと見られています。
では、次項よりBNPLの仕組みや特徴などについて詳しく解説してまいります。
BNPLの仕組みとクレジットカードとの違い
下記は、BNPLによる取引の流れになります。
◆BNPLの流れ

このように、BNPLは店舗やECサイトなどの「販売者」と「消費者(ユーザー)」の間に、「BNPL事業者」を介して取引が行われる仕組みになっています。
後払い決済ということで販売者側が「商品発送後にきちんと払ってもらえるだろうか?」という不安を持つことがありますが、購入代金はBNPL事業者によって立替払いされるため、未収金リスクがほとんどありません。
「あとで支払う」という点では、クレジットカードも同様の決済方法と言えますが、BNPLには、クレジットカードと大きく異なる点があります。
BNPLとクレジットカードとの違い
下記は、BNPLとクレジットカードを比較した表です。
◆BNPLとクレジットカードの比較表
| BNPL | クレジットカード | |
| 利用者の手数料 | 原則なし | あり (一括払い時はなし) |
| 加盟店の手数料 | BNPL > クレジットカード | |
| 与信審査 | なし、あるいは簡易的 | あり |
| 利用開始までの期間 | 登録後すぐ利用可能 | 1〜3週間程度 (即時発行カードなどの例外あり) |
| 利用限度額 | 少額から利用可能 (返済実績により増額) |
審査に基づいて設定 (通常BNPLより高額) |
BNPLとクレジットカードには、主に上記のような違いがありますが、最も大きな違いは与信審査の基準にあります。
クレジットカードの場合は、基本的にクレジットスコアによる信用調査を必要とし、信用力のある人でなければ審査に通らない場合があります。利用限度額も、この与信審査が影響します。一方で、BNPLは多くの場合審査を必要とせず、メールアドレスや電話番号などを登録すれば、すぐに利用開始できます。
利用開始時の限度額はクレジットカードより低いものの、審査なく即利用可能という点から、クレジットカードを持たない人が手軽に後払いできる決済手段として利用されています。
例えば、後払い決済サービス「ペイディ」は、メールアドレスと電話番号のみですぐに利用でき、また利用限度額も少額から利用実績により設定が可能です。
◆非常に簡単なペイディの利用方法

BNPLの3種類の支払い方式
BNPLには、主に3種類の支払い方式があります。それぞれの方式をメリットとデメリットで比較しました。
◆BNPLの3種類の支払い方式
| メリット | デメリット | |
| ① 翌月一括払い方式 | ・与信審査がない、あるいは簡易的 ・手数料がかからない |
・複数の購入が重なると大きな支出が発生する場合がある |
| ② 分割払い方式 | ・与信審査がない、あるいは簡易的 ・一回の支払いの負担が少ない ・原則として分割手数料がかからない |
・クレジットカードに比べ分割回数が制限されている ・分割回数や期間によっては手数料がかかる場合がある |
| ③ 請求書(払込票)払い方式 | ・商品を確認してから支払いができる ・個人情報漏洩のリスクが少ない |
・分割ができない ・請求書を無くした場合は再発行が必要 ・サービスによっては支払い手数料がかかる場合がある ・支払いに行く必要がある |
それぞれについて解説します。
① 翌月一括払い方式
購入代金を、購入月の翌月にまとめて一括で支払う方法です。手数料や利息がかからず、利用者にとって非常に簡単な支払い方法です。少額の買い物に多く利用され、クレジットカードを持たない若年層や、クレジットカードを使いたくない層に利用されている方式です。
ただし、複数の支払いが重なると思わぬ出費となる場合があるので、利用の際は計画性を持っておく必要があります。
② 分割払い方式
購入代金を複数回に分割して支払う方法で、一般的に分割回数は利用者が選択できます。分割することで、一回ごとの支払い負担を軽減できるため、家電などの高額商品を購入する際に短期間での大きな出費を避けることが可能です。
原則として分割手数料がかからないため、クレジットカードを持っていても、あえてBNPLの分割払いにして手数料を節約するユーザーも増えています。ただし、分割回数や期間によっては手数料が発生する場合もあるため注意が必要です。
③ 請求書(払込票)払い方式
商品購入後に商品と同梱、あるいは後日郵送かメールにて請求書(払込票)が送付され、あとからコンビニや銀行振込などで支払いを行います。オンラインショッピングやカタログ通販などで広く利用されている方法です。
ユーザーにとっては「商品を確認してから支払いができる」「個人情報漏洩のリスクが少ない」といったメリットがありますが、一方で、支払いに行くのが面倒、手数料が発生する場合があるといったデメリットもあります。
事業者がBNPLを導入する3つのメリット
ここでは、事業者がBNPLを導入する際の、主な3つのメリットについて述べていきます。
メリット① 購入単価が増える
BNPLを導入することで手数料のかからない分割払いが可能になり、より高額な商品を購入しやすくなるため、機会損失を防ぐとともに平均購入単価が増加します。高価な商品や複数の商品を同時に購入する機会が増えることで、事業者にとって売上の拡大につながります。
メリット② 新規顧客の獲得
BNPLは、特に若年層やクレジットカードを利用しない層の支持が高いため、こうした消費者層を取り込むことで、顧客層の幅を大きく広げることが可能になります。特に、クレジットカードを利用しない層は、もともとECサイトへの馴染みも少ないため、BNPLを導入することでECサイト利用のきっかけとなり、新規顧客の獲得につながります。
メリット③ ECサイトのCVR向上
BNPLは、即時に支払いを行わなくて済むことで、ユーザーにとっての購入のハードルが下がるため、CVRが向上します。特に高額商品を扱う事業者にとっては、ユーザーが分割払いなどを選択できることで、購入をためらうことなく決断しやすくなります。
また、「今すぐ支払う必要がない」という安心感により、カートに商品を入れたまま離脱する顧客が減少するためECサイトのカゴ落ち防止にも寄与し、売上向上が期待できます。
例えばAppleのECサイトでは、下記のように支払い方法でペイディを選択できるようになっています。注文手続き画面にその他の支払い方法と併設することで選択されやすくなり、CVRの向上につながります。
◆Appleの注文手続き画面
まとめ
ショッピングにおける決済方法が多様化し、利便性の高いBNPLは急速に市場を拡大しており、クレジットカード決済に並ぶ人気の決済方法になる可能性があります。
BNPLは、ユーザーにとって利便性の高い支払い手段であるだけでなく、事業者にとっても購買促進や新規顧客の獲得といった効果が期待できる決済サービスです。一方で、利用限度額の設定や支払い遅延リスクへの対策など、健全な運用体制を整えることも重要です。
今後は、ECサイトや実店舗を問わずBNPLの導入が進み、より柔軟で多様な購買体験を支えるインフラとして定着していくでしょう。
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