家電量販店業界は成熟市場にあり、人口減少や買い替え需要の鈍化、価格競争の激化など、各企業は成長を描きにくい環境が続いています。
このような状況の中、主要企業のひとつであるヨドバシカメラに目を向けると、事業の多角化や大きな再編が前面に出ているわけではないものの、業績は比較的安定して推移しています。
その背景のひとつとして挙げられるのが、同社のEC事業である「ヨドバシ・ドット・コム」の存在です。
店舗小売業においては、ECは実店舗を補完する販売チャネルと位置づけられることが多いのですが、ヨドバシ・ドット・コムは大きな売上規模を持ち、同社にとって欠かせない、収益を支える柱となっています。
本稿では、業績データと具体的な取り組みを手がかりに、ヨドバシ・ドット・コムがどのようにして競争力を築いてきたのかを整理していきます。
ヨドバシカメラの安定した業績と売上に占めるEC比率の高さ
ヨドバシカメラは、家電量販店業界の中でも、近年とりわけ安定した業績を維持している企業の一つです。
下図は、同社と業界の主要企業であるヤマダホールディングス、ビックカメラ(単体。以下、同様)、および家電量販店業界全体の直近の売上高を、6期前を1.00として指数化したものです。
◆家電量販店各社および業界全体の売上高成長指数(6期前=1.00、直近決算期)

※ヨドバシカメラ、ヤマダホールディングスは2019年3月期と2025年3月期、ビックカメラ(単体)は2019年8月期と2025年8月期、家電量販店業界(商業動態統計の「家電大型専門店」)は2018年と2024年の売上高を用いて算出。
出所:株式会社ヨドバシカメラ公式サイト「会社概要」(閲覧日:2026年1月9日)、株式会社ヤマダホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年5月8日、閲覧日:2026年1月9日)および「2019年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2019年5月9日、閲覧日:2026年1月9日)、株式会社ビックカメラ「2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年10月10日、閲覧日:2026年1月9日)および「2019年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2019年10月10日、閲覧日:2026年1月9日)、経済産業省「商業動態統計(家電大型専門店)」をもとに筆者が計算し、作成。
上の図から、直近の売上高を6期前と比較すると、家電量販店業界全体およびヤマダホールディングスは微増にとどまり、ビックカメラは減少している一方で、ヨドバシカメラは約2割の増加を達成しており、相対的に高い成長を示していることが読み取れます。
続いて、ヨドバシカメラと競合2社の直近の売上高を比較してみます。
◆家電量販店主要3社の売上高(店舗売上・EC売上)
.jpg)
※ヨドバシカメラ、ヤマダホールディングスは2025年3月期、ビックカメラ(単体)は2025年8月期の数値。ヨドバシカメラとヤマダホールディングスのEC売上は『月刊ネット販売』による推計値。
出所:株式会社ヨドバシカメラ公式サイト「会社概要」(閲覧日:2026年1月9日)、『月刊ネット販売』2025年11月号、株式会社ヤマダホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年5月8日、閲覧日:2026年1月9日)、株式会社ビックカメラ「2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年10月10日、閲覧日:2026年1月9日)および「2025年8月期 決算説明会プレゼンテーション資料」(公開日:2025年10月21日、閲覧日:2026年1月9日)を元に筆者が計算し、作成。
この図から、ヨドバシカメラの総売上はヤマダホールディングスのほぼ半分であり、ビックカメラの2倍弱であること、EC売上はヨドバシカメラが他の2社を上回っていることがわかります。
総売上に占めるEC売上比率を算出すると、以下のようになります。
- ヨドバシカメラ 28.1%
- ヤマダホールディングス 11.4%
- ビックカメラ(単体) 12.5%
EC売上比率の算出に用いたヨドバシカメラとヤマダホールディングスのEC売上が推計値であること、ヤマダホールディングスのEC売上には家具なども含むことに注意が必要ですが、ヨドバシカメラのEC売上比率が圧倒的に高く、他社を大きく引き離していることがわかります。
同社の藤沢和則社長は、同社のEC売上比率を更に高め、50%にまで引き上げる意向を示しており、今後の取り組みが注目されます。
情報出所:日経ビジネス「薦めたいECサイトランキング 首位ヨドバシ、楽天・アマゾン超える」(公開日:2022年1月24日、閲覧日:2026年1月27日)
ヨドバシカメラの特徴として、利益率が低い企業が多い家電量販店業界において、相対的に高い経常利益率を保っている点も注目に値します。
◆家電量販店主要3社の経常利益および経常利益率
.jpg)
※ヨドバシカメラ、ヤマダホールディングスは2025年3月期、ビックカメラ(単体)は2025年8月期の数値。
出所:株式会社ヨドバシカメラ公式サイト「会社概要」(閲覧日:2026年1月9日)、株式会社ヤマダホールディングス「2025年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年5月8日、閲覧日:2026年1月9日)、株式会社ビックカメラ「2025年8月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」(公開日:2025年10月10日、閲覧日:2026年1月9日)を元に筆者が計算し、作成。
先に確認した通り、売上高では、ヨドバシカメラはヤマダホールディングスの約半分の規模にすぎません。しかし、経常利益ではヨドバシカメラがヤマダホールディングスを上回っており、結果として経常利益率は8.4%と、3%前後にとどまる他社を大きく引き離しています。
ヨドバシカメラの経常利益率が高い理由の一つは、店舗事業より利益率の高いEC事業の売上構成比が高いことだといいます。
情報出所:ダイヤモンド・チェーンストアオンライン「すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO」(公開日:2018年6月15日、閲覧日:2026年2月2日)
ヨドバシカメラの売上構成に目を向けると、EC事業が売上規模の面でも同社の事業において極めて重要な位置を占めていることが分かります。
下図は、直近7期の同社の売上高の推移です。
◆ヨドバシカメラの売上高の推移(店舗売上・EC売上)
.jpg)
※EC売上は『月刊ネット販売』による推計値。
出所:株式会社ヨドバシカメラ公式サイト「会社概要」(閲覧日:2026年1月9日)、『月刊ネット販売』2025年11月号ほかをもとに筆者再集計・作成。
この図から、2019年3月期から2025年3月期までの直近7期において、総売上、店舗売上、EC売上は、前年比で減少する年もありますが、全体としては増加基調で推移していることがわかります。
この期間における各区分の売上高の伸長の度合いを確認してみます。2019年3月期の各売上を1.00として、2025年3月期の売上指数を算出すると、以下のようになります。
- 総売上 1.18
- 店舗売上 1.03
- EC売上 1.89
2019年3月期から2025年3月期までの6年間で、店舗売上は微増に留まっているのに対し、EC売上は2倍弱に増加しており、売上成長の中心が店舗ではなくECにあったことがわかります。
このように、ヨドバシカメラは近年、家電量販店業界の主要企業と比べても業績が安定しており、経常利益率も高い水準を維持しています。その中で、総売上の3割弱を占めるEC事業が、成長と収益性の両面において重要な役割を果たしている点は、特筆すべきでしょう。
以降では、同社のECサイト、ヨドバシ・ドット・コムの特徴を整理していきます。
顧客に支持されるヨドバシ・ドット・コムの特徴
ヨドバシカメラにとって、ECは事業の中核を担う存在です。その存在感の大きさに加え、取り組みのスタート時期の早さもまた、同社を特徴づける重要な要素です。
ここでは、EC事業の立ち上げからヨドバシ・ドット・コム誕生までの歩みを整理した上で、現時点における強みを読み解いていきます。
インターネット黎明期にEC事業をスタート
現在のヨドバシカメラにおいてEC事業の存在感は大きいのですが、取り組みを始めた時期も突出して早いのが同社のEC事業の特徴です。同社のEC事業のこれまでの歩みを簡単に振り返り、その上で、現時点での強みを解説しましょう。
ヨドバシカメラがEC事業に取り組み始めたのは、1998年のことでした。これは、楽天市場がスタートした翌年にあたり、Amazonが日本向けサービスを開始する2000年よりも前にあたります。
Windows 95の発売を契機に商用インターネットが普及し始めていたこの時期、ECはまだ収益モデルが確立しておらず、不確実性の高いビジネスと見られていました。とりわけ家電量販店のような大規模小売業においては、参入事例はほとんど存在していませんでした。
しかしヨドバシカメラは、低コストでネットワークを商用活用できる点に機会を見出し、EC事業に着手します。
情報出所:ネットショップ担当者フォーラム編集部『ヨドバシ.com大躍進の舞台裏―ネット通販11社の成功法則+関連サービス260まとめ』インプレス、2016年10月。
下の画像は、立ち上げ当初のヨドバシカメラのECサイトのトップページの様子です。
◆ヨドバシカメラの1998年当時のECサイト「Multimedia Station PERSONAL STORE」

画像出所:WaybackMachine
この当時、ヨドバシカメラでは、リアル店舗以外のカタログ通販やテレフォンショッピングといった販売チャネルのひとつとして、ECを位置付けていました。今ではECがリアル店舗と並ぶ重要な販売チャネルとなっていますが、この頃は顧客のインターネット接続がダイヤルアップ方式だったこともあり、ECはあくまでも店舗に対するサブ的なチャネルでした。
情報出所:MdN DESIGN INTERACTIVE「リーディングカンパニーのWeb戦略に迫る 第3回 ヨドバシカメラ」(公開日:2008年8月21日、閲覧日:2026年1月11日)
当初「PERSONAL STORE」という名称で運営されていた同社のECサイトは、2000年に「ヨドバシ・ドット・コム」となり、現在に至るまでこの名称が使用されています。
もっとも、このタイミングで変わったのは名称だけではありません。それ以前はECと基幹システムが連動しておらず、取扱商品はPCソフトやゲームソフトといったソフトウエアが中心でした。ハードウエアも、パソコンやCD-ROMドライブなど、いわゆる家電製品以外の領域に限られていました。
1999年、システム刷新によってECと基幹が連動するようになったことを契機に、取扱商品はゲーム・PC関連以外へと拡大していきます。こうした基盤整備を経て、2000年5月、ヨドバシ・ドット・コムに全面リニューアルしました。
以来、ヨドバシ・ドット・コムは四半世紀を超える年月のなかで着実に機能を磨き、同社の事業を支える中核的な存在へと成長してきたのです。
ヨドバシ・ドット・コムの強み7選
先述した2000年のヨドバシ・ドット・コムの開設時と、2026年の現在では、インターネットの接続環境や通信速度の高度化、スマートフォンの普及、ECの浸透など、企業や消費者をとりまく環境が大きく変わっています。
同社のEC事業は、こうした変化に対応することで、事業規模を拡大してきたわけですが、藤沢和則社長(取材当時は副社長)は、「実は、ヨドバシカメラが使っているECの仕組みは2000年前後からあまり変わっていません」と述べています。
情報出所:ネットショップ担当者フォーラム編集部『ヨドバシ.com大躍進の舞台裏―ネット通販11社の成功法則+関連サービス260まとめ』インプレス、2016年10月。
これは2016年のインタビューでの発言ですが、現在でも同社のECの仕組みは、ヨドバシ・ドット・コムを立ち上げた当時から大きくは変わっていないものと思われます。
◆ヨドバシ・ドット・コムのトップページ(2026年2月現在)

画像出所:ヨドバシ・ドット・コムのトップページ(2026年2月5日閲覧、筆者にてキャプチャ。一部加工)
以下では、ヨドバシ・ドット・コムの強みを7つの特徴に絞り、順に確認していきます。
特徴1.豊富な品ぞろえ
ヨドバシ・ドット・コムの取扱いアイテム数は、約800万に上ります(2022年4月現在)。
情報出所:ヨドバシ・ドット・コム「はじめてのお客様へ」(閲覧日:2026年1月11日)
ヨドバシ・ドット・コムが、自社で仕入れた商品のみを販売していることを踏まえると、この品ぞろえアイテム数は破格と言ってよい水準です。
楽天市場は企業や個人が出店するECモールですし、Amazonも創業当初こそ自社仕入れによる直販モデルでしたが、現在では外部事業者が商品を販売できるマーケットプレイスを擁しています。つまり、両者の膨大な商品点数は、出店者・出品者の広がりによって実現されている側面が大きいと言えます。
その点、掲載されている商品一つひとつについて自社で仕入れ責任と在庫責任を負いながら、800万アイテムという規模を実現しているヨドバシ・ドット・コムの品ぞろえは、直販型ECとして際立った水準にあると言えるでしょう。
ちなみに、ヨドバシカメラの店頭在庫は約45万アイテムに上ります。リアル店舗としては群を抜く品ぞろえですが、ヨドバシ・ドット・コムでは、その約20倍に当たる規模の商品を扱っています。
情報出所:ダイヤモンドチェーンストア・オンライン「すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO」(公開日:2018年6月15日、閲覧日:2026年2月2日)
このように膨大な種類のアイテムを販売するヨドバシ・ドット・コムでは、扱っているカテゴリーも多岐にわたっています。当然ながら、一般的な家電量販店で販売されているカテゴリーは網羅しています。
◆ヨドバシ・ドット・コムの取扱いカテゴリー①

画像出所:ヨドバシ・ドット・コム「カテゴリから選ぶ」より筆者作成(閲覧日:2026年1月11日)。
これらに加え、従来は家電量販店で販売されていなかったような以下のようなカテゴリーも扱っています。
◆ヨドバシ・ドット・コムの取扱いカテゴリー②

画像出所:ヨドバシ・ドット・コム「カテゴリから選ぶ」より筆者作成(閲覧日:2026年1月11日)。
ヨドバシ・ドット・コムでは、顧客ニーズに応じて取扱商品の領域を拡張してきました。その積み重ねが、上の表に示した幅広い品ぞろえであり、約800万点に及ぶアイテム数につながっているのです。
特徴2.検索とリクエストで商品を探せる
ヨドバシ・ドット・コムでは、膨大な品ぞろえの中からでも顧客が迷うことなく目的の商品に到達できるよう、検索機能が充実しています。
- AND検索:複数のキーワードを含む商品を検索する
- OR検索:複数のキーワードのいずれかを含む商品を検索する
- NOT検索:除外したいキーワードを指定できる
情報出所:Impress Watch「なぜ1品から無料? ヨドバシエクストリーム便の凄さを藤沢社長に聞く」(公開日:2021年12月17日、閲覧日:2026年1月27日)
検索機能を用いても商品が見つからない場合、顧客は「商品リクエスト」機能を利用し、探している商品について販売員に探索を依頼することができます。
この機能を利用する際、顧客は入力フォームから以下の情報を送信します。
- カテゴリー
- 大まかな商品分野
- 商品名や商品型番
- メーカー名やブランド名
- 商品情報が掲載されているウェブサイトのURL
- その他、商品探しのヒントになる情報
これらのうち、1~4は一般的な商品探索に用いられる基本情報です。
一方、「5. 商品情報が掲載されているウェブサイトのURL」および「6. その他、商品探しのヒントになる情報」を入力できる点は、同社の取り組みの中でも特徴的な設計といえます。
顧客自身が収集した外部情報まで探索プロセスに組み込める点は、ECでありながら対面接客的な探索支援を実装している例といえるでしょう。
特徴3.圧倒的な配送スピード
商品の配達先が関東全域(一部地域除く)で、在庫がある場合、午後1時までに決済が完了した商品については、当日に配達されます。
2016年には、対象エリア内に最短2時間半で商品を届ける、自社配送の「ヨドバシエクストリームサービス便(以下、エクストリーム便)」をスタートしています。
情報出所:株式会社ヨドバシカメラ「東京都23区全域を対象に「ヨドバシエクストリーム(Yodobashi Xtreme)」サービス開始 毎日、気軽に便利に使えるヨドバシ・ドット・コム、はじまります」(公開日:2016年9月15日、閲覧日:2026年1月8日)
過去には競合企業も短時間での配送に取り組んでいましたが、現在でもサービスを展開している企業はヨドバシカメラ以外には見当たりません。例えば、Amazonは有料のプライム会員向けに最短1時間以内に生鮮食品などを届ける「Prime Now(プライムナウ)」を2015年から提供していましたが、2021年には終了しています。
情報出所:INTERNET Watch「Amazon.co.jpの短時間配送サービス『Prime Now』が3月31日をもって終了。スーパー『ライフ』が引き継ぎへ」(公開日:2021年3月1日、閲覧日:2026年2月1日)、PRESIDENT Online「アマゾンへの対抗ではない」から続いている…ヨドバシカメラが100円の電球を送料無料で即日配達する理由」(公開日:2024年2月18日、閲覧日:2026年1月26日)
なお、配送時間の短さが注目されることが多いエクストリーム便ですが、スピード配送のみを求めているものではなく、配送の効率化と配送レベルの向上を目的としています。これについては後述します。
情報出所:ネットショップ担当者フォーラム編集部『ヨドバシ.com大躍進の舞台裏―ネット通販11社の成功法則+関連サービス260まとめ』インプレス、2016年10月。
特徴4.配達料金が無料
ヨドバシ・ドット・コムを特徴づける最も大きな特徴ともいえるのが、どんなに安い商品であっても配送料金が無料なことです。
下の画像は、筆者が実際にヨドバシ・ドット・コムで「消しゴム」を注文した際の画面をキャプチャしたものです。110円の商品を1個だけ購入する場合でも、配達料が0円となっていることがわかります。
◆ヨドバシ・ドット・コムで「消しゴム」を注文する際の画面

画像出所:ヨドバシ・ドット・コム(2026年2月9日に消しゴムを注文する場面、筆者にてキャプチャ)
以下はヨドバシ・ドット・コムの主な特徴を伝えるウェブページからの引用です。ここでは、品ぞろえが豊富なこと、入会費・年会費が無料であることと並び、配達料金が無料であることが強調されています。
◆ヨドバシ・ドット・コムの特徴を紹介するウェブページ

画像出所:ヨドバシ・ドット・コム「ヨドバシ・ドット・コムのスピード配達が更にパワーアップ!配達料金無料!」(2026年2月5日閲覧、筆者にてキャプチャ)
ちなみに、Amazonではプライム会員であれば配達料が無料になりますが、年会費を支払う必要があります。そう考えると、年会費が一切かからないにもかかわらず配達料を無料としているヨドバシ・ドット・コムのサービスが、顧客にとっていかに優れているかは明らかです。
特徴5.ポイント還元率の高さ
ヨドバシ・ドット・コムでは、多くの商品で購買金額の10%相当のポイントが付与されます。先ほど掲載した「消しゴム」注文時の画面にも、合計金額の10%に当たるポイント還元数が表示されています。
つまりヨドバシ・ドット・コムでは、多くの商品を常時「実質1割引き」で購入できる設計になっていると言えます。
期間限定で特売を行うのではなく、恒常的に低価格で商品を販売することを、EDLP(Everyday Low Price)と呼びます。この表現をも模せば、常に高いポイント還元率で販売するヨドバシ・ドット・コムは、いわば、EDHP(Everyday High Points。筆者による造語です)です。
この仕組みが、継続的な利用とリピート購買を後押ししているのです。
特徴6.派手さはないが丁寧な操作説明
筆者がヨドバシ・ドット・コムを利用していて感心することのひとつが、「ここまでやるか」と言いたくなるほど懇切丁寧な操作説明です。
顧客がどこを見れば知りたい情報にたどり着けるのか、やりたい操作をどのように行えばよいのかを、実際の画面操作の状態をキャプチャした画像を用いて説明しているのです。
今の時代であれば、画面のスクロールやボタンのクリックの仕方などを動画で説明することも可能です。しかしヨドバシ・ドット・コムでは、あえてキャプチャ画像と文章だけで操作説明を行っています。
この方法を採用しているのは、単に刷新されていないのではなく、動画による説明よりも、静止画と文字による説明の方が顧客にとって理解しやすいと判断してのことだと考えられます。
その理由として考えられるのは、動画は視聴に時間を要し、必要な情報にたどり着くまで早送りや巻き戻しが必要になる一方、静止画であれば、顧客は自分のペースで画面を確認しながら、必要な情報だけを瞬時に把握できることです。
操作に不慣れな顧客にとっても、安心して利用できる設計になっています。派手さではなく、顧客に確実に理解してもらうことを優先している点に、ヨドバシ・ドット・コムの顧客志向の姿勢が表れています。
特徴7.シンプルで邪魔されないUI(ユーザーインターフェース)
特徴6にも通じるのですが、ヨドバシ・ドット・コムのUI(ユーザーインターフェース)は、シンプルで、その設計が特に高頻度利用者には心地よい設計になっていると考えられます。
ヨドバシ・ドット・コムのUIからは、華やかさや派手さはあまり感じられず、どちらかと言えば地味、あるいは素朴な印象を受けます。これは決して悪いことではありません。
たとえば、Amazonでは、ある書籍を表示すると、当該商品の情報以外に、
- よく一緒に購入されている商品
- この商品に関連する商品
- この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
- この商品を買った人はこんな商品も買っています
- お客様の閲覧履歴に含まれている商品を閲覧した人は、こんな商品も見ています
- 当該カテゴリーのベストセラー
- スポンサー広告
といった情報が大量の画像と共に表示されます。確かに、ECサイトで買物をしている時に、自分に合った商品を提案してほしいと考えている顧客もいるでしょう。しかし、購入を検討している商品のページにまで、上のように大量の他商品画像や文字情報が表示されるのは、顧客の集中を妨げかねません。
その点、ヨドバシ・ドット・コムでは、邪魔になるような情報を目にせず、ストレスなく買物することができます。商品のページには、当該商品の情報の他、
- この商品と一緒に購入されている商品
- この商品を見たお客様はこれも見ています
- 最近チェックした商品
が表示されるだけです。Amazonと同種の情報が表示されはしますが、その量は買物の邪魔になるほど多くはありません。
Amazonや、ここでは触れていませんが、楽天市場のUIが、企業側の都合で設計されているように見えるのに対し、ヨドバシ・ドット・コムは顧客の立場で考えられたUIだと言えるでしょう。
以上、顧客から見たヨドバシ・ドット・コムの優れた点を確認しました。続いて、強みを下支えする同社の「自前主義」の取り組みと考え方を紹介します。
ヨドバシ・ドット・コムの強みを生み出す「自前主義」
これまでに確認してきたヨドバシ・ドット・コムの特徴は、一見するとシンプルでありながら、顧客が確かな価値を感じ取れるものばかりでした。とりわけ、品ぞろえの豊富さ、配送スピードの速さ、そして配達料無料といった要素は、利用体験の根幹を形づくる重要なポイントです。
これらの価値は、個別の施策の積み重ねとして偶発的に成立しているわけではありません。背後には、ヨドバシカメラが長年にわたりこだわってきた「自前主義」という思想が存在します。自社主導で試行錯誤を重ね、取り組みの精度を高めることで、他社には容易に模倣できないサービス水準が持続的に実現しているのです。
以降では、同社の強みの源泉となっている「自前主義」の取り組みについて、具体例を挙げながら確認していきます。
顧客がほしい商品を自社で仕入れて自社で販売
ヨドバシ・ドット・コムの品ぞろえは、幅広いカテゴリーと膨大なアイテムから成りますが、この品ぞろえを支えているのが同社のバイヤーです。
Amazonや楽天市場では、様々な事業者が出品する商品が販売されています。これに対し、ヨドバシ・ドット・コムでは同社のバイヤーが自ら仕入れた商品を販売しており、品質や価格、アフターサービスを含めて一貫した管理が行われています。こうした体制が、顧客にとっての安心感につながっています。
なお、同社ではカテゴリーごとに担当バイヤーが配置されていますが、ヨドバシ・ドット・コム専任のバイヤーはおらず、店頭とオンラインの両方を一体で担当しています。この体制は、後述する店頭とオンラインを統合的に捉える同社のオムニチャネル的発想とも深く関係しています。
情報出所:ダイヤモンドチェーンストア・オンライン「すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO」(公開日:2018年6月15日、閲覧日:2026年2月2日)
100%自社配送体制のエクストリーム便
2016年に対象地域と対象商品を限定したうえでスタートしたエクストリーム便は、上述の通り、ヨドバシ・ドット・コムで注文した商品を最短2時間半で配達するサービスです。
エクストリーム便では、ヨドバシカメラによる100%自社配送体制のもと、注文から出荷、配達に至るまでを一貫して担う運用プロセスに、テクノロジー活用を掛け合わせることで、配送・再配達業務の効率化と、顧客サービスレベルの向上とを両立しています。
エクストリーム便のスタートにあたり、ヨドバシカメラは東京都23区内全域に13か所の専用「お届けサービス拠点」を開設しました。約300台の配達サービス車両と自社の配送スタッフによって、きめ細かな配達体制を構築しています。
同時に、ヨドバシ・ドット・コムで食料品販売を開始するとともに、日用品の品ぞろえを拡充し、顧客が日常の買物にも利用しやすい環境を整えました。
情報出所:株式会社ヨドバシカメラ「東京都23区全域を対象に「ヨドバシエクストリーム(Yodobashi Xtreme)」サービス開始 毎日、気軽に便利に使えるヨドバシ・ドット・コム、はじまります」(公開日:2016年9月15日、閲覧日:2026年1月8日)
同社の配送スタッフは、顧客への挨拶にもこだわっており、「荷物を届けに来ました」ではなく「お買い上げいただきありがとうございます」と言うそうです。これは、ECにおいて対面での顧客接点は商品の受け渡し場面に限られるため、その貴重な接点で顧客にヨドバシのファンになってもらうべく、一瞬も手を抜かないという考えに基づいています。
情報出所:日経ビジネス「薦めたいECサイトランキング 首位ヨドバシ、楽天・アマゾン超える」(公開日:2022年1月24日、閲覧日:2026年1月27日)
配送ルートの最適化のためにエンジニアが配送トラックに乗り込む
ヨドバシカメラでは、配送ルートを最適化するアルゴリズムを自社で開発しています。この開発のために、エンジニアが配送トラックに乗り、配送スタッフと共に実際のルートを巡ることもあります。
開発者自らが現場を回り、各地域の道路状況に詳しい配送スタッフと会話を重ねる中で、机上では見つけることのできない課題が見えてくることもあるといいます。
例えば、最適と判断していたルートが「午前中は問題ないが、午後は車の流れが逆方向になって遅延が発生する」ことが分かった場合、「午後からは別ルートを表示させる」という改善につながります。
また、ルート設計だけでなく、配送オペレーションの改善につながる気付きもあります。箱買いした大量の水と小さな日用品を購入した顧客に配達した際、次のようなことがありました。自宅にはご夫人しか在宅しておらず、「水は重くて運べない。玄関に置くとスペースを取ってしまう。夕方に夫が帰宅した後、水だけを再配達してほしい」と要望されました。配送スタッフが顧客の要望を踏まえ、水のみを改めて配達する対応を取る様子を目の当たりにしたエンジニアは、それまで考慮していなかった分割配送管理の必要性に気付いたそうです。
このように、エンジニアはデータで把握できる情報に加え、現場で顕在化する課題のフィードバックを取り込むことで、実態に即した効率的な配送アルゴリズムを開発しているのです。こうした現場起点の技術開発もまた、同社の自前主義を象徴する取り組みといえるでしょう。
情報出所:Type「『成果なんてすぐに見えるものじゃない』ヨドバシが圧倒的な自前主義と長期的視点に立てる理由」(公開日:2025年1月10日、閲覧日:2026年1月27日)
ネットと店舗のサービス統合
EC売上が伸長し、総売上に占める割合が約3割に達しているヨドバシカメラでは、早い段階から、ヨドバシ・ドット・コムと店頭における顧客体験の分断をいかに解消するかが重要なテーマとなってきました。
ここでは、代表的な施策を取り上げることで、同社が進めてきたネットと店舗のサービス統合の実態を確認していきます。
2015年6月にネットと店舗のサービスは「ほぼ完全に統合」
ヨドバシカメラは2015年6月、ヨドバシ・ドット・コムの会員を対象に、ネット注文時の利便性を店頭購買時にも適用する仕組みを構築しました。この時、同社は「今回のサービス追加により、従来からネットや店舗でご提供中の各種オムニチャネル対応サービスとあわせてネットと店舗のサービスをほぼ完全に統合いたしました」と発表しています。
情報出所:株式会社ヨドバシカメラ「ヨドバシ・ドット・コム会員の登録でさらに店舗でのお買い物がお得で便利になりました」(公開日:2015年6月25日、閲覧日:2026年2月1日)
こうした取り組みを推進した背景には、顧客の購買行動に対する深い洞察がありました。
ヨドバシカメラの藤沢和則社長(当時副社長)は、顧客のヨドバシ・ドット・コムと店舗の利用について、以下のように述べています。
- 店舗とヨドバシ・ドット・コムの両方を利用する顧客が圧倒的に多い
- 高単価家電は店頭で即決せず、熟考後に再来店して購入する顧客が多い
- 店頭で見た商品を再来店せずヨドバシ・ドット・コムで購入できることは顧客ニーズに合致している
- ヨドバシ・ドット・コムで注文した商品を店頭で受け取る利用も増加している
情報出所:ダイヤモンドチェーンストア・オンライン「すべて“自前主義”で店舗事業より高い利益率を実現=ヨドバシカメラ藤沢 和則副社長兼CIO」(公開日:2018年6月15日、閲覧日:2026年2月2日)
同社は、ヨドバシ・ドット・コムの利用者増加と売上規模拡大と並行して、顧客が享受できるサービスを、着実にネットと店舗で統合させていきました。
このように、段階的に進めてきたネットと店舗のサービス統合と、顧客の購買心理に寄り添った施策の積み重ねが、高いEC売上比率に結実しているといえます。
ECで注文した商品の店舗受け取り「BOPIS」実現の背景
ECで注文した商品を店舗で受け取れる仕組みは「BOPIS」(Buy Online Pick-up in Store)と呼ばれ、新型コロナウイルス感染症の拡大期に普及が進みましたが、ヨドバシ・ドット・コムでは2003年にいち早くこのサービスを開始しています。
ヨドバシカメラがこれほど早い段階でBOPISを導入することができた背景には、精密な在庫管理を実施していたことがあります。
当時、多くの小売企業が行っていた在庫管理は、「店頭在庫」と「倉庫内在庫」を把握する程度のものでした。これに対し、1988年から在庫管理システムを導入していたヨドバシカメラでは、「店頭在庫」「倉庫からの配送トラックで移動中の在庫」「倉庫内在庫」「店頭取り置き用在庫」に区分し、これらを、ほぼリアルタイムに近い状態で管理していたといいます。
情報出所:PRESIDENT Online「『アマゾンへの対抗ではない』から続いている…ヨドバシカメラが100円の電球を送料無料で即日配達する理由」(公開日:2024年2月18日、閲覧日:2026年1月26日)
店頭からネットの商品情報、ヨドバシ・ドット・コムへの誘導
ヨドバシカメラの店頭では、2012年10月、すべての商品に「バーコード、ご利用ください」と記された札が取り付けられました。このバーコードを、同年8月にリリースされた同社アプリで読み取ると、商品の詳細情報が掲載されたウェブページを閲覧できるほか、ヨドバシ・ドット・コムへ移動してそのまま注文することもできます。
情報出所:日経クロストレンド「ヨドバシ店頭の全商品にバーコード表示、スマホアプリから情報提供」(公開日:2012年11月22日、閲覧日:2026年1月8日)
この取り組みによって、店頭の強みである実物確認という体験に、ネットの強みである圧倒的な情報量と購買利便性を重ね合わせることで、体験価値と機能価値の双方を高水準で両立させています。
現在においても、店頭の全商品を起点に、オンラインでの情報閲覧からEC注文までを一気通貫で実装している事例は限られており、この取り組みはオムニチャネル戦略の先駆的実装例と評価できます。
なお、同社は2015年9月に、店内で無料で使えるWi-Fiを導入しました。
◆ヨドバシカメラ店内の無料Wi-Fiの案内

画像出所:ヨドバシ・ドット・コム「無料インターネット接続Wi-Fiスポット『ヨドバシ フリーWi-Fi』サービス」(2026年2月5日閲覧、筆者にてキャプチャ)
この無料Wi-Fiの案内にも記されている通り、顧客が携帯するスマートフォンを店内でストレスなく使用できる環境を整備することで、商品検索や、その場からヨドバシ・ドット・コムでの注文を促しています。
国内小売業では珍しい店内撮影OK
ヨドバシカメラでは、無料Wi-Fi提供開始と同時に、店内での写真撮影も解禁されました。
◆店内撮影を推奨していることを伝える掲示物(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba)

画像出所:筆者が「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」店内で2019年6月に撮影。
現在でも多くの小売企業では店内撮影を禁止していますが、その主な理由は、競合企業による価格調査を防ぐためだと考えられます。しかしヨドバシカメラの場合、店頭価格とヨドバシ・ドット・コムの価格は同一であり、その価格情報はネットを通じて顧客のみならず競合企業にも把握されうる状況にありました。
こうした価格運用の前提があったからこそ、同社は店内撮影を解禁できたものと考えられます。
さらに顧客は、価格情報にとどまらず、話題の商品や特徴的なデザインの商品、迫力ある陳列などを自由に撮影し、SNSに投稿することも可能です。個人が撮影した写真がタイムライン上を飛び交う時代において、撮影を禁止している小売企業の店内風景はSNS上にほとんど現れません。これに対し、ヨドバシカメラやダイソーのように撮影を許可している企業は、顧客の自発的な発信を通じて売場の魅力が拡散される仕組みになっていると言えます。
参考記事:鈴木雄高「攻めるダイソーの複数ブランド展開・EC戦略・顧客との共創」(公開日:2026年1月28日)
これは、売場を情報発信の起点として機能させる発想でもあり、オンラインとオフラインの壁をなくそうとする同社の思想とも整合しています。
まとめ
以上見てきたように、ヨドバシカメラの業績の安定と高い収益性の背景には、ヨドバシ・ドット・コムの存在が大きく寄与しています。
同社のEC事業は、単なる販売チャネルの一つとして位置づけられているのではなく、売上規模・成長率・利益貢献のいずれの側面においても、事業の中核を担う基盤へと発展してきました。とりわけ、店舗売上が横ばいに近い推移を示す中で、EC売上が大きく伸長している点は、同社の成長のドライバーがどこにあるのかを端的に示しています。
また、その競争力は、品ぞろえ、検索機能、配送スピード、配送料無料、ポイント還元といった個別機能の強さにとどまりません。自社物流網や在庫管理、基幹システムとECの連動といったインフラを含め、サービス全体が一体として設計されている点にこそ、本質的な強みがあります。
さらに、ヨドバシ・ドット・コムは実店舗と対立する存在ではなく、検索・在庫確認・取り寄せ・配送といった機能を通じて、店舗体験を補完・拡張する役割を果たしてきました。ネットと店舗を分断せず、顧客視点で統合していくという思想が、長年にわたって具体的施策として積み重ねられてきたのです。
成熟市場においては、新規出店や価格競争だけで持続的成長を実現することは困難です。その中でヨドバシカメラは、ECを単なるデジタル施策ではなく、小売業の基盤そのものとして再構築することで、独自の競争優位を築いてきました。
ヨドバシ・ドット・コムの歩みは、EC化の成功事例というだけでなく、リアルとデジタルをいかに接続し、小売業の価値提供を再設計するかという問いに対する、一つの実践的回答といえるでしょう。
【宣伝】ブログでECサイトのSEOを成功させる方法とは?
ここまで記事をお読みいただきありがとうございます。
このメディアを運営する forUSERS株式会社 では、
EC担当者・ライター向けの SEOブログライティング教材 を販売しています。
◆こんなSEOの悩みはありませんか?
✓ ECサイトにSEO対策をしているのにアクセスが伸びない
✓ AIに記事を書かせているが、本当に上位表示できるのか不安
✓ 外注ライターが成果を出してくれない
✓ 自分でSEOブログを書きたいが、何から始めればいいかわからない
そんな方に向けて、
たった 29,800円 で「上位表示を実現するためのSEOブログライティング講座」をご用意しました。
今なら サンプル動画 を無料で視聴できます。
まずは下記リンクから、教材の内容をチェックしてみてください。
◆SEOブログライティング講座



