有隣堂の「店舗×EC×YouTube戦略」|縮小市場で勝つ理由
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日本の書店業界は厳しい環境に直面しています。紙の本や雑誌の販売部数は長期的に減少傾向にあり、書店の数も後継者不足や採算悪化から大幅に減っています。一方で、Amazonを筆頭とするECサイトや電子書籍サービスが普及し、紙の本を店舗ではなくECサイトで買う、本を紙ではなく電子で読むという消費者行動が一般化しました。

書店業界に逆風が吹く中、神奈川県や東京都を中心に店舗を展開する中堅書店チェーンの「有隣堂」は、創業100年以上の老舗として存在感を保ち続けています。駅ビルやショッピングセンターに店舗を構え、書籍だけでなく文房具や雑貨を幅広く扱う「本と文具の店」として、顧客から支持されてきました。最近では、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」が人気を博しており、書店というカテゴリーに留まらない存在感を放っています。

そこで本稿では、有隣堂の地域密着形の店舗運営や、ECサイトの仕組み、YouTubeチャンネルにおける取り組みなどを紹介します。その上で、縮小する市場で存在感を高めるためには、まず何よりも自社の個性を顧客に伝えることが不可欠である、という点について論じていきます。

出版市場の動向

はじめに、出版市場の動向を確認します。

公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2024年における紙と電子を合わせた出版市場規模は1兆5716億円でした。2014年を基準とすると、8.7%の減少です。ただし、この10年間で、電子の市場規模は約5倍(395%増)と急成長しているのに対し、紙の市場規模は-37.4%と大幅に縮小しています。

◆出版市場規模の推移(紙+電子)

出所:HON.jp「2024年出版市場(紙+電子)は1兆5716億円で前年比1.5%減、コロナ前の2019年比では1.8%増 ~ 出版科学研究所調べ」 より作成(更新日:2025年1月24日、閲覧日:2026年1月5日) (元データの出所は公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所)

なお、経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、電子版を除いた「書籍、映像・音楽ソフト」のEC化率は、2014年には19.6%でしたが、2024年には56.5%へと急上昇しています。この数値には、映像と音楽ソフトを含んでいるため、参考に留めるべきですが、この10年間で紙の書籍・雑誌のEC化率も大幅に上昇していることは間違いないでしょう。

情報出所:経済産業省「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備 (電子商取引に関する市場調査)」(公開:2015年5月)、経済産業省「令和6年度電子商取引に関する市場調査報告書」(公開:2025年8月)

これらのデータから、紙の書籍・雑誌の市場動向について、以下のように言うことができます。

  • 2014年から2024年までの10年間で紙の書籍・雑誌の市場規模は縮小した
  • その中で紙の書籍・雑誌のEC化率は大きく上昇したと考えられる
  • つまり、店舗での書籍・雑誌の販売金額は大幅に減少したと考えられる

有隣堂が身を置く書店業界の事業環境は、極めて厳しいことがわかります。

有隣堂の直近の業績

出版市場全体、とりわけ実店舗における紙の書籍と雑誌の販売は、極めて厳しい状況にありますが、有隣堂の売上高は、大きく減少することなく、堅調に推移しています。また、営業利益は、直近の2025年8月期に大きく増加しています。

◆有隣堂の売上高と営業利益の推移

出所:新文化オンラインの記事(2022年11月28日2023年11月28日2024年11月29日2025年11月28日)を参照して作成。

書店業界が厳しい環境にある中で、安定的な経営状態を続けている有隣堂ですが、その要因としては、書籍・雑誌だけでなく、文具や雑貨を組み合わせた独自のマーチャンダイジング・ミックスに加え、各店舗が立地特性を踏まえた取り組みを充実させてきた点が挙げられます。こうした工夫を通じて、顧客が店内で過ごす時間そのものに価値を感じられる仕組みを整えてきたと言えるでしょう。

また、店舗在庫の有無と売場レイアウトにおける陳列場所をオンラインで検索できる仕組みや、店舗には在庫がない書籍や雑誌であってもオンラインで注文して店舗で受け取ることができるECの仕組みにより、利便性を提供している点も、顧客の根強い支持を得ている理由の一つと言えます。

これらに加え、YouTubeチャンネルを通じて書店員やバイヤーの独自の視点や、商品などの対象に注ぐ熱意を発信していることも、同社の取り組みを理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

100年を超える歴史を重ねてきた有隣堂は、デジタル技術を適切に活用することで、実店舗だけでは対応しきれない部分を補い、顧客との接点をより強固なものにしているのです。

有隣堂の歩み

有隣堂の歴史は古く、明治時代にまで遡ります。1909年(明治42年)、現在の伊勢佐木町本店(横浜市中区)にあたる一角に「第四有隣堂」を創業し、書籍・雑誌を販売したことが有隣堂の源流です。その後、関東大震災や太平洋戦争時の空襲で店舗が消失したり、終戦後には占領軍に店舗敷地を接収されるなど、苦しい時期もありましたが、有隣堂は厳しい状況を乗り越えてきました。

1956年には現在の伊勢佐木町本店となる有隣堂ビルを竣工、1964年には2店舗目を開店し、多店舗化を図りました。その後、東京都(1975年)、千葉県(1999年)にも出店を進め、2023年には兵庫県神戸市に関西エリア初出店を果たします。

また、同社の近年の動向で注目すべきこととして、1つの店舗内に複数の異なる業態が共存して営業する複合型店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」(2018年)や、台湾の「誠品生活」からライセンスを受けた「誠品生活日本橋」(2019年)を開店したことが挙げられます。

情報出所:株式会社有隣堂公式サイト「沿革」(閲覧日:2026年1月15日)

筆者は、有隣堂が日比谷や日本橋といった文化の色濃い都市に、従来とは異なる特徴的な店舗を出店していることから、同社が、単に本を売る店ではなく、「本のある空間」を通じて、独自の価値や体験を提供する「体験型」のビジネスへと舵を切りつつあると見ています。

場としての価値を高める有隣堂

有隣堂の事業は多岐にわたりますが、中心となるのは書店の開発および運営です。書籍のみならず、文具や雑貨も扱う店舗を、神奈川県と東京都を中心に約40店舗展開しています。近年では、上述の通り「HIBIYA CENTRAL MARKET」や「誠品生活日本橋」といった個性豊かな店舗も展開しています。

また、有隣堂では、通常の店舗においても、物品の販売に加え、「場としての価値」を高める取り組みを強化しています。同社のウェブサイトでは、店舗運営について、次のように説明されています。

「店舗の存在とそこで行われる商品販売を通じて地域社会に貢献すること、伝統や価値観を尊重し地域のお客様に愛される存在となることを目指して、街の個性を反映させた店舗空間の開発や品揃えの工夫を続けています。
お客様の暮らしをより豊かに彩り、さらに“有隣堂があるからあの街へ行こう”と思っていただける『お客様の目的地』となれるよう、実店舗ならではの体験をご提供する場所として、ディベロッパーとの連係のもと成長を続けてまいります」

出所:株式会社有隣堂公式サイト「店舗・飲食店の開発と運営」(閲覧日:2026年1月15日)

同社では、この姿勢を立地に応じて各店舗で具現化しています。

例えば、筆者が住む千葉県市川市の店舗(有隣堂 ニッケコルトンプラザ店)では、市川市ゆかりの作家の著書や地元出版社の書籍を集めたコーナーを設置していたり、市川市在住の舞台俳優による音読講座を開催するなど、地域に根ざした活動を続けています。

2024年10月には、市川市のご当地カプセルトイ「市川まちガチャ」の特別アイテムとして、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」のMCを務める人気キャラクター、R.B.ブッコロー(以下、ブッコロー)が、市川市の名産である梨を持った姿をあしらった小判札が登場、同店内で限定販売されました。

情報出所:有隣堂ニッケコルトンプラザ店の公式ウェブページ、同店の公式Xアカウント市川まちガチャ公式Instagramアカウント

また、同店では、市川市で共生社会づくりを掲げて開催されている「ごたまぜアート展」の期間中、作品を展示し、日常の買物の中でアートと出会う場をつくっています。

情報出所:ごたまぜアート展公式Instagramアカウント

◆有隣堂店内における「ごたまぜアート展」作品展示の様子

出所:筆者撮影(2026年1月7日)

なお、同社では、書店の運営の他にも、オフィス向けの備品・機器・什器やソリューションの提供、企業・大学・病院・学校などに対する書籍・雑誌・設備品などの販売、図書館運営の受託、音楽教室・楽器店の運営、出版事業と、幅広い事業を展開しています。

情報出所:株式会社有隣堂公式サイト「企業情報」(閲覧日:2026年1月15日)

ECサイト「HonyaClub有隣堂」

有隣堂には複数のECサイトがありますが、主要なものが「HonyaClub(ホンヤクラブ)有隣堂」です。

◆ECサイト「HonyaClub有隣堂」のトップページ

画像出所:「HonyaClub有隣堂」トップページを筆者がキャプチャ(2026年1月19日)

「HonyaClub有隣堂」は、出版取次最大手の日本出版販売株式会社(以下、日販)が運営する「HonyaClub.com」のプラットフォームを活用したものです。最大の特徴は、実店舗の在庫に縛られず、日販が抱える膨大な在庫から商品を選べる点にあります。これにより、在庫が限られるという実店舗の弱点を補っています。

Amazonなどの大手ECサイトと同様、注文した商品を自宅で受け取ることができるのはもちろん、有隣堂の店舗で受け取ることもできる点も大きな特徴です。

支払い方法は、自宅で受け取る場合は、代引き決済とクレジットカード決済から選べますが、店舗で受け取る場合は、現金払いをはじめ、店舗で対応しているスマホ決済なども選択できます。

また、店舗受け取りでは送料が発生せず、例えば、文庫本1冊だけを購入したい場合でも使いやすい仕組みになっています。

店舗としては、顧客に店舗受け取りを選んでもらえば、店舗で受け取る商品に加え、売場で別の本を手に取ってもらって購入してもらう――というカスタマージャーニーを描くことができます。

つまり、「HonyaClub有隣堂」は、単なるECサイトに留まらず、顧客の来店を促す仕組み(Online to Offline)でもあり、顧客がAmazonなどに流出してしまうことを防ぐ強力な顧客接点となっているのです。

常識にとらわれないYouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」

有隣堂は明治時代に創業した老舗の書店企業です。こうした歴史ある企業の場合、厳しい経営環境に直面しても、保守的になってしまい、思い切った施策を打って出ることが難しいと考えられがちです。

しかし、有隣堂は、公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」(以下、「ゆうせか」)において、そうした固定観念を覆す、型破りとも言うべきユニークな番組作りを展開しています。忖度なしの本音トークや、バイヤーや書店員の個性を前面に押し出したスタイルは、既存の広報や販促とは一線を画しており、多くの熱烈なファンの支持を獲得することに成功しました。

そこで、この「ゆうせか」が、どのような特徴があり、どのような方針のもとに運営されているのかを紐解きながら、企業が厳しい環境下において、存在感を高めるために必要なことについて考察していきます。

◆YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」のトップページ

画像出所:有隣堂公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」画面を筆者がキャプチャ(2026年1月19日)

「企業」や「商品」よりも「人」にフォーカスするチャンネル設計

「ゆうせか」は、2020年6月30日にスタートしました。以来、2026年1月19日までに710本の動画を公開し、チャンネル登録者数は48.2万人、総視聴回数は1億6千万回を超えています。

情報出所:有隣堂公式YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」(閲覧日:2026年1月19日)

「ゆうせか」は、企業公式のYouTubeチャンネルでありながら、企業や商品よりも「人」に強くフォーカスしている点に大きな特徴があります。同社は、書籍という「どこで買っても同じ商品」を扱うからこそ、マニアックな知識や多才なスキルを持つバイヤーなど、自社の人材を最大の武器と捉え、その個性を可視化することで「有隣堂で買いたい」というファンを増やしてきました。

動画の構成においては、人気番組を参考にしたテンポの良い掛け合いを採用し、動画のコメント欄やSNSを通じた双方向のコミュニケーションを重視しています。これにより、単なる情報発信に留まらない、ファンによる温かいコミュニティが形成されているのも大きな特徴です。出演スタッフが店頭で顧客から声をかけられるといった現象も起きており、デジタル上の発信が実店舗でのやりがいやエンゲージメント向上に直接寄与していることがうかがえます。

情報出所:日経クロストレンド「老舗書店・有隣堂の破天荒YouTube戦略 8カ月で登録者が27倍に」(公開日:2021年9月13日、閲覧日:2025年12月2日)

「売らない」姿勢が生む、信頼と購買意欲

「ゆうせか」では、商品の販促を主目的とするのではなく、あくまで「面白いコンテンツを届けること」を中心に据えています。立ち上げ当初からコンテンツ企画・出演に携わっている渡邉郁氏によれば、「商品の背景にあるストーリー」「ストーリーへの共感」「話し手への信頼感」という3つの要素を重視しており、特にMCのブッコローや出演者が見せる「忖度ゼロの素直さ」が、視聴者の心を動かす鍵になっているといいます。

この「素直さ」と、商品パッケージには書かれていない専門的な視点で知的好奇心を刺激する構成こそが、結果として「つい欲しくなる」という高い購買意欲を生み出しています。企画を担当する外部プロデューサーのハヤシユタカ氏も、「企業っぽさ」が前面に出ると広告のように受け取られてしまうため、企業による発信でありながらも、出演者の本音や率直な反応が自然に表れるよう番組を構成していると語っています。

情報出所:AdverTimes.「『有隣堂しか知らない世界』なぜ売れる? 動画から考える、これからの売り方」(公開日:2025年9月1日、更新日:2025年11月25日、閲覧日:2025年12月2日)

ファンを巻き込む「ゆうせか」の生配信

下の表は、「ゆうせか」のこれまでの歩みをまとめたものです。

◆「有隣堂しか知らない世界」主な出来事

出所:株式会社有隣堂公式サイト「有隣堂しか知らない世界 チャンネル紹介」(閲覧日:2026年1月15日)および株式有隣堂プレスリリース「YouTubeライブで図鑑4,000冊が10分37秒で完売」(公開日:2025年11月21日、閲覧日:2026年1月15日)を元に作成。

表を見てわかる通り、これまでに3冊の「ゆうせか」関連書籍が刊行されています。これは、同チャンネルが高い注目を集めていることの表れだと言えるでしょう。「ゆうせか」は、単に「人気のYouTubeチャンネル」として耳目を集めているだけでなく、極めて厳しい市場環境に置かれている書店業界においても、創意工夫によって存在感を高め、ファンを増やすことが可能であることを示した成功事例として、多くの人の関心を惹きつけています。

なお、表でも触れている通り、本稿で用いているチャンネル名の略称「ゆうせか」は、2022年に行われた生配信の最中に正式に決定されたものです。視聴者の愛称も「ゆーりんちー」に決定しました。こうした名称を、生配信という公開性の高い場で視聴者とともに決め、その過程をリアルタイムで共有したことは、多くの視聴者を、単なる視聴者から一歩踏み込んだ「ファン」へと転換させる契機になったのではないでしょうか。

さらに、これまでに複数回行われている生放送での商品販売(いわゆるライブコマース)では、短時間で数千点に及ぶ文具や書籍が完売しています。これらの取り組みは放送後に話題となり、ニュース記事として取り上げられることも多く、結果として店舗での売上増加にもつながっている可能性があります。

「有隣堂しか知らない世界」4つのマーケティング的意義

ここでは、「ゆうせか」がマーケティングの観点でどのような役割を果たしているのかを4つの枠組みで整理してみます。企業担当者の方にとって、「自社でも応用できるのか」を考える際の手がかりになるはずです。

1. ファンベース・マーケティング

企業のYouTubeチャンネルでは、「認知→興味→購買」という購買ファネルを直線的に押し上げることが多いですが、「ゆうせか」では「顧客をファンに変える」ことに重点が置かれています。つまり、「売るための動画」ではなく、「有隣堂を好きになってもらうための動画」に特化しているのです。

視聴者が惹きつけられるのは、有隣堂という企業や商品そのもの以上に、熱く文房具を語る同社のバイヤーという「人」や、忖度なしの本音で語るブッコローという「キャラクター」です。この「企業ではなく個人にファンがつく」という構図は、ファンベース・マーケティングの要と言えるでしょう。動画の更新や生配信を通じて、特定の個人に継続的に接触するうちに、視聴者は「次はいつ出演するのだろう」「今度は何を紹介してくれるのだろう」と関心を高め、「本や文具を買うなら有隣堂を選ぼう」という自然な選好が育っていきます。

結果として、「ゆうせか」は単なる情報発信ツールにとどまらず、ファンという無形資産を積み上げる装置として機能しています。広告では得にくい、顧客・ファンとの深い関係性の構築や、継続的な好意の獲得を実現しているのです。

2. ギャップ・ブランディング

長い歴史を持つ老舗企業は、通常、「真面目」や「落ち着いた」といったイメージを持たれがちです。「ゆうせか」は、そこに、「バラエティ番組」「ぬいぐるみMCの毒舌」「書店員やバイヤーの熱弁と偏愛」をぶつけることで、強烈なギャップを生み出しています。この「良い意味での裏切り」が、ブランドの記憶定着率を高めていると考えられます。

ポイントは、ギャップが「ただのバズ狙い」で終わっていないことです。根底には「本・文具への本気の愛情」「ファンに楽しんでもらいたいという真剣な気持ち」があります。軽妙なやりとりが交わされている面白いコンテンツが満載の「ゆうせか」ですが、そこには有隣堂の価値観が、しっかりと息づいているのです。それが、視聴者に「親しみやすい」だけでなく、「信頼できる」という印象も与えていると考えられます。

3. ストーリーテリング

「ゆうせか」の動画の多くは、単なる商品紹介ではなく、出演者が語る偏愛ストーリーが中心にあります。「なぜこの文房具にハマったのか」「仕入れの裏話は何か」を熱く語ることで、視聴者は「この人が言うなら買ってみよう」と感じます。ここに「ストーリー→共感→購買」という流れが生まれます。

4.オネスト・マーケティング/オーセンティシティ・マーケティング

「ゆうせか」の出演者は、企業を代表する立場というよりも、商品に対する情熱があふれ出す「偏愛の人」として語り、ブッコローは、有隣堂にも、取引先にも、視聴者にも忖度せずに、本音の言葉を発します。

そのため、視聴者には、正直で誠実な人・キャラクターだ、ということが伝わり、人と企業を信頼するようになります。そして、視聴を続けることで、徐々に信頼が高まり、ファンになっていきます。

「ゆうせか」が、あえて売上を追い求めず、「面白いコンテンツ」を重視する姿勢が、結果として高い販促効果を生んでいる点は、コンテンツ・マーケティングにおいて、「正直であること(オネスト)」「誠実であること(オーセンティシティ)」の重要性を示しているとも言えそうです。

参考:オーケーの「オネスト(正直)カード」

スーパーマーケットの「オーケー」では、商品を売るためにはあえて伝えない方が良い情報であっても、顧客に伝えるべきだと判断した情報を掲載した「オネスト(正直)カード」と呼ぶPOPを店頭に数多く設置しています。同社は地域最安値で支持を集めるだけでなく、「オネストカード」を通じて本音で顧客に向き合う姿勢を示すことで、顧客との間に強固な信頼関係を形成しています。

情報出所:オーケー株式会社公式サイト「オネスト(正直)カード」(閲覧日:2025年12月24日)

終わりに

本稿では、書店業界が全体として苦境に立たされる中、堅調な業績を続けている有隣堂の取り組みを見てきました。なかでも、YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界(ゆうせか)」が、「販促」や「広報」を前面に押し出すのではなく、「面白いコンテンツ」を起点に、「本音」を「素直」に語る「人・キャラクター」を中心に構成され、多くの支持を集めている点に注目しました。

考えてみれば、人の魅力は、就職活動における「自己PR」や、クラス替えの際の「自己紹介」だけで伝わるものではありません。むしろ、サシで酒を飲み、たわいもない話から趣味を熱く語り出したり、失敗談をふとこぼしたりする瞬間に、「あ、この人は面白い」「もう少し知りたい」と、心が動くことがあります。「人となり」が立ち上がることで、相手への関心や好意が生まれるのです。

企業にも、同じことが言えるでしょう。優れた商品や立派なビジョンを掲げる広告は数多くありますが、それだけでは企業の個性や潜在的な魅力が見えにくく、どこか似通って感じられてしまいます。

有隣堂の公式ウェブサイトに掲げられた企業理念を読めば、好感を持つ人はいても、それだけでファンになる人は多くないかもしれません。しかし、「ゆうせか」でマニアックなテーマを熱量高く語るバイヤーの姿や、本音しか口にしないブッコローの次の一言に引き込まれていくうちに、視聴者は自然と有隣堂という企業そのものに惹きつけられていきます。クセが強い、でも、なんだか気になる人とキャラクターを通じて、いわば有隣堂の「企業となり」が伝わってくるのです。

国内の総人口が減少局面に入って久しい日本では、書店業界に限らず、多くの業界で売上高を維持することさえ難しくなっています。こうした成熟市場においては、単なるスペックや価格の比較を超え、他社とは差別化された「オンリーワンの存在」として顧客に認識されることが不可欠です。

自社の個性をさらけ出し、顧客に強く訴求して、深い興味と共感を呼ぶ。そして、ポイント制度のようなシステム上の囲い込みではなく、心理的な繋がりを持った「ファン(ファンダム)」を形成する。有隣堂が「ゆうせか」で示しているのは、まさに、伝統的な商いがデジタル時代に生き残るための、泥臭くも誠実なコミュニケーション戦略と言えるのではないでしょうか。

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