トライアルが実現する「流通情報革命」:共創とDXで切り拓く小売の新時代
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ディスカウントストア業態の店舗を積極的に出店し続けるトライアルホールディングス(以下、トライアル)は、「流通情報革命」をスローガンに掲げ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を成長の核とするテクノロジーカンパニーとしての地位を確立しています。

本稿では、トライアルの成長の歩みを時系列で追いながら、特に、激安PB商品を強みとした時代から、メーカー・卸との共創を通じた流通全体の最適化へとシフトしたターニングポイント、そして、西友の子会社化によって首都圏での店舗展開と更なるDXの推進に焦点を当てて解説します。

ウォルマートからの学びとIT活用(創業期~2010年代初頭)

トライアルは、同社の創業者で現会長である永田久男氏がコンピューターエンジニアであったことから、早くから小売業にITを活用してきました。IT活用は、いわば同社のDNAとして深く根付いています。

情報出所:gemba「小売業の情報革命を推し進めるトライアルのビジョンとは」(公開日:2018年8月31日、閲覧日:2025年11月20日)

トライアルの経営戦略の根底には、米国のウォルマートの徹底的な研究と模倣があります。

1996年には日本であまり知られていなかったウォルマート型の「スーパーセンター」業態の1号店をオープンしました。スーパーセンターは、食品以外の商品を販売するディスカウントストアと、食品をメインで扱うスーパーマーケットが一体となった、ワンフロアの小売店舗で、広い売場に品揃えされた衣食住の幅広い商品を、1箇所のレジでまとめて購入できる利便性の高さが特徴です。

◆トライアルの主力業態「スーパーセンター」

画像出所:株式会社トライアルカンパニー プレスリリース「日本初!スマートレジカート・スマートカメラを導入した革新的なスーパーマーケットが福岡に誕生!『スーパーセンタートライアル アイランドシティ店』2018年2月14日(水) 8時30分オープン」(公開日:2018年2月13日、閲覧日:2025年11月20日)

ITによる効率化の徹底

顧客の目に触れない部分では、早くからITを利用した業務の機械化、自動化、効率化が推進されてきました。特に、売上データを基にした自動発注システムを構築し、変動の激しい生鮮品などを除き、ほとんどの商品が自動発注される仕組みを導入しています。これにより、店舗従業員は発注作業から解放されました。

また、2010年頃には、現場従業員の業務効率化のため、オペレーション、コミュニケーション、インフォメーションの3機能を持つ自社開発の携帯端末を導入し、最低限の人数での店舗運営を可能にしました。

情報出所:gemba「小売業の情報革命を推し進めるトライアルのビジョンとは」(公開日:2018年8月31日、閲覧日:2025年11月20日)

MD-Linkによるデータ共有基盤の構築

トライアルのIT活用は、単なる店舗の効率化に留まりませんでした。2013年にはデータベースエンジンを自社開発し、「MD-Link」を立ち上げます。

これはウォルマートの「リテールリンク」に着想を得たもので、同社のID-POSデータや在庫データ、営業利益などの情報を、取引先であるメーカーや卸売業者と共有する仕組みとして機能し始めました。

情報出所:日経クロストレンド「140億件のID-POSデータ活用法 トライアルのリテールAI(前編)」(公開日:2019年4月12日、閲覧日:2025年11月24日)

JBPによるNB商品への注力(2016年頃)

2010年代半ば、トライアルは大きな戦略転換を迎えました。それ以前は、59円のポテトチップスや29円の缶コーラなど、激安のPB商品で知られるディスカウント業態でした。

情報出所:INSIGHT NOW!「変わらなければ生き残れない:スーパー・DSの今を読む」(公開日:2010年12月1日、閲覧日:2025年11月26日)

2025年現在も同社の店舗の強みはディスカウント販売にありますが、売場ではPB商品だけでなくナショナルブランド(NB)商品も目立ち、メーカーや卸売業が主導する販促にも力を入れています。

変化の契機となったJBP

この変化の契機となったのは、2016年頃に本格化した「Joint Business Plan(JBP)」です。JBPとは、小売業とメーカー・卸売業者が、販売促進や物流、在庫管理などで共通の目標を掲げ、協力して取り組む仕組みです。トライアルは、JBPを単なる取引の枠にとどめず、小売とメーカー間の壁を取り払い、サプライチェーンの無駄や課題を共に解決するために導入しました。

同社は、MD-Linkを通じて2018年時点で約240社(2024年には270~280社程度)と、ID-POSデータ、在庫データ、営業利益などの情報を共有しました。取引先はこれらのデータを分析し、販促や売場提案を行いました。中でも「カテゴリーキャプテン制度」を採用し、主要メーカーの1社を各カテゴリーのキャプテンとして指名し、カテゴリー全体の売上・利益最大化を目指す提案を任せたことは大きな転換でした。

情報出所:MD NEXT「小売業はマッチングの精度の競争になる」(公開日:2018年6月1日、閲覧日:2025年11月24日)、キャピタルアイ「上場会見:トライアルホールディングス<141A>の亀田社長、デジタルとリアルの体験価値」(公開日:2024年3月21日、閲覧日:2025年11月25日)

カテゴリーキャプテン制度とは、例えば飲料や菓子、スキンケアなどのカテゴリーで、主要メーカーの1社に売場づくりや品ぞろえの提案を任せる仕組みです。キャプテン企業は、トライアルが共有するデータを活用し、自社ブランドだけでなく、カテゴリー全体の成長を目指した提案を行います。

当時、スーパーマーケットでは珍しくない制度でしたが、PB販売を軸としてきたトライアルが、NBメーカーの提案を重視する売場づくりや販促を行うようになったことは、大きな方針転換でした。顧客にとっては、従来の「安さ」に加え、NBメーカーの提案が反映された売場の魅力が加わることになります。

筆者は、JBPの導入とNB重視への戦略転換を、トライアルが単なるディスカウント小売から、「流通業界全体のムダやムラをデータとテクノロジーで解消し、サプライチェーン全体で付加価値を創造する企業」へと変化する、決定的なターニングポイントだったと考えています。

メーカーや卸売業者にとって、トライアルが持つ膨大なデータは貴重であり、JBPによる共創体制が売場のレベル向上と顧客を引きつけることにつながったと見ています。

リテールAIの実装とスマートストアの展開(2018年~2019年)

JBP戦略によってメーカーとの連携基盤を確立した後、トライアルは小売の現場にテクノロジーを本格導入し始めます。背景には、アマゾンのようなデジタルディスラプター(創造的破壊者)の台頭や、AIやIoTがもたらす「第4次産業革命」によって、流通小売業界が大きく変わろうとしていたことへの危機感がありました。

情報出所:gemba「小売業の情報革命を推し進めるトライアルのビジョンとは」(公開日:2018年8月31日、閲覧日:2025年11月20日)

なお、トライアルは全国から注文を受け付けるセンター出荷型のネット通販「トライアルネットストア」と、一部の店舗から出荷する「ネットスーパー」を手がけていますが、リアル店舗でのテクノロジー活用では国内の小売業界で屈指の高水準なのに対し、ECへの注力は控え目に見えます。

このことからも、同社は、アマゾンに代表されるEC事業者の成長を横目でみつつ、自らはEC市場で存在感を高めることよりも、リアル店舗のDXを通じて既存の小売業の価値を根本から変革することに焦点を当てていることがわかります。

2018年以降、同社は、タブレット決済機能を持つショッピングカートや、売場の商品状況をモニタリングするカメラ等が導入された「スマートストア」を、順次、展開していきました。

この頃に出店したスマートストアでは、収益性を確保するための手段としてリテールテクノロジーを導入する姿勢が特徴的でした。例えば、スマートショッピングカートは、レジ待ちのストレス解消という顧客メリットだけでなく、タブレット上で割引クーポンやおすすめ商品情報を表示する「リテールメディア」としても機能し、メーカーの店頭販促と連動することで売上拡大に直接つながっています。

日本初のスマートストア「アイランドシティ店」をオープン(2018年2月)

タブレット決済機能付きの「スマートショッピングカート」(2023年にSkipCartに名称変更)を日本で初導入し、レジ待ち時間の解消に貢献しました。また、合計700台のスマートカメラで、顧客の行動や棚の商品のデータを取得し、分析できる仕組みを構築しました。

◆アイランドシティ店のオープン時に導入されたタブレット決済機能付きカート

情報および画像出所:株式会社トライアルカンパニー プレスリリース「日本初!スマートレジカート・スマートカメラを導入した革新的なスーパーマーケットが福岡に誕生!『スーパーセンタートライアル アイランドシティ店』2018年2月14日(水) 8時30分オープン」(公開日:2018年2月13日、閲覧日:2025年11月20日)

リテールAIの開発・導入を加速するため「Retail AI」を設立(2018年11月)

リテールAI の開発・技術導入を強化するため、エンジニアを抱え、ハードウエア、ソフトウエアを自社開発し、店舗への導入までを一気通貫で対応する態勢を整備しました。

情報出所:リテール・リーダーズ「トライアルのDX最前線『スーパーセンタートライアル長沼店』は何がすごいのか?」(公開日:2020年8月14日、最終更新日:2022年4月12日、閲覧日:2025年11月20日)

新業態「Quick 大野城店」をオープン(2018年12月)

売場の前の顧客の行動や属性、売場内の商品在庫を自動認識するAI冷蔵ショーケースの導入(日本初)、夜間無人化(22時~5時、日本初)の実現に加え、全商品に約1万2000枚の電子プライスカードを設置し、時間経過とともに売価を変更する「ダイナミック・プライシング」を可能にしました。

情報出所:株式会社トライアルカンパニー プレスリリース「3つの日本初!最新リテールAIを実装 トライアル新業態『Quick』、第一店舗目が福岡に誕生!『トライアル Quick 大野城店』2018年12月13日(木) 8時30分オープン」(公開日:2018年12月11日 、閲覧日:2025年11月20日)

「メガセンター トライアル 新宮店」をリニューアルオープン(2019年4月)

同社の旗艦店のひとつである新宮店を、リニューアルによりスマートストア化しました。Retail AIが独自開発した安価なリテールAIカメラ1500台により、低コストで顧客の店内行動や商品動向を把握することが可能になりました。

情報出所:AGENDA Note「九州発『トライアル』の売り場は、デジタルサイネージのブレイクスルーを予感させる」(公開日:2019年7月5日、閲覧日:2025年11月20日)

共創の深化・地域DXへの挑戦・次世代技術の導入(2020年~2024年)

スマートストアの運用実績が積み重なる中で、トライアルはデータ共有の枠組みをさらに拡大し、流通業界全体と地方都市の課題解決に乗り出します。

「リアイル」の立ち上げによる業界構造改革(2020年)

関東初のスマートストアである長沼店を旗艦店として、小売、メーカー、卸、物流、冷蔵ショーケースメーカーの6社が参画する「リテールAIプラットフォームプロジェクト『リアイル』」を発足しました。これは、データ共有によって流通に関わる全てのプレーヤーが協力し、流通業界が抱える約140兆円市場における「ムダ・ムラ・ムリ」を解消し、構造改革を推進することを共通の目的とした取り組みです。

情報出所:株式会社トライアルホールディングス プレスリリース「『スーパーセンタートライアル長沼店』2020年7月3日(金)8時30分 関東初のスマートストアとしてリニューアルオープン」(公開日:2020年7月3日、閲覧日:2025年11月20日)

ムスブ宮若プロジェクト(2020年9月~)

福岡県宮若市との産官学協働により、「リモートワークタウン ムスブ宮若」プロジェクトを立ち上げました。人口減少・高齢化が進む地方都市を舞台に、廃校跡地を利用してAI研究開発拠点「ムスブAI」やIoTデバイス開発拠点「TRIAL IoT Lab」を開設しました。これは、宮若市を巨大な実験場とすることで、小売業が直面する社会課題の解決を目指す取り組みです。

情報出所:Impress Watch「『リモートワークタウン ムスブ宮若』が福岡県で始動。トライアルや九大ら連携」(公開日:2021年8月4日、閲覧日:2025年11月20日)

宮若市での実証実験を通じて、トライアルはさらに高度なDXを実店舗に実装していきます。

自動値下げと顔認証決済(2022年4月)

宮若市との共同事業として「トライアルGO脇田店」をオープンしました。ここでは、売場カメラと電子棚札が連動し、AIがロスが近くなった惣菜・弁当などを自動で値下げする「自動値下げ」を、世界で初めて実現しました。また、酒販売の年齢確認が不要となる24時間顔認証決済が日本で初めて導入され、無人店舗運営に向けた高レベルな省人化を推進しました。

情報出所:株式会社トライアルホールディングス プレスリリース「次世代型スマートストア『トライアルGO脇田店 in みやわかの郷』〜無人店舗運営に向けて省人化・ローコストオペレーションを高レベル化〜4月20日(水)オープン」(公開日:2022年4月20日、閲覧日:2025年11月25日)、キャピタルアイ「上場会見:トライアルホールディングス<141A>の亀田社長、デジタルとリアルの体験価値」(公開日:2024年3月21日、閲覧日:2025年11月25日)

スマートショッピングカート「Skip Cart」の成果

トライアルの売場を象徴するスマートショッピングカート「Skip Cart」は、顧客のレジ待ちストレスを解消することに加え、データ分析により利用者の来店頻度が6.3%向上し、有人レジより約4.2倍効率的であるという具体的な成果を出しています。また、カートのタブレットやアプリを通じて、ID-POSデータに基づく1to1マーケティングを実現しています。

情報出所:ITmediaビジネスONLINE「24期連続増収のスーパー『トライアル』 安さだけではない、納得の成長理由」(公開日:2024年8月30日、閲覧日:2025年11月26日)

◆Skip Cart の概要

画像出所:株式会社トライアルホールディングス「2026年6月期 第1四半期決算説明資料」(2025年11月13日)

実践主義が生んだ「ちょうど良い技術活用」とJBPが育んだ共創精神

長期に渡るトライアルの成長のベースには、創業からのITへの徹底的なコミットメントと、変化を恐れず挑戦し続ける「Fail Fast, Fail Smart(早く失敗し、賢く失敗する)」というマインドセットがあります。

情報出所:gemba「小売業の情報革命を推し進めるトライアルのビジョンとは」(公開日:2018年8月31日、閲覧日:2025年11月20日)

例えば、AIカメラによる商品解析システム開発を中止し、そのノウハウを自動値下げシステムに転用した事例や、最新のビーコン技術ではなく安定性とコストに優れるバーコードをカートの位置把握に採用した事例に見られるように、同社は現実的かつ費用対効果の高い「ちょうど良いテクノロジー活用」を徹底しています。

情報出所:AGENDA Note「九州発・トライアルを支える最新技術から、小売業の『半歩先の未来』が見えた」(公開日:2019年7月12日、閲覧日:2025年11月20日)、株式会社トライアルホールディングス公式サイト「生成AIは小売をどう変えるか? トライアル流 新しいテクノロジーとの向き合い方(前編)」(公開日:2024年1月12日、閲覧日:2025年11月26日)

しかし、最も重要なのは、JBPへの戦略転換で培われた「共創」の精神でしょう。取引先のメーカーや卸売業と利益を奪い合うのではなく、データとシステムを共有し、協力し合う取組みを推進することで、サプライチェーン全体の最適化が可能となりました。この共創の枠組みが、AIカメラやスマートショッピングカートなどを通じて得られた膨大なデータを実務に活用するための強力な基盤となっているのです。

情報出所:gemba「トライアルの最新スマートストアに学ぶIT活用――小売業こそがマーケティングの最前線?」(公開日:2018年9月11日、閲覧日:2025年11月20日)

トライアルによる西友買収――次世代小売モデルの展望と課題

2025年に入り、トライアルホールディングスが一時代を築いた西友を買収すると発表したことは、流通業界全体にとって大きな衝撃となりました。この買収は、トライアルが築き上げてきたDXとローコストオペレーションの知見を、西友が持つ首都圏の強固な店舗網と統合し、新たな小売モデルを確立するための極めて戦略的な一手だと考えられます。

西友買収による4つの期待

西友買収後の事業展開で期待されることは、主に以下の3点です。

期待1 都市型小型店舗の確立

トライアルは、福岡で実験を重ねてきた都市型小型店舗「TRIAL GO」を2025年11月に首都圏に初出店しました。

◆首都圏に初出店した「TRIAL GO」(西荻窪北店)

画像出所:筆者が2025年11月21日に撮影。

TRIAL GOは、約50坪というコンビニサイズの店舗で、顔認証決済や遠隔での酒類年齢確認など、トライアルのテクノロジーをフル活用することで、1日30人時という極めて低いコストで24時間営業を実現する「次世代ローコスト小売モデル」です。

情報出所:リテール・リーダーズ「TRIAL GO(トライアルゴー)が11月7日に首都圏初出店、福岡で実験を重ねた都市型小型の『次世代ローコスト小売モデル』」(公開日:2025年11月10日、更新日:2025年11月11日、閲覧日:2025年11月24日)

顔認証決済は、一度登録してしまえば、以後は財布もアプリも使わずに、「自分の顔一つで決済ができてしまう優れもの」です。

◆顔認証による決済が可能なTRIAL GOのレジ

情報及び画像出所:くらしトライ「“安くて便利”がグッと身近に!今、注目の『トライアルGO』とは」(公開日:2025年11月7日、閲覧日:2025年11月27日)

西友の店舗は、トライアルがこれまで手薄だった都市部や首都圏に集中しています。TRIAL GOの店舗を西友店舗の周辺に惑星のように配置することで、西友の店舗で製造されたできたての総菜や弁当をTRIAL GOに配送することが可能になります。食品加工設備を持たない小型店舗で、できたてのおいしい食品を提供できれば、都市部の顧客から高い支持を得られるでしょう。

期待2 食のバリューチェーン最適化とシナジー

TRIAL GOの店舗では、西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」の一部を取り扱っているほか、惣菜の供給において、近隣の西友の製造設備のある店舗と、トライアルの既存のプロセスセンター(食品の加工・盛付・仕分けまでを一体で担う製造・物流拠点)を、商品ごとに使い分けています。

トライアルは惣菜子会社を傘下に持ち、データに基づく科学的な知見と職人監修を融合させています。西友の既存の食品加工・製造インフラとトライアルのDX技術が融合することで、首都圏において「出来たてのおいしい食」を、高頻度かつ低コストで提供する新たな中食モデルが確立されることが期待されます。

情報出所:リテール・リーダーズ「TRIAL GO(トライアルゴー)が11月7日に首都圏初出店、福岡で実験を重ねた都市型小型の『次世代ローコスト小売モデル』」(公開日:2025年11月10日、更新日:2025年11月11日、閲覧日:2025年11月24日)

期待3 リテールメディアの価値最大化

トライアルはMD-Linkやスマートショッピングカート、売場に設置されたデジタルサイネージなどを通じて、メーカーにデータとプロモーションの機会を提供してきました。西友の巨大な購買データと顧客基盤を得ることで、トライアルがメーカーに提供できるデータの網羅性はさらに高まります。これにより、メーカーがトライアルや西友の店頭で、顧客に直接アプローチできるリテールメディアの価値は、より大きなものになるでしょう。

期待4 トライアルと西友の長所を持った新タイプ店舗

西友が子会社となった当初から登場が期待されていた、両社の持ち味を併せ持った新しいタイプの店舗が、2025年11月28日、東京都小平市に「トライアル西友 花小金井店」としてオープンします(本稿執筆時点では開店前)。

トライアル西友花小金井店

画像出所:くらしトライ「買い物がもっとワクワクに!『トライアル西友 花小金井店』がグランドオープン」(公開日:2025年11月21日、閲覧日:2025年11月27日)

西友花小金井店を改装して新たにオープンする同店では、トライアル寄りの低価格で商品を販売し、スマートショッピングカート「SkipCart」も導入されます。その一方で、店舗運営方法は両社が共同で検討し、相互のPB商品を導入するということです。

情報出所:流通ニュース「トライアルHD/東京都小平市にトライアル・西友初の複合店11/28オープン」(公開日:2025年10月22日、閲覧日:2025年11月27日)

個性の異なるトライアルと西友の強みを融合した新タイプ店舗「トライアル西友」は、競合他社にはない独自の魅力を発揮する可能性があります。

トライアルに今後想定される4つの課題

西友の買収は、トライアルの更なる成長をドライブする要素となりえますが、同時に課題も想定されます。

課題1 西友へのテクノロジー導入コストと運用負荷

今後、トライアルのリテールテクノロジーを西友の既存店舗に導入する可能性が高いですが、それに伴って生じる負荷には注意が必要です。システム統合のコストなどが必要になることに加え、店舗の従業員の教育や運用フローの変更も伴います。

課題2 既存の顧客体験との調整

西友の店舗にリテールテクノロジーを導入し、顧客の利便性の向上を果たしたとしても、従来の買物スタイルからの変更を好まない顧客も存在します。トライアル流の店舗運営に対する、西友の既存顧客の受け入れを慎重に考える必要があります。

課題3 首都圏におけるTRIAL GOの運営

首都圏のTRIAL GOの店舗で扱う弁当や総菜は、郊外のプロセスセンターや近隣の西友店舗で製造したものを店舗に配送します。首都圏のTRIAL GOの店舗数が増えた場合、今後、店舗数の大幅な増加は見込めない西友の店舗での製造や配送の負荷が大きくなります。

さらに、首都圏には、小型スーパーマーケットの「まいばすけっと」や、コンビニエンスストア(セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンなど)、弁当チェーン(ほっともっと、オリジン弁当など)といった競合店が数多く存在します。TRIAL GOは単品の安さで競合を上回るとしても、価格以外の要素を重視する顧客は他店舗を利用する可能性があり、首都圏における消費者の需要を巡る競争は一層激しくなると想定されます。

課題4 ネットスーパーに対する向き合い方

これまでのところ、トライアルはネットスーパー事業の積極展開には慎重な姿勢のように見えます。一方で、西友は、国内でも最初期にネットスーパー事業を立ち上げた企業であり、現在も同事業に取り組んでいます。

顧客のネットスーパーに対するニーズが高まった時、トライアルがネットスーパーに本格的に取り組むことになる可能性がありますが、黒字化は容易ではありません。取り組みを強化する場合、西友が持つネットスーパーのノウハウを、同社グループ全体で活用できるかどうかが成功のカギとなるでしょう。

参考1 25周年を迎えた西友「ネットスーパー」4つの転換期
https://ecact.jp/seiyu_netsuper/

参考2 Green Beansとイオンネットスーパーの比較で知るイオンのねらい
https://ecact.jp/aeon-netsuper/

まとめ

トライアルは、IT活用とJBPによる共創を強みに、全国にディスカウントストア業態の店舗を展開し、流通全体の最適化を推進する企業へと成長してきました。スマートストアに象徴される同社のリテールテクノロジーは、低コスト運営と高度なデータ活用を「当たり前」に変えつつあります。

同社は以前から、流通業界においてITを強みに持つユニークな企業として知られてきましたが、株式上場、西友の買収、首都圏への次世代型店舗の出店などにより、業界内外からの注目度は一層高まっています。今や、トライアルは、流通業界のゲームチェンジャーとしての存在感を鮮明にしつつあります。

同社は西友の買収によって首都圏での展開やリテールメディアの拡大が期待される一方で、各種のコストや負荷の高まり、配送などの体制整備などの課題も存在します。

今後、同社には、機会を活かしつつ、課題を着実に解消し、次世代小売モデルを展開していくことが期待されます。

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