ホームセンターのEC強化が急速に進んでおります。
もともとホームセンターにおいてEC利用はそれほど進んでおらず、業界のEC化率は、2022年のBtoC物販分野の国内EC化率である9.13%を下回ると見られております。
しかし、コロナ禍による「巣ごもり需要」により、ホームセンターの利用が急増し、横ばいだった市場規模は拡大の兆しを見せてきました。
そんな中で、各社はECの強化を急ピッチで進めており、店舗数を活かしたオムニチャネルを中心に様々な施策を展開しております。
本日は、forUSERS株式会社でコンサルをしている筆者が、ホームセンター業界のECサイトについて詳しく解説いたしますので、是非ご参考ください。
ホームセンター業界の市場規模とEC化率
まずはホームセンター業界の市場規模を見てみましょう。下記グラフは、経済産業省の商業動態統計(2023年6月発表)によるホームセンター業界における市場規模推移になります。
◆国内ホームセンター市場規模推移
年 | 市場規模(販売額) |
2014年 | 3兆3,451億円 |
2015年 | 3兆3,012億円 |
2016年 | 3兆3,090億円 |
2017年 | 3兆2,941億円 |
2018年 | 3兆2,853億円 |
2019年 | 3兆2,747億円 |
2020年 | 3兆4,963億円 |
2021年 | 3兆3,904億円 |
2022年 | 3兆3,420億円 |
データ引用:商業動態統計 時系列データ(経済産業省)よりグラフ作成
これを見ると、ホームセンター業界の市場は3兆円を超える規模で横ばいに推移しておりましたが、コロナ禍の2020年には市場規模が拡大し、3兆4,963億円にのぼりました。
2020年の急激な成長要因は、マスクやアルコール、またビニールシートやアクリル板などのコロナ関連商品の需要増、また、ガーデニングやDIY関連商品の巣ごもり需要によるものと考えられます。
加えて、ホームセンター特有の店舗の広さによりソーシャルディスタンスを保ちやすかったことも要因のひとつと見られております。
2021年からはコロナ特需の反動により減少に推移したものの、コロナ禍以前を上回る市場規模となっております。
ホームセンター業界のEC化率
ホームセンター業界全体のEC化率は不明でしたが、経済産業省の発表による2022年のBtoC物販分野の国内EC化率である9.13%よりも低いと見られております。
実際に、全国に1,216店舗を展開するホームセンター大手の「コメリ」の2023年3月期のEC化率が5.6%であり、同じく業界大手の「コーナン」も、2025年までにEC化率を5.5~10%に到達させることを中期目標として据えていることからも、業界全体のEC化率は概ね5~6%程度に留まるかと考えられます。
参考:株式会社コメリ 2023年3月期 決算説明資料、コーナン商事 第3次中期経営計画発表 2025年度売上高5000億円(DCSオンライン)
しかし、物販業界全体ではEC利用が進み、下記表の通り、2022年は物販ECにおけるすべてのジャンルの市場が拡大しており、今後も引き続き拡大傾向に推移することは間違いないと見られております。
◆物販系分野のBtoC-EC市場規模(2021年-2022年比較)
ホームセンター業界においても、大手各社のEC強化の動きが強まっており、EC市場は拡大傾向に推移していると考えられます。
巣ごもりをきっかけに加速するEC需要
コロナ禍における「巣ごもり」は、消費者の目を改めて“家の中”に向けることになりました。事実、自粛期間中において、ホームセンターでは、インテリア、DIY関連、ペット関連、ガーデニング・家庭菜園といった商品ジャンルが大きく売上を伸ばし、これらを中心に今後もホームセンターの需要が高まっていくと見られております。
しかし、ホームセンターは取り扱う商品が大小多岐にわたるため、ある程度の売り場面積が必要になることから、広い土地を確保できる郊外に店舗があることが多く、また、持ち運びが大変な大型の商品も多く扱っていることから、首都圏、特に都心に住む消費者がホームセンターを利用するには、時間や車などの「条件」が出てきてしまいます。
そのため、今後のホームセンター業界においてEC利用率を高めることは必須であり、各社ともECの強化に着手しているのです。
導入が進むホームセンター業界のEC施策
コロナ禍においてユーザーの消費行動が変化し、物販分野全体でEC利用が進んでいく中で、外出自粛によるDIYなどのおうち関連の需要が高まっております。
そのためEC化率の低いホームセンター業界では、大手をはじめとして各社でEC施策強化への取り組みが目立ってきております。
EC強化の軸はオムニチャネル施策
先に述べた通り、ホームセンター業界の市場は横ばいではあるものの堅調に推移しており、店舗数も右肩上がりに拡大しているため、拡大傾向の市場と見ることもできます。
◆ホームセンター業界の年間総売上と店舗数推移
グラフ引用:年間総売上高とホームセンター数の推移(推計値)
このような背景において、EC強化の軸に、店舗数を生かしたオムニチャネル施策を積極的に導入する動きが強まっております。
「コーナン」はオムニチャネル施策に特に力を入れている企業のひとつです。2022年10月にリニューアルした自社ECサイト「コーナンeショップ」ではオムニチャネルを軸に、店舗とECの相互送客を意識したサイトになっております。
ECサイトやアプリ上でマイストア登録することで、最寄りの店舗の新着情報やチラシを確認することができます。また、アプリ限定で店舗で使用できるクーポンを発行するなどして、実店舗への来店を促しております。
一方、店舗の方では、筆者が実際に最寄りのコーナンへ行ってみると、下記のように店内POPにてECサイトやアプリの利用を促しており、店舗とEC双方で送客に注力していることがわかりました。
◆コーナンの店内POP
また、「カインズ」でも2020年2月にアプリを刷新し、在庫連携や売り場表示機能の導入、さらに店舗取り置きサービスの実施など、徹底したオムニチャネル施策を推進しております。
◆カインズのオムニチャネル施策例
下記の記事によると、カインズのECサイトのユーザー数は2020年3月以降に急増しているとの調査結果が出ております。これはコロナ禍の影響もあるでしょうが、2月のEC刷新が功を奏した部分が大きいと筆者は考えます。
そのほか、「コメリ」でも全国1,215の店舗数を活かして、各店舗に専用端末を設置し、店頭からECで注文して商品を取り寄せることができるサービスや、ECサイトで購入した商品を店頭で受け取れるサービスを展開しております。
このように、各地に店舗を構えるホームセンターでは、その利点を活かし、ECと店舗の連携によるオムニチャネル施策を軸にECの利用を促進しております。
集客やリピーターの育成にSNSを活用
BtoC-ECにおいてほぼ共通して言えることですが、ECの強化に努める企業やブランドは、SNS施策においても同様に注力しております。
なぜなら、スマートフォンの普及とともにユーザーの情報収集がSNS中心となり、SNSの情報をもとに商品の購入を決める消費者が増えたことで、ECへの集客とリピーター育成にSNSが最適なツールとなっているからです。
人気のホームセンターではやはりSNS施策にも力を入れており、業界大手の中でも特にInstagramのフォロワー数が多い「カインズ」(@cainz_official:フォロワー約40万人)や「ハンズ」(@tokyuhandsinc:フォロワー約26万人※)のアカウントを見ると、多種多様な商品を扱うホームセンターならではのバラエティ感があり、見ていて楽しい印象があります。
※2022年12月アカウント移行にてフォロワー誘導中(新アカウントは2023年9月現在フォロワー約3万人)
◆カインズ・ハンズのInstagramアカウント
両アカウントに共通するのが、直接的な商品の宣伝ではなく、商品を使った暮らしの知恵などを紹介する、お役立ちコンテンツとしてのコンセプトで運営されているアカウントであることがわかります。
企業のInstagram施策において、このようにコンセプトを徹底して世界観を醸成することはブランディングの観点からも非常に重要で、ユーザーからもより好まれます。
また、「コーナン」ではLINE@を活用して、各種新着情報や店舗限定のクーポンの配布を行っております。
◆コーナンの公式LINEアカウント
このように、今や世代を問わず多くの人が使用しているSNSは、ECと連携しながら大きな販売チャネルのひとつとして、物販業界全体で活用されているツールです。
専門サイトで特定のターゲットに訴求
ホームセンターは、扱う商品の種類が極めて多岐にわたるため、ECサイトで目的の商品にたどり着くのに苦労するユーザーも少なくはありません。
そのため各社は、検索を目的別やロケーション別にしたり、また特集を組むなどして商品検索のしやすさを追求しておりますが、「コメリ」では商品ジャンルを大きく分け、複数の専門特化サイトをkomeri.comドメイン配下に設けることで商品の検索性を高めております。
◆コメリの専門サイト
コメリリフォーム => 内外装リフォーム全般専門
レンガ.pro => レンガおよび関連道具専門
住急番 => 便利屋・代行サービス専門
灯油宅配 => 灯油配達サービス専門
庭木.jp => ガーデニング・家庭菜園専門
このように、目的別にサイトを分けることで、ターゲットとなるユーザーにピンポイントでアプローチできますし、掲載商品が絞られ目的の商品にたどり着きやすくなるためコンバージョン率も高まるといったメリットがあります。
コメリの場合は、それぞれに専用のサービス名やロゴを作ることで、ブランディングの面でも非常に効果的だと言えます。
オウンドメディアで商品の魅力を伝える
ECサイトで集客する際にSNSが有用であることは前項でも述べましたが、SNSは情報が流動的である点で、短期的な集客に向いた施策と言えます。一方でオウンドメディアは、地道に続けることで情報が蓄積され、それに応じて効果が出てくる点から、中長期的な集客施策と言えるでしょう。
「カインズ」では、「となりのカインズさん」というメディアを運営しており、DIYや生活に役立つ情報を中心に様々な情報を発信しております。読み物だけではなく動画コンテンツも用意されております。
また、関東・関西を中心に店舗を展開する「ロイヤルホームセンター」でも、ECサイト内でオウンドメディア「DIY Clip!」を運営しております。こちらも、「カーテンの測り方」や「玄関の苔の取り方」「無垢材の種類」など、一般消費者の目線に立った暮らしの知恵からDIYのテクニックなど様々な情報を発信しております。
上記各メディアとも、記事内で紹介した商品は販売ページに直接リンクされておりますが、いずれも「集客」という本来の目的以上に、コンテンツの内容が魅力的な「体験」と「知見」に溢れており、ユーザーの役に立つ情報メディアとして成立しております。
このことは、SEO的にも非常に効果が高く、そのような意味でもホームセンターECはオウンドメディアに相性が良いと筆者は考えます。
コーナンは独自電子マネーで顧客の囲い込みへ
「コーナン」を展開するコーナン商事は、業界でもひと際デジタル施策を推進しておりますが、2019年4月より、独自のプリペイド式電子マネー「コーナンPay」が導入されました。
コーナンPayは、年間購入金額に応じて還元率が変化するランクアップ方式になっており、販売促進や優良顧客の育成にもつながっております。
このような、自社ブランドや店舗内のみで利用可能なハウス電子マネーは、導入コストのかかる施策ではありますが、少額決済が多く来店頻度の高いホームセンターにも向いており、顧客の囲い込みに大きな効果を発揮します。
ホームセンター業界では急ピッチでEC強化が進んでいる
ホームセンター業界のEC化率は、大手のEC化率を鑑みても、恐らく5~6%程度と見られ、決してEC利用が進んでいる市場ではありません。
しかし、今回記事を書くにあたって調査したところ、大手各社のECサイトやアプリは急ピッチで強化・リニューアルが進んでおり、SNS連携やオムニチャネル施策も積極的に取り組まれていることがわかりました。
コロナ禍をきっかけに、物販業界においてホームセンターはその存在感を大きくしました。今後より需要が高まる中で、各社でECの強化が進み、業界のDX化も推進されていくことが予想されます。コーナン商事のように越境ECに参入する企業も増えてくるのではないでしょうか。
筆者の予想ですが、今後各ホームセンターで「ライブコマース」がトレンドになってくるのではないでしょうか。ホームセンターと言えば“実演販売”ですから、ライブコマースに非常に相性が良い業界であることは間違いないでしょう。
自社ECサイトを構築するなら「futureshop(フューチャーショップ)」が良い理由
もし、新規事業で「自社ECサイト」を構築するならfutureshop(フィーチャーショップ)にすべきでしょう。なぜなら、注文を増やすための多くの仕組みが基本機能として、多数実装されているからです。
◆futureshop(フィーチャーショップ)で注文を増やす機能の例
・カートインから決済までたった3ステップ!
・会員ログイン状態保持機能が延長可能!
・自由度の高い画面レイアウト!
・注文履歴から、思わず再注文したくなる画面デザイン
カートシステムの導入を考えているなら、間違いなく筆者はfuturshopをおススメします。私だけでなく、EC関係者からも最も評判の良いカートシステムであり、売上を増やすための細かい機能が数多く実装されており、EC業界で花形のアパレル業界で、多く利用されているECプラットフォームでもあります。日用品から園芸品、家具などはもちろん、小売業のネットショップ全般にfutureshopは最適です。
futurshop(フィーチャーショップ)は、以下の公式ホームページから資料をダウンロードことができるので、ECサイトの構築を検討する方は、まずは資料を取り寄せてみましょう。