KOSE(コーセー)の顧客中心型マーケティング戦略
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化粧品市場のデジタル化が急速に進む中、コーセーは2019年11月8日に統合ECプラットフォーム「Maison KOSÉ(メゾンコーセー)」をオンラインで開設し、同年12月17日には銀座にコンセプトストアをオープンしました。

複数ブランドを統合したECプラットフォームを運営し、KOSE IDによる会員統合を実現した同社。その成長戦略から見えてくるのは、自社ECを中核としながら外部チャネルも活用するハイブリッド型アプローチの成功法則だといえるでしょう。

本記事では、コーセーのデジタルマーケティング戦略について、EC統合基盤の構築から最新技術の活用まで、その成功要因を詳細に解説します。

コーセーのEC戦略の全体像とデジタル市場でのポジション

コーセーの真の競争優位性は、顧客データの一元管理とブランド横断型の価値提供を実現する統合プラットフォームの構築にあるといえます。

特に注目すべきは、自社ECを中核としながら、外部チャネルも戦略的に活用し、相互にシナジーを生み出すハイブリッド戦略の確立でしょう。この戦略により、従来の化粧品販売では実現困難だった顧客体験の革新と収益の最大化を同時に達成しているのです

◆コーセーの競争優位性を支えるEC戦略における3つのポイント

ここからは、コーセーの成長を支えてきた各種構造について解説します。

ポイント①統合EC基盤「Maison KOSÉ」による価値創造

Maison KOSÉは、日本の化粧品業界において、先駆的な統合ECプラットフォームとして確固たる地位を築いています。この成功における最大の要因は、従来のブランド別ECサイト運営に対する徹底的な改革です。

◆Maison KOSÉのブランドサイトイメージ 

Maison KOSÉのブランドサイトイメージ

参照:https://maison.kose.co.jp/

さまざまなブランドを取り揃えており、「一つのブランドですべての化粧やケアの工程をまかなっている方は極めて少なく、顧客自身がさまざまなブランドを好きなタイミングで使っている」という顧客インサイトに基づき、ブランド横断での価値提供を実現しました。

2021年6月より、コーセー公式オンラインのアカウントを「KOSE ID」に統合。顧客は一つのIDで複数ブランドの商品を購入でき、ポイントプログラムも活用可能になりました。これにより顧客の利便性が大幅に向上し、ブランド間でのクロスセルも促進されているのです。

EC基盤の高度化により、ARメイクアップシミュレーターやデジタル肌診断など、最新技術を順次実装し、オンラインでも店頭と同等以上の顧客体験を提供しています。

ポイント②ハイブリッド型チャネル戦略の確立

コーセーの真の競争優位性は、自社EC(Maison KOSÉ)と外部チャネルを戦略的に統合したハイブリッド型チャネル戦略の確立にあります。2019年のMaison KOSÉ開設から現在まで、段階的なチャネル拡張と戦略の進化により、多層的な収益構造を構築してきました。

◆コーセーのチャネル展開の歴史

チャネル展開 戦略 対象
2019年11月 Maison KOSÉオンライン開設 ブランド統合 既存顧客
2019年12月 Maison KOSÉ銀座店開設 体験価値提供 全顧客層
2020年 スタッフ投稿活用開始 オムニチャネル デジタル層
2021年9月 DECORTÉオンラインカウンセリング開始 顧客体験強化 プレミアム層
2024年10月 マニフィークオンラインショップ ジェンダーレス 新規層開拓

「Maison KOSÉ」はコーセーユーザーのLTV(Life Time Value)向上を役割・目的としており、コーセーのさまざまなブランドを、多彩なライフスタイルに応じて選べるようにするためのプラットフォームです。

現在では雪肌精、ONE BY KOSE、コスメデコルテ、ルシェリなど多様なブランドを展開し、Maison KOSÉサイトでの共通ポイントプログラムも提供しています(対象外商品あり)。

さらに、通販限定ブランド「米肌」まで展開し、オンライン特化型の顧客ニーズにも対応しています。これらが統合されたエコシステムこそが、コーセーの持続的成長を支える収益多角化戦略の核心といえるでしょう。

ポイント③事業フォーカス戦略と2024~2025年の転換

コーセーの事業展開において、2024〜2025年は重要な転換点となりました。同社は中国事業の構造改革を実施し、チャネル最適化と不採算店舗の閉鎖を進めています

2024年12月期決算短信によると、中国の構造改革に伴う特別損失を計上。これにより同事業の持続的な売り上げ、利益を創出する事業構造へシフトすることを目指しています。

この戦略転換は、化粧品市場における競争激化とAI技術の急速な進歩を背景とするものです。ChatGPTをはじめとする生成AIの台頭により、従来型のECサイトだけでは差別化が困難になりつつある中、より付加価値の高いサービスへとリソースを集中させています。これは企業としてきわめて合理的な判断だといえるでしょう。

プロダクト主導成長を支える3つの核心機能

コーセーの圧倒的な市場シェア獲得の背景には、プロダクトそのものの競争力の高さも関連しています。高品質な商品でありながら高い顧客満足度を維持できているのは、プロダクト品質への徹底的なこだわりと、ユーザー体験の継続的な改善によるものなのです。

ここからは、コーセーのプロダクト主導成長を支えてきた各種機能について解説します。

◆コーセーのプロダクト主導成長を支える3つの機能

これら3つの機能の連携によって、コーセーは他社が追随困難な競争優位性を築いているのです。

機能①デジタル技術による革新的な体験設計

コーセーの、他社との差別化要因として見逃せない取り組みとしては、最新技術を活用した革新的な顧客体験の提供が挙げられます。2025年に発表した「Mixed Reality Makeup」では、CES 2025 Innovation Awardsを受賞しました。

◆KOSEのMixed Reality Makeup

KOSEのMixed Reality Makeup

参照:https://maison.kose.co.jp/mixedrealitymakeup/

Mixed Reality Makeupは、高速プロジェクションマッピングを用いて投影型バーチャルメイク体験を提供するという革新的な技術です。従来のARが画面上でのシミュレーションにとどまっていたのに対し、実際の顔に光でメイクを投影するという画期的な手法を採用しました。

また、デジタル肌診断機能の強化も進めています。これは顔写真から肌の状態を分析し、コーセーの複数ブランドから最適な商品を提案するという仕組みです。

◆KOSEのAI肌診断の使用例

KOSEのAI肌診断の使用例

参照:https://www.kose.co.jp/kose/hadamite_e/ より実際に使用してスクリーンショットを撮影

AI肌診断では、「未来のシワチェック」「ベースメイクチェック」といった派生メニューにより、顧客一人ひとりの肌の悩みに寄り添う商品提案を実施しています。これによって期待できるのが、商品ページの滞在時間向上と、購買転換率の改善です。特に、実店舗へのアクセスが困難な地方の顧客であっても、同社製品を身近に感じやすくなるという点で非常に有効な手段となっています。

機能②オンラインカウンセリングによる顧客接点強化

コーセーの第二の競争優位性は、オンラインカウンセリングサービスの展開です。2021年9月16日より、「DECORTÉ Personal Beauty Concierge」として新たなカウンセリングシステムを稼働させました。

◆DECORTÉオンラインカウンセリング

DECORTÉオンラインカウンセリング

参照:https://www.decorte.com/site/s/sdgs_pbc.aspx

このサービスのユニークな点は、予約不要のビデオカウンセリングやチャットカウンセリングを提供している点です。営業時間中に専用サイトにアクセスするだけで、簡単にビューティコンサルタントからアドバイスを受けられます。

その後、ARトライオン機能の追加など、サービスの拡充も進めています。オンラインでも店頭と同等のカウンセリング体験を提供することで、顧客満足度の向上に貢献しているのです

機能③オムニチャネル最適化とエンゲージメント向上施策

コーセーの第三の競争優位性は、オンラインとオフラインをシームレスに連携させたオムニチャネル戦略です。

◆実店舗スタッフによる「スタッフレビュー」実店舗スタッフによる「スタッフレビュー」

参照:https://maison.kose.co.jp/staff/makeup/list.aspx

2020年には、販売スタッフの投稿をオンラインで活用する仕組みを導入しました。実店舗のスタッフがメイクやスキンケア商品の紹介を行い、その知見をオンラインでも活用しています

また、LINE連携によるポイントプログラムの活用も進めています。店頭で気になった商品をLINEでお気に入り登録し、後日ECで購入するといった、チャネルを横断した購買行動をサポートしているのです。

これらの施策により、コーセーは顧客エンゲージメントの向上と継続率の改善を達成しています。

市場シェア拡大戦略を支える3つのマーケティング施策

コーセー成長の背景には、プロダクトの優位性だけでなく、緻密に設計されたマーケティング戦略があります。中でも特徴的なのは、3G(グローバル、ジェンダー、ジェネレーション)をキーワードとした施策展開でしょう。

ここからは、コーセーのマーケティング施策を3つの角度から分析します。

◆コーセーのマーケティング3つの施策

これら3つの施策が相互に連動することで、コーセーは市場シェア拡大を実現したのです。

施策①3G戦略によるターゲット拡大

コーセーのマーケティング戦略の中核を担うのが、グローバル、ジェンダー、ジェネレーションの頭文字をとった「3G」戦略です。これからの新たな顧客づくりのキーワードとして、性別や年齢を超えたブランド価値の訴求を実践しています

◆性別や年代を限定しない3G戦略

性別や年代を限定しない3G戦略

参照:コーセーレポート 2024 成長戦略資料より 

雪肌精では羽生結弦選手、大谷翔平選手を起用し、同社は着実に男性市場への進出を図っています。特にミドル世代の男性の来店機会が増えているという現場からの声も上がっているのです。

この戦略でユニークなのは、男性向け商品を新規開発するのではなく、既存商品のコミュニケーション戦略転換により新市場を開拓している点でしょう。ジェンダーの垣根を越えた展開を推し進め、着実なシェアの拡大を狙っているのです。

施策②D2Cブランド展開による収益モデルの多角化

コーセーが実施したもう一つの重要な戦略が、D2C(Direct to Consumer)ブランドの展開です。通販限定ブランドによる新たな収益モデルを確立しています。

◆D2Cブランドの展開状況

ブランド 特徴 展開方法
米肌 日本初の水分保持能改善有効成分配合 通販限定
マニフィーク ジェンダーレス発想 公式ECサイト

米肌は、ライスパワーNo.11を配合した保湿のスペシャルブランドとして展開しています。このライスパワーNo.11は、日本初の「肌の水分保持能改善」有効成分として認可されている成分です。

「既存顧客ファースト」で「トレンドをつくるのではなく、顧客の肌に寄り添いたい」という理念に基づいた運営により、リピート率の向上を実現しています。

「14日間の米肌体験セット」や初回割引の「定期購入サービス」など、新規ユーザー獲得のための施策も複数用意されています。新規ユーザーを愛用者へと結びつけていく仕組みにより、持続的な成長を実現しているのです

施策③新規ECサイト開設による市場開拓

2024年10月21日、コーセーコスメポートは「マニフィーク オンラインショップ」を開設しました。「マニフィーク」ブランドでは、ジェンダーを問わずに使いやすい商品を開発・提供するという“ジェンダーレス発想”により、新たな市場を開拓しています。

◆マニフィークオンラインショップ

マニフィークオンラインショップ

参照:https://magnifique-beauty.com/site/default.aspx

同ショップでは、商品情報や充実したキャンペーン情報の発信、無理なく安心して続けやすい「定期お届け便」の展開、ギフトラッピングの無料サービスなどを実施しています。これらの施策により、EC専売ならではの付加価値を惜しみなく提供し、顧客満足向上に寄与しているといえるでしょう。

さらにサイト独自のメンバーシッププログラム機能も備え、購入金額やブランド体験に応じたポイントが付与されるシステムも実装し、顧客ロイヤルティの醸成を図っています。

顧客獲得・維持の高度化戦略を支える3つの戦略

コーセーの成長を支えるもう一つの柱が、顧客獲得と維持を高度化する戦略的な仕組みです。データドリブンなアプローチにより、顧客生涯価値(LTV)の最大化を実現しています。

ここからは、コーセーの顧客獲得・維持を支えてきた3つの戦略について解説します。

◆コーセーの顧客獲得・維持のための3つの戦略

戦略①KOSE IDによる会員統合とLTV向上
戦略②ポイントプログラムによる顧客エンゲージメント強化
戦略③LINE連携によるオムニチャネル体験

これら3つの施策が統合されることで、コーセーは持続的な成長を実現しているのです。

戦略①KOSE IDによる会員統合とLTV向上

コーセーの顧客戦略における転機は、2021年6月のKOSE ID導入でした。会員システムの統一により、グループ全体で共通利用できる仕組みを構築しています

統合前までは、顧客情報やポイントなどが「Maison KOSÉ」「DECORTÉ」「雪肌精」などブランドごとに管理されていました。KOSE IDによって、さまざまな情報が一つにまとまり、企業側のデータ管理の手間を省くだけでなく、顧客が他ブランドへとシームレスにアクセスできる仕組みが整ったのです。

◆KOSE ID統合の効果

指標 導入前 導入後
会員管理 ブランド別管理 KOSE全体での統合管理
ポイント 個別付与 Maison KOSÉ共通ポイント
データ活用 分散 一元化
顧客体験 断片的 シームレス

ブランドの垣根を越えた包括的な顧客理解が可能になったことで、コーセーはより精度の高いパーソナライゼーションを実現しています

戦略②ポイントプログラムによる顧客エンゲージメント強化

Maison KOSÉサイトでは、共通ポイントプログラム「Maison KOSÉ Rewards」を提供しています。ポイントはブランドを問わず購入金額に応じて付与され、次回の買い物の際に利用可能です。

◆ポイントプログラムの仕組み

ポイントプログラムの仕組み

参照:https://maison.kose.co.jp/site/p/about_point.aspx

このポイント制度では、会員ランクに応じた特典や誕生月特典など、多様なインセンティブを提供しています。これは「お得な特典」によって顧客のエンゲージメントを高め、LTV向上に貢献する仕組みです。

DECORTÉでも新ポイントプログラムを開始し、KOSE IDとの連携を条件としています。コーセーはこのようなポイント制度の運用によって、グループ全体での顧客囲い込みを進めていると考えられます

戦略③LINE連携によるオムニチャネル体験

コーセーは、LINE連携により日常的なコミュニケーションツールを通じた顧客接点を構築しています。友だち登録をした顧客には、パーソナライズされた情報配信や限定クーポンの提供がおこなわれるのです。

店舗とECの連携も、LINE経由で簡単に実現できるようになりました。店頭で気になった商品をLINEでお気に入り登録し、後日ECで購入するといった、チャネルを横断した購買行動をサポートしています

プッシュ通知により、適切なタイミングでの情報提供も可能です。LINEという最も身近なツールを活用し、顧客のライフスタイルに寄り添った関係構築を進めているといえます。

他業種にも応用可能な3つの成功フレームワーク

コーセーの成功は、化粧品業界に限定された特殊事例ではありません。その成長を支えてきた戦略的フレームワークは、他業種のマーケティング担当者にとっても有益な示唆を与えるものです。

ここからは、コーセーの事例から抽出できる汎用的な成功フレームワークを3つの視点から解説します。

◆コーセーの成功事例にみる3つの視点

これら3つのフレームワークを理解することで、他業種でも活用できる成長戦略の本質が見えてきます。

視点①プラットフォーム統合による顧客価値最大化

コーセーの成長戦略の核心にあるのが、複数ブランドを統合したプラットフォーム戦略です。個別最適から全体最適への転換により、顧客価値の最大化を実現しています

◆プラットフォーム統合の3段階

段階 施策内容 期待効果
第1段階 インフラ統合 運用コスト削減
第2段階 データ統合 顧客理解の深化
第3段階 体験統合 LTV向上

Maison KOSÉの事例では、EC基盤の高度化により段階的な統合を実現しました。新機能の横展開が容易になり、投資効率が大幅に向上しています。

この統合アプローチは、複数ブランドを保有する企業や、M&Aによる事業拡大を進める企業にとって、重要な示唆を提供していると考えられるでしょう。

視点②デジタル技術×感性価値の両立モデル

コーセーが実証した重要なフレームワークは、デジタル技術の活用と感性的価値の両立です。化粧品という感性的な商品を取り扱うメーカーですが、綿密なデータ分析による科学的アプローチにより利益を最大化しています。

◆デジタル化と感性価値を両立させる5つの実装要素

実装段階 施策 具体的内容 期待される効果
基盤構築 会員統合システム KOSE IDによる顧客データ一元管理 包括的な顧客理解
インセンティブ設計 ポイント共通化 ブランド横断でのポイント利用 クロスセル機会の創出
デジタル接客 オンラインカウンセリング ビデオ・チャットでの美容相談 対面価値のデジタル再現
データ統合 オムニチャネル連携 店舗・EC・LINE間のデータ統合 精度の高いパーソナライズ
先端技術活用 AR/MR技術導入 CES受賞のMixed Reality Makeup等 新しい体験価値の創出

コーセーの事例では、これら5要素の統合により、デジタル化後も高級ブランドとしての価値を維持しながら、新規顧客層の開拓に成功しています。データに基づく意思決定と、ブランドの世界観や感性的価値の追求を両立させることで、顧客満足度と収益性の同時改善を実現しているのです

視点③ハイブリッドチャネル戦略の設計原則

コーセーの最も独自性の高い戦略が、自社ECと外部チャネルのハイブリッド運用です。各チャネルの強みを最大化しながら、相互補完的な関係を構築しています。

たとえば新規顧客獲得を目的とする場合は、外部チャネル(Amazon、楽天市場等)の巨大な顧客基盤を活用しています。既にプラットフォームに集まっている顧客にリーチすることで、効率的な新規開拓を実現しているのです。

一方で顧客生涯価値(LTV)の最大化を狙う場合は、自社EC「Maison KOSÉ」への誘導を強化し、KOSE IDによる顧客データの蓄積と活用をおこないます。精密なデータに基づいてパーソナライズされた体験を提供し、リピート購入を促進しています。

さらに、ブランド体験の提供を重視する場合に役立つのが、銀座のコンセプトストアでのMR体験や、オンラインカウンセリングサービスです。物理空間とデジタル空間の境界を越えた価値提供により、「コーセーを選んでよかった」という満足感を顧客に与えています。

コーセーではこの戦略により、各チャネルが相互に顧客を送り合う好循環が生まれ、グループ全体での売上拡大を実現しているのです

まとめ|化粧品DXから読み解くデジタルマーケティングの成功方程式

コーセーの成長を支えたのは、統合ECプラットフォーム「Maison KOSÉ」、デジタル技術の活用、ハイブリッド型チャネル戦略という3つの戦略の有機的な連携です。

最も示唆に富んでいるといえるのは、デジタル技術を活用しながらも「美」という感性的価値を損なわず、むしろ高めている点でしょう。ARやMRといった先端技術も、あくまで顧客一人ひとりの「美しくなりたい」という願いに寄り添うツールとして活用されています。

コーセーの事例は、デジタル化が単なる効率化ではなく、顧客価値の再定義と新たな成長機会の創出につながることを実証しています。化粧品業界に限らず、感性価値を重視する業界においても、同様のアプローチが有効となる可能性が高いといえるでしょう。