急伸長する「ファンケルのEC」マーケティング戦略とは?

無添加化粧品・健康食品のパイオニアとして40年以上の歴史を持つファンケル。同社のEC事業は、単なる販売チャネルを超えて年々進化しています。

2024年3月期には通信販売売上が571億円を突破しました。この成功の背景には、D2Cモデルを軸とした戦略的なECマーケティングがあります。

本記事では、ファンケルが実践するECマーケティング戦略について解説します。

ファンケルのEC戦略全体像と成長背景

ファンケルのEC戦略の土台にあるのは、40年にわたる通信販売の知見です。無添加化粧品・健康食品に特化し、製品開発から販売まで一貫して自社で取り扱っています。

同社の理念は「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」です。この信念に基づき、顧客との長期的な関係性構築を重視しながら、一人ひとりに合った良質な製品を届けています。

ここでは以下の内容について解説します。

D2Cモデルによる垂直統合戦略

ファンケルは、顧客視点を貫く垂直統合型のD2Cモデルを採用しています。その結果、2024年3月期の業績は非常に好調でした。

◆2020年3月期(2019年度)からの連結売上高の変化

年度 連結売上高 前年比 通信販売売上高 前年比 営業利益 前年比
2020年3月期 1,268億円 0.035 141億円 0.14
2021年3月期 1,149億円 -9.40% 116億円 -18.00%
2022年3月期 1,040億円 -9.50% 98億円 -15.60%
2023年3月期 1,036億円 -0.40% 543億円 78億円 -19.70%
2024年3月期 1,109億円 0.07 571億円 0.052 126億円 0.603

注:2022年3月期より収益認識基準を適用。通信販売売上高は2023年3月期から開示

連結売上高は1,108億8,100万円で前期比7.0%増、そのうち通信販売売上高は571億3,200万円で前期比5.2%増となっています。営業利益は125億7,000万円で前期比60.3%増を記録しました。

◆決算資料から見える通販売上割合の変化

参照:ファンケルグループ 2024年3月期決算資料

また、通販の売上比率については過去のデータとも比較が可能です。コロナ前は約4割でしたが、2024年3月期には約5割に拡大しています。これは、ファンケルによる戦略的なチャネルシフトの結果だと考えられるでしょう。

EC売上急伸における3つの要因分析

ファンケルのEC売上が急伸した背景には、複数の戦略的要因が作用しています。

この成長の背景には、以下の3つの観点があると考えられます。

それぞれ説明します。

要因①休眠顧客へ3倍の効果をもたらしたパーソナライズドCRM

まず、データドリブンなCRM(顧客関係管理)の高度化があげられます。ファンケルでは「一人ひとりのお客様と信頼関係を築く」ことを重視し、高度なパーソナライゼーション技術を活用した施策を展開しています。

特に目立つ施策としては、大日本印刷株式会社と協力して実装した休眠直前顧客へのパーソナライズドDM施策が挙げられるでしょう。

◆ファンケルのパーソナライズドDM施策

参照:従来のDMと比べて効果が約3倍に!休眠直前のお客さま一人ひとりに合わせたパーソナライズドDM施策で、再購入率の大幅な向上に成功。 | 導入事例 | ソリューション/製品・サービス | DNP 大日本印刷

ファンケルは、顧客の過去購入商品と購買頻度を分析し、未購入要因をクラス分けした上で、数十パターンのコンテンツを自動生成しました。そのデータを元にDMの送付をおこなった結果、従来のDMと比べて効果を約3倍に向上させることに成功したと言います。

顧客一人ひとりの「今、必要な物」を明確にして直接知らせるこの手法は、化粧品や健康食品を取り扱う同社にとって、確かに理想的な販売手法であるといえるでしょう。

要因②アプリ統合によるOMO施策の推進

第二の要因として、OMO(Online Merges with Offline)施策の推進も見逃せません。2021年に発表された中期経営計画で重点項目に位置づけられて以降、ファンケルは「ファンケルらしいOMOの推進」を掲げ、さまざまな取り組みをおこなっています。

たとえばスマホアプリもその一例です。

従来ファンケルの公式アプリと言えば、ECサイト「お買い物アプリ」と店舗サービス用の「メンバーズアプリ」の2種類でした。しかし同社は2021年にこの2つのアプリを統合し、「FANCLメンバーズアプリ」として一本化しました。

顧客は1つのアプリでECでの買い物と店舗でのカウンセリング予約の両方が可能になったのです

また、初めにいくつかのアンケートに回答してもらうことで、パーソナライズドされたホーム画面を実現しました。顧客ごとに「あなたにおすすめ」の商品が真っ先に表示される仕様です。

◆メンバーズアプリの利用画面

実際の画面のキャプチャーを筆者撮影

さらにアプリからは「AIパーソナル肌分析」などのサービスも利用できるようになっています。

◆実際のAIパーソナル肌分析の画面

筆者が実際に利用してみた結果画面のスクリーンショット

こういったOMO推進の結果、ファンケルでは「両チャネル併用のお客様は継続購入率、LTVが高い」ことがデータでも検証されています。

◆2020年度に大きく実績を伸ばしたOMO施策

引用:2021年5月開催「ファンケルグループ決算説明会」資料より

つまり、ECと店舗の両方を利用する顧客は、より長期間にわたって商品を購入し続ける傾向があると判明したのです。

この知見をもとに、ファンケルではECユーザーを店舗に誘導し、店舗ユーザーをECに誘導する相互送客施策を強化しています。

要因③ECモール推進部新設による外部チャネル強化

第三の要因は、外部ECモールの戦略的活用です。ファンケルは2021年1月に「ECモール推進部」を新設しました。組織的にモール戦略を強化した結果が順調に表れてきています。

従来ファンケルは自社ECサイト「ファンケルオンライン」での直販を中心としており、楽天市場やAmazonといった外部ECモールへの出店は限定的でした。しかしその結果、新規顧客獲得の頭打ちという課題に直面していました。

そこで専門部署「ECモール推進部」を新設し、外部ECモールでの販売を本格化。ただしこれは単純に商品を出品するという意味ではありません。ファンケルが重視したのは「収益性の高い公式店」としての展開です。

◆ファンケルの外部ECの強み

引用:2020年開催「ファンケルグループ決算説明会」資料より

ファンケルが外部ECを採用する際に重視したのは、以下の3つの条件です。

  • 外部連携が容易な通販システムの構築
  • 入荷から発送までのフルフィルメント体制の整備
  • 広告・販促などの通販ノウハウの活用

これにより自社ECと同等の顧客体験をモール上でも提供できるようになりました。

さらにファンケルは、ECモールで獲得した顧客情報を自社システムと統合し、顧客階層分析や併売商品分析を実施しています。これにより外部ECモールを単なる販路拡大ではなく、データ活用による収益最大化の場としても活用しているのです

データ活用で実現する3つのパーソナライゼーション戦略

ファンケルの競争優位性を支えるのは、顧客データを活用したパーソナライゼーション戦略です。

同社は2021年にデータ統合基盤「FIT」を刷新し、顧客理解を深化させる戦略的インフラを構築しました。重要なのは高額なシステム投資ではありません。データをどう活用して顧客価値を創造するかという発想の転換なのです。

ここからは、以下について解説します。

戦略①「お悩みDB」でカロリミットのアプローチを美容重視に転換

ファンケルとJSOLが共同で構築した「お悩みDB」は革新的な取り組みとなりました。

これは美と健康に関する消費者の困りごとをデータベース化し、購入商品、検索・アクセス行動、口コミなどから消費者の潜在的ニーズを類推するシステムです。

最も象徴的な成果事例といえば、「カロリミット」のマーケティング転換でしょう。

◆もはやダイエット食品の枠を飛び越えたカロリミット

参照:カロリミット公式LPより

カロリミットは糖質や脂質の吸収を抑えるダイエットサプリメントで、従来は「ダイエット効果」を前面に出したクリエイティブでプロモーションをおこなっていました。

しかし、お悩みDBの分析により、購入者の多くが「美容・健康維持目的」で商品を選んでいることがわかりました。ダイエットそのものが目的ではなく、美しくなりたい、健康でありたいという動機で購入している顧客が多いことが判明したのです

この知見を受けて、ファンケルはマーケティングアプローチを大幅に変更しました。「ダイエット」から「美容・健康」を前面に押し出したクリエイティブに転換したのです。

この事例は、表面的な購買行動だけでなく、顧客の深層心理を読み解くデータ活用の重要性を示しているといえるでしょう。

戦略②MA活用による160以上の自動レコメンド施策

ファンケルは2009年からレコメンドエンジン「Rtoaster」を導入しています。同システムの特徴は、30以上の自動レコメンドと160以上のルールベース施策を運用可能である点です。

◆Rtoasterの活用事例

引用:株式会社ファンケル | お客様の声・導入事例 | Rtoaster (アールトースター)

中でも特徴的なのは顧客のセグメント別アプローチです。購入回数に応じてライト・ミドル・ヘビーの3つに顧客を分類し、それぞれに最適なコンテンツを出し分けています。

たとえばライト顧客にはお試し商品や基本的な商品情報を表示し、ミドル顧客には関連商品のクロスセル提案をおこないます。ヘビー顧客には新商品情報や限定商品の案内を優先的に表示するのです。

また、特に大きな成果を上げているのは、「カートに商品を入れた後に購入に至らなかった顧客」に対する施策です。

このシステムでは、顧客の閲覧履歴と類似顧客の購買パターンを分析し、最適な商品を提案しています。この施策により、コンバージョン率が最大で約110%、購入単価が最大で約130%に向上する効果を実現しています。

戦略③EC×店舗のデータ統合で見えたクロスチャネル顧客の高LTV

ファンケルのデータ活用で最も重要な発見が、クロスチャネル顧客の特性です。ECサイトと実店舗の両方を利用する顧客について詳細な分析をおこなった結果、単一チャネル利用者との明確な違いが判明しました。

クロスチャネル顧客は継続購入率とLTVが大幅に高いことが検証されており、1回あたりの購入金額も高い傾向にあることがわかりました。

この知見を受けて、ファンケルは積極的な相互送客施策を展開しています。ECで化粧品を購入した顧客には店舗での肌カウンセリングを案内し、店舗で商品を購入した顧客にはECでの定期購入やまとめ買いを提案しています

さらに効果的なのが、統合されたメンバーズアプリを活用して、ECでの購買履歴を店舗スタッフが確認できるシステムです。これにより店舗での接客時に「前回お買い求めの商品はいかがでしたか」といった個別対応が可能になり、顧客満足度の向上につながっています。

シニア層向けEC戦略成功3つの秘訣

ファンケルのEC戦略で特に注目すべきは60代以上のシニア層への包括的アプローチです。

多くのEC事業者がシニア層対応に苦戦する中、ファンケルは商品開発からUI設計まで一貫した戦略で成果を上げています。

秘訣①熟年女性特化パッケージ:「ビューティーブーケ」は計画比18%増

ファンケルが2016年10月に発売した60代以上向け化粧品「ビューティブーケ」。この商品の特徴は、熟年層の身体的変化を徹底的に考慮したパッケージ設計にあります。

◆ビューティーブーケの特徴的なボトル

引用:ビューティブーケ – ブランドサイト | ファンケルオンライン

最大の特徴は、容器の角を丸い形状にし、指をかけやすい設計を採用した点です。さらに使用順序が一目でわかるよう容器に大きな数字を表示し、文字サイズも通常の1.5倍に拡大しています。

マーケティング面では「マチュア世代」という考え方に則り、主に60代以降の女性を「美容と健康の両方に意識が高い層」として位置づけました。

この結果、発売当初は購入者の7割が新規顧客となり、計画比18%増の好調な滑り出しを記録しています。

秘訣②シニア向けUI設計:文字サイズ1.5倍化と44px以上ボタンの配置

ファンケルのECサイトおよびアプリでは、シニア層に配慮したUI設計を取り入れ、継続的に改善しています。

◆ファンケル公式Webサイトの画面

引用:ファンケルオンライントップページ

文字サイズは標準の1.5倍に拡大し、行間も広めに設計されています。また、色彩設計においても、白背景に黒文字を基本とし、クリックする箇所は青文字にするなど、直感的に操作できるよう工夫されています。

ボタンについても、押しやすいよう最小44px以上のサイズを採用している点が特徴です。スマートフォンでは画面下部に主要なボタンを配置し、指一本でも操作しやすい設計がされています。

秘訣③段階的デジタル誘導:情報誌→メルマガ→LINE→アプリ

ファンケルのシニア層戦略で最も巧妙なのが、デジタルリテラシーに応じた段階的な顧客誘導です。

まず40代・50代中心の情報誌『エスポワール』で信頼関係の構築を図っています。これは単なる情報誌としての役割がメインであり、直接購買行動に結びつけるような仕組みはほとんどありません。

次にメルマガで定期的な情報配信をおこない、さらにLINE公式アカウントで気軽な問い合わせ対応を提供します。最終的にメンバーズアプリで能動的なコミュニケーションの場を提供することで、本格的な「自社のファン」になってもらうことを目指しているのです。

重要なのは、これらの媒体を重複利用する顧客ほど購入率や購入単価が高いことです。段階的に距離を縮めていくことで、顧客のブランドへの信頼度が着実に高まっていくのでしょう。

オウンドメディア「FANCL CLIP」が果たす3つの役割

ファンケルのコンテンツマーケティング戦略の核となるのがオウンドメディア「FANCL CLIP」です。

このメディアの運用によって、単一媒体に依存しない多面的コミュニケーションを展開しています。

このFANCL CLIPは、以下の3つの役割を果たしています。

それぞれ説明します。

役割①ECサイトのコミュニケーション化|購入以外の価値提供

2021年3月、ファンケルはオウンドメディア「FANCL CLIP」を開設しました。それまでは「購入するためだけの場」だったECサイトを「コミュニケーションの場」へと進化させることが目的です

◆幅広い情報を提供するオウンドメディア「FANCL CLIP」

参照:FANCL CLIP │ 美容と健康の旬な情報をお届け♪

従来の通販は紙媒体の情報誌が主体でしたが、制作に4~5ヵ月かかるため、トレンドや顧客のリアルタイムな需要に対応できませんでした。

そこでファンケルは情報コミュニケーションを「紙起点」から「Web起点」へと転換しました。購買タイミング以外でもつい訪れたくなるメディアとしてFANCL CLIPを構築したのです

結果、同社はLTVを約3倍に向上させることに成功しました。ECサイトを顧客との継続的なコミュニケーション基盤へと進化させることによって、長期的な価値創出を実現したといえるでしょう。

役割②参加型コンテンツによるエンゲージメント創出

FANCL CLIPの中でも特に人気を集めているのは「イベント」カテゴリーのコンテンツです。

◆参加型コンテンツの一例「花の手帳デザインアンケート」

参照:【2025年11月号花の手帳】デザインアンケート! | イベント | FANCL CLIP

このカテゴリーでは、商品モニターの募集や、インセンティブ品に関するデザインアンケートの実施など、顧客からの反応を直接受け取れる仕組み構築されています。

主要な参加型コンテンツとしては、以下のようなものが挙げられます。

  • 商品モニターの募集
  • インセンティブ品のデザインアンケート 
  • ファンケルアンバサダー(登録者数8,000人超) 
  • 新商品の抽選プレゼント企画

こうした相互のやり取りができるコンテンツは、特にヘビーユーザーから高い人気があります。

単なる一方向の情報配信ではなく、顧客が能動的に参加できる仕組みを構築することで、ブランドへの愛着度を大幅に向上させているのです。

役割③統合プラットフォームとしてのハブ機能

さまざまなメディアを展開する企業は多いですが、よくあるのがアプリやメルマガなど、それぞれが独立してしまい、多面的なコミュニケーションをできなくなるという問題です。

ファンケルでは、この課題をオウンドメディアFANCL CLIPによって解消しました。

たとえば、ECサイトで商品を閲覧した顧客には、関連するFANCL CLIPの記事を自動表示します。アプリやメルマガ、LINEなど各媒体からの流入を促進するシステムも実装されています。

こうしてタッチポイントを増やすことによって、顧客のブランドへの愛着を深め、ロイヤルティを高めることに成功しているのです。

ファンケルが「再興2026」で掲げる4つのEC戦略

ファンケルは、2024年にスタートした第4期中期経営計画「再興2026」を、いわば『第二の創業期』と位置づけています。

ここからは、「再興2026」内で掲げられている4つの戦略について紹介します。

以下でそれぞれ説明します。

戦略①DX推進と人材育成で実現するデータドリブンな顧客体験

ファンケルは、2026年度までに「DX基礎人材600名」「データ解析スペシャリスト100名」を社内で育成し、受注からカスタマーサポートまでの業務を一貫してデジタル化する方針を打ち出しています。

これはAI-OCRや自動化ツールの導入によって業務効率を高め、その分のリソースを顧客体験(CX)の強化に再配分する構想です。

また、統合OMOアプリをCRMの中心に据え、顧客の購入履歴や来店履歴をリアルタイムに分析する旨も宣言しています。パーソナライズされた情報を即時に届ける仕組みを整備し、チャネルをまたいだ顧客生涯価値(LTV)の最大化を目指しているのです

戦略②越境ECの強化で海外市場の拡大を加速

ファンケルは、国内で得たキャッシュフローを活用し、中国と北米市場への戦略的な投資を強化しています。

たとえばキリンホールディングスおよびアクシージアと連携し、機能性サプリメント「RevWell」を中国向けの越境EC専用商品として展開する計画です。

ファンケルは、今後3年間で海外売上を40億円以上拡大することを目標に掲げています

販売にあたっては、現地SNSとインフルエンサーを活用したローカライズ戦略を展開し、初年度からレビュー件数やコンバージョン率といったデータ指標を継続的に追跡・改善していくとしています。

戦略③ソーシャルコマースを本格展開、動画起点の購買体験を強化

ファンケルは、ライブコマースの取り組みとしてこれまでに累計145回の配信を行い、総視聴者数は52万人を超えたとしています。その結果、ライブ配信の視聴者は、そうでない顧客に比べてLTVが約15%高い傾向にあるというデータも出ています

こうした成果を背景に、ファンケルは2025年中にはTikTok ShopおよびInstagram Shoppingへの同時参入を予定しており、短尺動画とライブ配信を活用したSNS内完結型の購買導線を整備する方針です。

若年層との接点を広げつつ、新規顧客の獲得コストを抑え、継続購入率の向上を図る狙いがあると見られます。

戦略④「サステナビリティビジョン2030」を軸にした環境配慮型の成長戦略

ファンケルは、「サステナビリティビジョン2030」の中で、配送のカーボンニュートラル化およびリサイクル対応包材の100%導入を目指すと明言しています。

ECサイトでは、商品購入時にCO₂排出量を表示し、ユーザーがワンクリックでオフセットを選択できる仕組みを導入する予定です。こうした仕組みによって、購入行動を通じた環境貢献を実感できる体験を提供しようという方針です。

同社は、無添加処方というブランド価値と環境配慮を両立させることで、価格競争に依存しない「価値競争型」のマーケティングへの転換を進めていくと見られます。

まとめ|LTV向上の鍵は“一人ひとり”への最適化

ファンケルのEC戦略は、D2Cで培った基盤を軸に、パーソナライズやOMO、ソーシャルコマース、越境EC、そしてサステナビリティまで、多角的な進化を遂げつつあります。

その根底にあるのは、顧客一人ひとりに最適な価値を届けるという一貫した姿勢です。データ活用と人間中心の発想を両立させながら、信頼と継続を育む設計が際立っています。

変化の早い市場環境においても、生活者の期待に誠実に応えようとする同社の取り組みは、今後のECマーケティングにおける重要な示唆となりそうです。