多くのEC事業者が「新規顧客の獲得」と「リピート率の向上」という2つの課題に頭を悩ませています。広告費は高騰し、競合は増え、せっかく獲得した顧客も1回きりの購入で離脱してしまう。そんな悪循環に陥っている企業は少なくありません。
この課題に対して、50年以上にわたって「定期便」というビジネスモデルを磨き続け、顧客との長期的な関係構築を実現してきた企業があります。それが神戸に本社を置く株式会社フェリシモです。
本記事では、フェリシモが実践する7つのEC戦略について、公式発表資料や決算情報をもとに解説します。
フェリシモのEC戦略と事業の現在地
フェリシモは、月に1回オリジナル商品を届ける「定期便」を軸としたダイレクトマーケティング企業です。1965年の創業以来、カタログ通販からECへとチャネルを拡大しながら、独自のビジネスモデルを構築してきました。
経済産業省のデータによるとアパレル(衣類・服装雑貨)分野のEC化率は21.56%です。一方フェリシモは売上のほぼすべてをEC・カタログを含む通販チャネルが占めており、店舗を持たない独自のポジションを確立しています。
まずは企業概要を確認しておきましょう。
◆フェリシモの企業概要
| 項目 | 内容 |
| 社名 | 株式会社フェリシモ |
| 本社所在地 | 神戸市中央区新港町7番1号 |
| 設立 | 1965年5月 |
| 証券コード | 東証スタンダード3396 |
| 2025年2月期売上高 | 294億4,900万円 |
| 主要事業 | 定期便事業(売上の91.4%) |
参照:フェリシモ公式サイト、2025年2月期決算短信より筆者作成
注目すべきは、売上の91.4%を定期便事業が占めている点です。一般的なアパレルECが「都度購入」を前提とするのに対し、フェリシモは創業以来「継続購入」を軸にビジネスモデルを設計してきました。この構造が、後述する柔軟な定期便システムや独自の物流基盤、そして顧客との長期的な関係構築を可能にする基盤となっています。
売上294億円・黒字転換を果たした2025年2月期の業績
2025年2月期の連結決算において、フェリシモは営業利益7,000万円を計上し、前期の9億3,100万円の営業損失から黒字転換を果たしました。
売上高は前期比0.5%減の294億4,900万円と微減でしたが、収益性の改善により利益面では大幅な改善を実現しています。
以下の表は、直近2期の業績推移をまとめたものです。
◆フェリシモの業績推移(2024年2月期〜2025年2月期)
| 指標 | 2024年2月期 | 2025年2月期 | 増減 |
| 売上高 | 296億700万円 | 294億4,900万円 | ▲0.5% |
| 営業利益 | ▲9億3,100万円 | 7,000万円 | 黒字転換 |
| 経常利益 | ▲6億1,200万円 | 2億2,700万円 | 黒字転換 |
| 当期純利益 | ▲8億5,800万円 | 1億3,600万円 | 黒字転換 |
参照:フェリシモ2025年2月期決算短信より筆者作成
黒字転換の要因としては、不採算事業の整理や在庫コントロール、販管費圧縮など収益構造の改善が進んだことに加え、神戸ポートタワー事業など新規事業の寄与も挙げられています。
また、ファッションカテゴリーの伸長により顧客購入単価が上昇したことも寄与したと考えられます。
売上微減ながら黒字転換を果たしたという結果は、フェリシモが「規模の拡大」よりも「収益性の改善」を優先したことを示しています。定期便モデルは顧客との継続的な関係が前提となるため、無理な新規獲得で顧客基盤を広げるよりも、既存顧客のLTVを高める方向へ舵を切った結果と言えるでしょう。
「ともにしあわせになるしあわせ」を掲げる独自のビジネスモデル
フェリシモの最大の特徴は、「ともにしあわせになるしあわせ」というコア・バリューを軸にした事業設計です。
これは単なるスローガンではなく、商品開発、マーケティング、社会貢献活動のすべてに一貫して適用されている思想です。1990年から継続している基金活動では、33年間で累計30億円以上の基金を預かり、230万人以上の会員が参加しています。
フェリシモにはCSRやサステナビリティの専門部署がありません。「社員の誰もが『ともにしあわせになるしあわせ』を実現するための主体的な担い手である」という考え方のもと、全社員が日常業務の中で社会価値の創出に取り組んでいるのです。
フェリシモが実践する7つのEC戦略
ここからは、フェリシモのEC戦略を7つに分けて解説します。
- 戦略① 「とにかく自由な定期便」で実現するサブスク2.0
- 戦略② 20年ぶりECサイト刷新「みらい基盤プロジェクト」
- 戦略③ Rtoaster×Zendeskによるパーソナライズ基盤
- 戦略④ クラスター&トライブ戦略でニッチ層を深掘り
- 戦略⑤ 若年層メディア「このごろ」による新規顧客開拓
- 戦略⑥ 吊り下げ式物流「エスパスフェリシモ」の競争優位
- 戦略⑦ 基金活動30億円突破が生むブランドロイヤルティ
定期便のビジネスモデルを軸に、データ活用、物流、社会貢献活動まで、独自のアプローチを見ていきましょう。
戦略① 「とにかく自由な定期便」で実現するサブスク2.0
フェリシモの定期便は、従来のサブスクリプションモデルとは一線を画す柔軟性を持っています。
◆フェリシモ公式サイト「お届けパターンについて」より

参照:フェリシモ お届けパターンについて より「ローテーション」の場合
一般的なサブスクは「毎月同じものが届く」「中断時には解約手続きが必要」という制約がありますが、フェリシモは「とにかく自由な定期便」というコンセプトのもと、6種類のお届けパターンを用意しています。
以下の表は、定期便のパターンをまとめたものです。
◆フェリシモ定期便の6つのお届けパターン
| パターン名 | 内容 |
| ジャストワン | 1回だけのお届けで自動終了 |
| ワンパターン | 気に入った商品だけが定期的に届く |
| ローテーション | 設定された複数の商品が1つずつ繰り返し届く |
| 回数予約 | お届け回数を事前に指定 |
| 期間予約 | お届け期間を事前に指定 |
| 定額おまかせ便 | 月額固定でキュレーション商品が届く |
参照:フェリシモ公式サイト お届けパターンについてより筆者作成
ただし、商品によってはすべてのパターンに対応していない場合もあり、SKUごとの設計が求められます。
また、フェリシモの定期便では、「おやすみ」機能により、次月の配送をスキップすることも可能です。このように「縛らない」設計にすることで、顧客は心理的なハードルなく定期便を始められます。
この柔軟性が結果として顧客の継続率向上につながり、LTV最大化に貢献しています。「縛りで離脱を防ぐ」のではなく「自由度で継続を促す」という発想の転換こそが、フェリシモの定期便モデルの核心なのです。
戦略② 20年ぶりECサイト刷新「みらい基盤プロジェクト」
2023年3月、フェリシモは約20年ぶりとなるECサイトの大規模リニューアルを実施しました。このリニューアルは社内では「みらい基盤プロジェクト」と呼ばれ、約150名のプロジェクト体制で推進されました。
従来のシステムは長年のカスタマイズにより複雑化しており、新機能の追加や改善に時間がかかる状態でした。今回のリニューアルでは、フルスクラッチからパッケージベースのシステムへと移行し、開発スピードと保守性の向上を実現しています。
UI/UX面では、商品検索機能の改善、お気に入り機能の強化、マイページの使いやすさ向上など、顧客体験の最適化が図られました。特に定期便特有の「お届け管理」機能は、顧客が自分の購入状況を直感的に把握できるよう設計されています。
このリニューアルにより、今後のパーソナライズ施策やOMO施策の基盤が整備されました。
戦略③ Rtoaster×Zendeskによるパーソナライズ基盤
フェリシモは、データ活用基盤としてBrainPad社の「Rtoaster」を導入し、顧客一人ひとりに最適化されたコミュニケーションを実現しています。
Rtoasterは、顧客の行動データや購買履歴をもとに、Webサイト上でのレコメンデーションやメール配信の最適化を行うプラットフォームです。フェリシモでは、定期便という特性を活かし、「次に届く商品」と関連性の高いアイテムを提案するなど、継続購入を促進する施策に活用しています。
また、カスタマーサポート領域ではZendeskを導入し、顧客対応の効率化と品質向上を図っています。問い合わせ履歴と購買データを連携させることで、オペレーターは顧客の状況を即座に把握し、適切な対応が可能になりました。
さらに、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)として「BrainRobo」を導入し、定型業務の自動化を推進しています。社内では「フェリシモこびと隊」と呼ばれ、年間約3,000時間の業務削減効果を生み出しています。
これら3つのツールに共通するのは、「顧客との継続的な関係」を前提とした設計です。単発購入が中心のECでは、ここまでのデータ活用基盤を構築しても投資対効果が見えにくいですが、定期便モデルだからこそ、顧客一人ひとりに投資する意味が生まれます。
戦略④ クラスター&トライブ戦略でニッチ層を深掘り
フェリシモは、大量の顧客に同じ商品を届けるマスマーケティングではなく、「部活」と呼ばれる趣味・嗜好でつながったコミュニティごとにアプローチする戦略を展開しています。2026年2月現在も、17の部活が活動中です。
部活は2010年頃から始まり、15年以上継続しています。社内だけでなく取引先なども参加可能で、事業化のための数値目標は設けられていません。フェリシモが掲げる「パッションドリブン」を体現する象徴的な活動だと言えます。
◆「フェリシモ部活」トップページ

参照:フェリシモ部活 より
代表的な部活が、猫好きが集まる「猫部」です。オリジナル猫グッズの開発を主な活動とし、販売価格の一部が犬猫を救う基金として活用されています。
猫部からは数々のヒット商品が生まれてきました。たとえば2014年発売の「にゃんそうこう」は、猫にひっかかれた傷をかわいく隠す絆創膏で、漫画家・山野りんりん氏のTwitter投稿をきっかけに商品化されました。シリーズ累計販売数は約20万5,000セット、枚数にすると約490万枚を記録するロングセラーとなっています。
このほかにも、美術館・博物館との公式コラボを多数手がける「ミュージアム部」、大人のためのファンタジーグッズを届ける「魔法部」、推し活グッズの「オタ活部」、お寺文化を発信する「おてらぶ」など、ニッチな領域に特化した部活が多数存在します。
この部活戦略の考え方は、「1つの部活で10億円規模の事業を育てる」というものです。それぞれが独立したブランドのようにマーケティングを展開し、顧客と一緒に商品を作り上げる共創の関係性が、フェリシモ独自の強みとなっています。
戦略⑤ 若年層メディア「このごろ」による新規顧客開拓
フェリシモの顧客層は40代以上が中心であり、若年層の獲得が課題となっていました。この課題に対応するため、2024年3月に正式リリースされたのが若年層向けメディア「このごろ」です。
「このごろ」は、新社会人から社会人3年目くらいまでの若い世代をターゲットにしたコンテンツメディアです。2023年10月のベータ公開を経て、正式にサービスを開始しました。
◆若年層向けメディア「このごろ」TOPページ

参照:このごろ トップページより
従来のフェリシモのコミュニケーションとは異なり、商品訴求よりも「暮らし」「働き方」「人間関係」といったテーマでのコンテンツ発信を重視しています。この施策の狙いは、商品を直接売り込むのではなく、若年層の関心事に寄り添ったコンテンツを通じて、まずブランドとの接点を作ることです。
将来的には、このメディアを通じて獲得した若年層が、ライフステージの変化とともにフェリシモの定期便顧客へと成長していくことを見込んでいると考えられます。
戦略⑥ 吊り下げ式物流「エスパスフェリシモ」の競争優位
フェリシモの物流拠点「エスパスフェリシモ」は、独自の吊り下げ式搬送システム「スカイポーター」を採用しており、同規模・同方式の施設は極めて珍しいとされています。
◆フェリシモの物流拠点「エスパスフェリシモ」

通常の物流倉庫では、商品をコンベアやカートで水平移動させますが、スカイポーターは天井から商品を吊り下げて搬送します。これにより、フロアスペースを有効活用でき、作業動線の交錯も防げます。
1日あたりの搬送距離は約20km、ピーク時には数万件の出荷を約350名のスタッフで対応しています。多品種・少量・個別配送という定期便の特性に最適化され、フェリシモの競争優位を支える物流システムとして機能しているのです。
この物流基盤があるからこそ、フェリシモは「6種類のお届けパターン」や「おやすみ機能」といった柔軟な定期便サービスを実現できています。
顧客ごとに異なる商品を、異なるタイミングで届けるという複雑なオペレーションは、通常の物流システムでは対応が困難です。EC上で提供できるサービスの幅は、裏側の物流設計によって決まります。エスパスフェリシモは、その好例と言えるでしょう。
戦略⑦ 基金活動30億円突破が生むブランドロイヤルティ
フェリシモは1990年から基金活動を展開しています。33年間で累計30億円以上の基金を預かり、230万人以上の会員が参加してきました。
◆フェリシモ基金の活動イメージ

参照:フェリシモの基金活動 より
重要なのは、基金の運営費はすべてフェリシモが負担しており、顧客から預かった基金は全額が支援活動に充てられるという点です。この透明性が、33年間で230万人以上の参加という実績につながっています。
定期便で毎月届く商品に基金が組み込まれているため、顧客は「継続すること自体が社会貢献になる」という体験を得られます。契約の縛りではなく共感によって継続率を高めるこの設計は、フェリシモならではのロイヤルティ戦略と言えるでしょう。
50年のノウハウを外販する「第2の収益柱」戦略
フェリシモは、長年培ってきた定期便運営のノウハウを社外に提供する新規事業を展開しています。
これは中期経営計画における「第2の収益の柱」として位置づけられています。
他社のサブスク支援サービス「EIZOKU」
「EIZOKU」は、フェリシモが2021年10月に開始したサブスク支援サービスです。フェリシモが56年かけて培ったダイレクトマーケティングのノウハウを、他企業向けに提供しています。
サービスは「コンサルティング」と「オペレーション支援」の2軸で構成されています。コンサルティングでは事業変革やサブスク事業の立ち上げ、企画人材の育成などを支援。オペレーション支援ではECサイト構築や物流設計を担います。
EIZOKUの強みは、戦略立案から商品開発、システム構築、物流まで一気通貫で支援できる点です。自社で定期便事業を運営してきたからこそ、机上の理論ではない実践的なサポートが可能になっています。
プラットフォーム開放「FELISSIMO PARTNERS」
「FELISSIMO PARTNERS」は、パートナー企業がフェリシモの定期便や産直ダイレクト便に商品を出品できるプログラムです。
商品選定から撮影などのクリエイティブワーク、顧客対応までフェリシモのスタッフがサポートするため、自社でEC基盤を持たない中小メーカーでも参入しやすい設計になっています。パートナー企業にとっては新たな販路の獲得、フェリシモにとっては商品ラインナップの拡充と、双方にメリットがある仕組みです。
定期便の会員基盤を外部に開放することで、フェリシモは自社で商品を開発しなくても顧客に届けられる選択肢を増やせます。これはプラットフォーム化による収益多角化の一手と言えるでしょう。
リテールメディア「CREATOR’S VOICE」
フェリシモは、自社ECサイトを活用したリテールメディア「CREATOR’S VOICE」を展開しています。
◆CREATOR’S VOICE トップページのイメージ

CREATOR’S VOICEは、「創り手の想いを直接お届けする情報産直メディア」をコンセプトに掲げ、商品やサービスの裏側にある想いやこだわり、アイデアやトレンドをフェリシモがピックアップして届ける仕組みです。コンテンツパートナーとして掲載を希望する企業も募集しており、フェリシモのクリエイティブを活用した情報発信や、ユーザーの声をフィードバックするメニューも用意されています。
定期便モデルの特性上、フェリシモの顧客は毎月サイトを訪問する習慣があります。この継続的な接点を広告媒体として活用することで、パートナー企業には共感層へリーチできる場を、フェリシモには商品販売以外の収益源を生み出す狙いがあると考えられます。
フェリシモのEC戦略に関するよくある質問(FAQ)
最後に、フェリシモのEC戦略に関して寄せられる質問にまとめて回答します。
Q. フェリシモの定期便モデルは他社でも再現できますか?
定期便の仕組み自体は再現可能ですが、フェリシモの強みは50年以上かけて構築した物流インフラや顧客基盤にあります。「EIZOKU」ではこうしたノウハウを外部企業に提供しており、自社でゼロから構築するよりも効率的にサブスク事業を立ち上げる選択肢もあります。
Q. 部活戦略を自社に取り入れる際のポイントは?
フェリシモの部活は「就業時間の20%を使える」「事業化の数値目標を設けない」など、社員の熱量を重視した設計が特徴です。短期的なROIを求めすぎると形骸化しやすいため、まずは小さく始めて熱量のあるメンバーを集めることが重要です。
Q. フェリシモのEC化率はどのくらいですか?
フェリシモは店舗を持たず、売上のほぼすべてをEC・カタログを含む通販チャネルが占めています。一般的なアパレル企業のEC化率21.56%と比較すると、業界でも極めて特異なポジションにあると言えます。
まとめ|フェリシモのEC戦略から学ぶ「顧客との長期的な関係構築」
フェリシモのEC戦略の本質は、「縛りで離脱を防ぐ」のではなく「自由度で継続を促す」という発想にあります。
定期便、部活、基金活動など、一見バラバラに見える施策もすべて「顧客との関係性を資産として捉える」という思想で貫かれています。新規獲得のコスト競争から一歩引き、既存顧客との関係を深めることでLTVを最大化する。この視点は、広告費高騰に悩むEC事業者にとって大きなヒントになるのではないでしょうか。
自社の顧客との関係性をどう設計するか。その問いに向き合うきっかけとして、フェリシモの事例を参考にしていただければ幸いです。
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