ユナイテッドアローズが注力するOMO戦略3選

いまや小売業にとって、オンラインとオフラインを切り離して考えることはできません。  実店舗の強みをどう活かし、自社ECを成長させるか。多くの企業がこの課題に挑んでいます。

1989年創業のセレクトショップ、ユナイテッドアローズも例外ではありません。

優れた接客力と売場づくりで知られる同社が、近年注力しているのは店舗とデジタルを組み合わせたOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)戦略です。

これは2023年5月に発表された中期経営計画の柱「UA DIGITAL戦略」の中核をなす取り組みです。ユナイテッドアローズのOMO戦略は、店舗を営みながらECサイトにも注力しようとしている企業にとって、大変参考になるものです。

そこで、本稿では、ユナイテッドアローズのOMO戦略について解説するとともに、小売ビジネスの専門家ならでは視点から分析と示唆を提示します。

ユナイテッドアローズの事業概要

本稿ではユナイテッドアローズのOMO戦略について具体的な取り組み内容を紹介しますが、それに先立って、事業の概要を確認しておきます。

「トレンドマーケット」を対象とした事業を展開

ユナイテッドアローズは、国内のアパレル小売市場の中でも、ファッション性が高く、ファッションの潮流に敏感な消費者で構成される「トレンドマーケット」で事業展開を行っています。

◆ユナイテッドアローズグループが取り組むマーケット

出所:株式会社ユナイテッドアローズ「2025年3月期 決算説明会資料」(2025年5月8日)を元に筆者が作成。

このように、同社は対象とするターゲットを明確にしていますが、反対に、価格が競争力の源泉となる「ボリュームマーケット」には取り組まない方針を示しています。

◆マーケット別売上構成比(2025年3月期)

出所:株式会社ユナイテッドアローズ「2025年3月期 決算説明会資料」(2025年5月8日)を元に筆者が作成。ハイエンド~トレンドマーケット、ミッド・トレンドマーケット、ニュートレンドマーケットの売上高の合計(1,284億円)を100%として、各マーケットの構成比を算出した。

トレンドマーケットのうち、客単価が高いハイエンドマーケットおよびトレンドマーケットは、上図に示すように、ユナイテッドアローズグループの売上に占める構成比が大きいことから、同社にとって特に重要なマーケットであると言えます。

「セレクトショップ」というビジネスモデル

ユナイテッドアローズがトレンドマーケットを対象とした事業を行う上で、その基盤となっているのがセレクトショップと呼ばれるビジネスモデルです。

ブランドのコンセプトに基づいて、バイヤーが世界中からセレクトした商品を取り扱う店舗をセレクトショップと言いますが、日本では、仕入商品に加え、オリジナル企画商品も扱う形態のセレクトショップが広く展開されています。

ユナイテッドアローズでも、仕入商品とオリジナル企画商品を組み合わせて販売していますが、仕入商品によって豊富な品ぞろえを実現することに加え、オリジナル企画商品を扱うことで高い収益性を維持できるのです。

「ヒト・モノ・ウツワ」が競争力の源泉

ユナイテッドアローズは、顧客に満足を提供する要素として、「ヒト・モノ・ウツワ」の3つを重視しています。

◆ユナイテッドアローズが重視する3要素「ヒト・モノ・ウツワ」

出所:株式会社ユナイテッドアローズIR note「株式会社ユナイテッドアローズのご紹介」(更新:2022年12月5日、閲覧:2025年8月20日)

「ヒト」とは、販売員による接客・サービスのことです。

ユナイテッドアローズでは、実店舗における接客を通じた買物体験がブランド価値の基礎になっています。接客・販売の高い技術と、デジタル技術を活用したCRMにより、個別の顧客に合ったサービスを提供しています。販売員は、顧客の声を商品部門に共有することで、品ぞろえの改善にも貢献します。

「モノ」とは、商品および品ぞろえです。

バイヤーが世界中から選りすぐった仕入商品と、最新トレンドと顧客ニーズを取り入れて開発されるオリジナル企画商品の組み合わせで、高品質かつ高感度な品ぞろえを実現します。

「ウツワ」とは、施設・空間・環境を指します。

顧客がヒトとモノを体験できる場所がウツワである実店舗です。ユナイテッドアローズでは、店舗での買物体験それ自体が付加価値となることを目指しています。そのため、顧客が高感度な商品群と質の高い接客を体験し、買物の高揚感を得られる場所としてふさわしい、美意識にあふれた快適な店舗環境を整えているのです。

また、自社オンラインストアもウツワとして重要な位置づけにあります。ユナイテッドアローズは、実店舗で培った「ヒトを通じたモノの提供」の競争力を、オンラインサイトでも実現するために積極的な施策を展開しています。

ユナイテッドアローズの直近の業績

ユナイテッドアローズの直近の単体業績は、下図のように、売上高は増加を続け、営業総利益率も上昇傾向にあることが分かります。

◆ユナイテッドアローズの直近5期の業績(単体)

出所:株式会社ユナイテッドアローズ「2025年3月期 決算説明会資料」(2025年5月8日)を元に筆者が作成。

また、2025年3月期の単体業績について、決算説明会では次のように発表されました。

既存店の実績

  • 既存店売上高の前期比:111.2%
  • 既存店買上客数の前期比:109.2%
  • 既存店客単価の前期比:101.8%

ネット通販の実績

  • ネット通販売上高の前期比:116.6%
  • ネット通販売上高の構成比: 26.3%
  • 自社ECサイト売上高の前期比:129%
    • 参考:他社ECモール売上高の前期比:109.4%
  • ネット通販売上高に占める自社ECサイト構成比:40.4%

このように、ユナイテッドアローズでは、店舗事業、ネット通販ともに成長していることがわかります。同社では、成長の主な要因として、OMO施策の浸透を挙げています。

情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ「【書き起こし】2025年3月期 決算説明会資料」

売上高の前期比を見てみると、

自社ECサイト(129%) > ネット通販(116.6%) > 既存店(111.2%)

となっており、特に、自社ECサイトの成長が顕著です。このことから、自社ECサイトの売上高の増加が、ユナイテッドアローズの成長を牽引している可能性があると言えます。

ユナイテッドアローズの自社ECサイトの変遷|3つの転換期

ユナイテッドアローズは、国内アパレル業界でいち早く自社ECサイトを開設し、またZOZOTOWNの初期出店ブランドとしても知られています。接客販売を強みとしながらも、ECを重要なチャネルと位置づけ、早くから取り組んできた点に特色があります。

以下では、同社の自社ECサイトのたどった歩みを簡単に振り返ります。

転換期1:2007年:自社ECサイトに初めてチャレンジ

ユナイテッドアローズが自社ECサイト「LICLIS」を立ち上げたのは、2007年4月のことでした。2007年当時、「衣料・アクセサリー小売」のEC化率はわずか0.45%であり、服をネット通販で購入する消費者はわずかでした。

情報出所:経済産業省「平成19年度我が国のIT利活用に関する調査研究事業 (電子商取引に関する市場調査) 報告書」

意欲的な取り組みだった自社ECサイトの開設でしたが、利用が増えず、赤字が続いたため、同社は2008年2月にサイトを閉鎖しました。

転換期2:2009年:ZOZO子会社に自社ECサイトを運営委託

その後、2009年にZOZOの子会社であるアラタナに運営を委託し、自社ECサイト「ユナイテッドアローズオンラインストア」として再開しています。

情報出所:ファッションスナップ「ユナイテッドアローズがECサイトを再スタート、スタートトゥデイが支援」(公開:2009年5月13日、閲覧:2025年8月20日)

◆ユナイテッドアローズオンラインストア初期のロゴ

出所:株式会社ユナイテッドアローズ公式サイト「自社ECサイト”UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE”をオープン」(公開:2009年8月6日、閲覧:2025年8月13日)

ユナイテッドアローズは、約10年にわたり、この体制で自社ECサイトを運営していましたが、2019年、顧客がサイト内で欲しい商品にたどり着くのに時間がかかるなど、改良の余地が多いことなどを理由に、自社ECサイト運営のリプレイスを試みました。ただし、この時はシステム移行に伴う利用停止期間が長期化したため、サイト運営をアラタナに戻しています。

このように、自社ECサイトの改良に意欲をみせていたユナイテッドアローズですが、必ずしもスムーズには進捗しませんでした。

情報出所:日経ビジネス電子版「ユナイテッドアローズが見抜いたZOZO流サービスの死角」(公開:2019年2月5日、閲覧:2025年8月21日)、WWD JAPAN「ユナイテッドアローズの自社ECが11月27日に再開 アラタナと再契約で当初より1カ月遅れ」(公開:2019年11月25日、閲覧:2025年8月21日)

転換期3:2022年:自社ECサイトのリニューアルでOMO戦略推進

その後、2022年3月2日に、改めて自社ECサイトを「ユナイテッドアローズ オンライン」としてリニューアルオープンしました。このリニューアルでは、自社ECのWEBサイト(PC版、スマートフォン版)の基本機能を強化するとともに、スマートフォンアプリも刷新しています。

ECサイトの利便性を向上したことに加え、自社物流センターから配送することによって、注文から商品到着までの時間を短縮したり、返品手続きを簡素化するなど、EC利用に伴って生じる顧客のストレスを低減しました。これらにより、顧客がECサイトで買物をすることで得られる機能的価値を生み出しています。

また、オリジナルの包材を導入することで、注文商品を受け取る瞬間の高揚感を演出する工夫を凝らし、購買体験そのものを豊かにしました。こちらは、顧客が感じる情緒的価値の向上につながる取り組みと言えるでしょう。

◆リニューアルオープン時の自社サイト「ユナイテッドアローズオンライン」(2022年3月)

情報および画像出所:株式会社ユナイテッドアローズ プレスリリース「㈱ユナイテッドアローズ、自社オンラインストアをリニューアルオープン」(公開:2022年3月2日、閲覧:2025年8月16日)

また、この時の自社ECサイトのリニューアルでは、実店舗で取扱いのない色やサイズの商品を購入したい顧客を自社ECサイトでの注文に誘導したり、自社ECサイトで注文した商品を実店舗で受け取れるようにするなど、OMO戦略の推進を図りました。

情報出所:ファッションスナップ「ZOZO、ユナイテッドアローズの『離脱インパクトは大きい』 23年3月期のBtoB事業の商品取扱高は40%減の見通し」(公開:2022年4月28日、閲覧:2025年8月21日)

2022年3月の自社ECサイトのリニューアルのポイントを整理したものが下表です。

◆ユナイテッドアローズ自社ECサイトリニューアルにおける6つのポイント(2022年3月)

出所:株式会社ユナイテッドアローズ プレスリリース「㈱ユナイテッドアローズ、自社オンラインストアをリニューアルオープン」(公開:2022年3月2日、閲覧:2025年8月16日)を元に筆者が作成。

ユナイテッドアローズは、2022年3月の自社ECサイトのリニューアルを機に、続けざまにデジタル強化施策を講じ、OMO戦略を推進するようになりました。

このリニューアルは、単に使い勝手の良いECサイトを開設しただけの取り組みではありません。オフラインとオンラインを密接に連携させ、相乗効果によって顧客の購買体験を向上させることを目指して行われました。結果として、LTV(ライフタイムバリュー、顧客生涯価値)の向上にもつながる、大きな意味を持つ施策だと言えます。

また、前述の通り、直近では好調な自社ECサイトがユナイテッドアローズ全体を牽引していると考えられます。しかし、その成果は一朝一夕のものではなく、試行錯誤を重ねた長年の取り組みの延長線上にあると言えるでしょう。

ユナイテッドアローズが注力するOMO戦略3選

自社ECサイトが好調なユナイテッドアローズが近年注力しているのが、店舗とデジタルを組み合わせたOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)戦略です。

ここからは同社が取り組むOMO戦略を3つの視点から紹介していきましょう。

戦略1:OMO戦略の中核を担う販売活動におけるDX拡大

ユナイテッドアローズでは、2,000名を超える販売員が接客を通じて顧客のニーズを把握し、スタイリングを提案することで、(同社の言葉を借りれば)顧客への「感動提供」を実現しています。

現在、同社では、実店舗が持つ接客販売力やスタイリングの提案力のデジタル化を進めています。主な活動には、販売員による自社ECサイトやInstagramへのスタイリングの投稿があります。このような活動を同社では「販売活動のDX化」と呼んでおり、その拡大に努めています。

販売活動のDX化により、販売員は自社ECサイトを通じて、自身が所属する店舗に限定されず、全国の顧客に対して訴求することが可能になります。

同社では、販売に係るDX活動で優れたパフォーマンスを発揮するスペシャリストを「DXセールスマスター」として認定し、マスターの技術やノウハウを施策に落とし込んでいます。これにより、DX活動の成功事例を拡大し、実店舗とネット通販の売上増加につなげるねらいがあります。

また、販売活動のDX化により、販売員のファンづくりも促進しています。この活動が、顧客と同社の接触機会・接触時間を拡大させ、実店舗や自社ECサイトへの来訪を図ります。

情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ「統合レポート2024」

販売活動のDX化は、下図のように、既存顧客の継続利用や新規顧客の認知向上につながることを想定して設計されています。

◆販売活動におけるDX化の拡大

出所:株式会社ユナイテッドアローズ「統合レポート2024」

販売員によるスタイリング投稿は、自社ECサイトの売上増に寄与していますが、店舗売上にも影響を及ぼしていることが分かっています。

投稿数の増加に注力した2023年度、自社ECサイトに掲載されたスタイリングは約11万件で、投稿を通じた自社ECサイトの売上高は95億円でした。

2024年度は、約1,000名の販売員が継続的にスタイリング投稿をしており、投稿件数は約17.4万件と前年比147.8%という大幅な増加でした。投稿経由の自社ECサイト売上は127億円(前年比133.1%)で、自社EC売上高の74.7%を占めています。

また、実店舗売上の25.6%は、スタイリング投稿を閲覧した顧客によるものでした。

2023年度の情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ「統合レポート2024」、2024年度の情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ「2025年3月期 決算説明会資料」(2025年5月8日)

公式アプリでスタイリングを閲覧した顧客が、オンライン(自社ECサイト)とオフライン(実店舗)を使い分け、最適なチャネルで買物をするという状況ができつつあります。

ユナイテッドアローズは創業以来、販売員による接客や提案を強みとして顧客から支持を集めてきました。持っていたオフラインの強みがDXによってオンラインにも広がり、アプリ閲覧からECでの購入へとつながる流れが生まれています。さらに、このオンラインでの体験が実店舗への来店や購入にもつながり、双方向の循環が形成されつつあります。

戦略2:新会員プログラム「UAクラブ」で顧客に行動を促す

ユナイテッドアローズが推進するOMO戦略と密接に関係するのが、従来の会員プログラムに代わって2023年8月からスタートした新会員プログラムの「UAクラブ」です。

UAクラブの特徴の一つが、商品の購入だけでなく、レビュー投稿やお気に入り商品・スタッフ登録などの行動に対してマイルが付与されることです。このような設計は、会員に行動を促し、それが顧客と同社のつながりを強化し、エンゲージメントの向上にも寄与すると考えられます。

ユナイテッドアローズは、UAクラブ会員にマイルを付与する対象となる行動を決める際に、購買データから抽出した「LTVの向上につながる要素」と「OMOを推進する要素」を参照しています。どのような施策が、顧客のどのような行動を促し、ロイヤルティ向上を実現できるかを検討し、UAクラブの設計に落とし込んでいきました。

例えば、「商品のレビュー件数が多いほどECのコンバージョンレートが上がる」ことを根拠に、「レビュー投稿」をマイル付与の要件に加え、「顧客との接点が多いことがLTVの向上につながる」ということに基づいて、「アプリのインストール」や「LINEと連携」をマイル付与の要件に加えたということです。

情報出所:ネットショップ担当者フォーラム「顧客と深く長い関係性を構築する会員向けプログラムとは?ユナイテッドアローズの藤原CDOに聞いてみた」(公開:2023年11月16日、閲覧:2025年8月28日)

ユナイテッドアローズは、UAクラブを通じて、購買データに加え、登録や投稿など、顧客の行動データも取得できます。同社では、これらの情報を分析することで、個々の顧客の行動に応じて以下のようなコミュニケーションを取っています。

  • UAクラブ入会後や商品購入後のフォローメール送信
  • アプリの閲覧履歴に応じた新商品の提案
  • おすすめスタイリングの紹介
  • お気に入りスタッフの新着投稿の案内

このように、UAクラブ会員の行動分析の結果を踏まえて、個々の顧客に適したコミュニケーションを行うことで、顧客との関係性を構築し、LTVの向上を目指すことができるのです。

UAクラブにより期待される効果は下図のように表されます。

◆UAクラブの仕組みと想定される効果

出所:株式会社ユナイテッドアローズ「統合レポート2024」

2024年度のUAクラブに関する主要な指標は以下の通りです。

  • アクティブ会員数 ※1 150万名(前年比110.1%)
  • F2会員 ※2 の比率 50.3%(前年差+1.1pt)
  • 会員売上 737億円(前年比115.4%)、単体売上構成比 52.9%(前年差+0.5pt)
  • 会員平均客単価 約17,000円(非会員平均 約11,000円)
  • クロスユーザー数 ※3 22万人(前年比121.5%)

※1:1年間に購入した会員数。※2:年間2回以上購買する会員。※3:実店舗と自社ECを併用する会員数

2024年度は、UAクラブ関連の各指標はいずれも高い水準でした。この結果を踏まえて、同社は、「優良顧客様であるUAクラブ会員数を増やし、F2以上の比率、クロスユーザー数を増やしていくことが、事業の成長につながる」と述べています。 

情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ「2025年3月期 決算説明会資料」(2025年5月8日)

戦略3:OMO戦略に最適化されたアプリの機能強化

ユナイテッドアローズは、2024年10月と2025年1月に、公式アプリのリニューアルを行っています。

2024年10月のリニューアルでは、各ブランドの世界観と最新情報が見やすくなり、操作性もシンプルで直感的にわかりやすいものに改良されました。このリニューアルでは、アプリを通じた自社ECサイトでの買物で、店頭接客のような「おもてなし」を体験でき、買物の快適さ、心地よさを高めることを目指しました。

情報出所:株式会社ユナイテッドアローズ プレスリリース「『ユナイテッドアローズ オンライン』公式アプリ、本日リニューアル。“おもてなしアプリ”をコンセプトに、デザインの刷新と機能の拡充で一人ひとりのお客様に寄り添うお買い物体験を提供」(公開:2024年10月29日、閲覧:2025年8月16日)

続いて行われた2025年1月のリニューアルでは、実店舗での買物の利便性を高める「店内モード」機能と、顧客の行動に応じてホーム画面に適切なコンテンツを表示するパーソナライズ提案機能を追加しています。

◆ユナイテッドアローズ オンライン公式アプリ「店内モード」のイメージ

情報および画像出所:ユナイテッドアローズ プレスリリース「『ユナイテッドアローズ オンライン』公式アプリ 店舗でのお買い物をより便利にする『店内モード』機能や一人ひとりの嗜好に応じてパーソナライズ化されるサービスを拡充。昨年10月に続くアップデートを本日実施」(公開:2025年1月28日、閲覧:2025年8月16日)

2024年10月と2025年1月の公式アプリのリニューアルにおける主なポイントは下表の5つです。

◆ユナイテッドアローズオンライン公式アプリのリニューアルにおける5つのポイント(2024年10月、2025年1月)

出所:株式会社ユナイテッドアローズ プレスリリース「『ユナイテッドアローズ オンライン』公式アプリ、本日リニューアル。“おもてなしアプリ”をコンセプトに、デザインの刷新と機能の拡充で一人ひとりのお客様に寄り添うお買い物体験を提供」(公開:2024年10月29日、閲覧:2025年8月16日)、「『ユナイテッドアローズ オンライン』公式アプリ 店舗でのお買い物をより便利にする『店内モード』機能や一人ひとりの嗜好に応じてパーソナライズ化されるサービスを拡充。昨年10月に続くアップデートを本日実施」(公開:2025年1月28日、閲覧:2025年8月16日)を元に筆者が作成。

2024年10月と2025年1月に行われたアプリのリニューアルは、OMO戦略の観点から整理すると、次の3つのねらいを実現するものだと言えます。

  1. 顧客接点の拡大(2024年10月)
  2. 滞在時間の増加(2024年10月)
  3. 店舗体験とアプリ体験の一体化(2025年1月)

まず「顧客接点の拡大」です。お気に入り登録の対象が商品から、スタッフやブランド、スタイリングにまで広がりました。これにより、顧客と人やブランドの世界観との結びつきが強まり、アプリを通じた「ファン化」が進むと考えられます。

次に「滞在時間の増加」です。アプリのUIがSNSのようにコンテンツを流し読みできる仕様に刷新されました。顧客が「何となく開いて眺める」時間が生まれ、結果として接触時間が増えると考えられます。

そして「店舗体験とアプリ体験の一体化」です。新たに搭載された「店内モード」では、バーコードスキャンや在庫確認が可能になりました。アプリが接客の補助ツールとして機能し、購買体験がより快適になっています。

これらの取り組みによって、ユナイテッドアローズの公式アプリは単なるECアプリを超え、「OMOアプリ」と呼ぶにふさわしい存在になったと言えるでしょう。

まとめ

EC化率がまだ低かった時代に、他に先駆けて自社ECサイトを立ち上げたユナイテッドアローズは、長い紆余曲折と試行錯誤を経て、2022年のリニューアルを機にOMO戦略を大きく前進させました。

ここで紹介した取り組みは、嗜好品やライフスタイル商品を扱い、接客販売に強みを持つ小売企業にとって、多くの示唆を含むものです。また、筆者独自の視点での分析も、参考にしていただけるはずです。

今後さらに洗練されていくであろうユナイテッドアローズのOMO戦略に注目するとともに、ユニークなOMO戦略で顧客の支持を得る新たな企業の登場に期待したいと思います。